父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
8 / 204
家出編

008 カナタ、携帯ガチャ機に課金する

しおりを挟む
 【ロッカー】に閉じ込められたカナタは冷静だった。
スキル実験の途中だったこともあったのかもしれないが、パニックになるよりも、この状況の考察が先に立ったのである。

「【ロッカー】は生き物を入れられるのか!
もし時間停止があったら、その場で死んでいたかもしれない。
時間停止がないおかげで生き物が生きたままなのは助かった。
しかし、どうやって出ればいいんだろう?」

 そうなのだ、閉まった出入り口は消えてしまい、カナタは時空間に漂う1立方mの箱の中から出る事が出来なくなっていたのだ。
【ロッカー】の中は壁がボヤっと光っていて、閉じ込められたカナタは最低限の視界を確保出来ていた。

「これは困ったぞ。まず食料と水が無い。
このままでは餓死してしまう。
せっかく生き返ったのに、こんな死に様は嫌だな」

 カナタは脱出方法を考えるより先に生きる手段を模索した。
まずポケットの中。おやつの時間に入れたクッキーが2枚入っていた。
次にお財布。スキル【お財布】の中身は2万3千5百DG。
女神様が封印した1億DGは使えるのだろうか?

「1億DGは封印されたままか……」

 外に出ることの無かったカナタは、多田野信が手に入れたお金DGしか持っていなかった。
寝たきりで屋敷から出たことの無かったカナタに、お金など無用だったからだ。
しかも、この時空のはざまでは、お金があっても使うお店が無い。

「いや、僕には【携帯ガチャ機】がある!
課金すればアイテムガチャが引けるはずだ!」

 この世界でガチャを引くのには2通りの方法がある。
1つは魔物を倒すことでガチャが引かれオーブがドロップされる。
それを開く行為がガチャとなる。
もう1つは教会に設置してあるガチャ機に課金して引く方法だ。
カナタはGRゴッドレアスキルの【携帯ガチャ機】を持っている。
つまり課金すればその場でガチャが引けるはずなのだ。

「アイテムガチャで食料をゲットだ!
ん? ゲットって何だ?」

 またカナタはの影響を受けた。

「だけど、呪いの余波でハズレる可能性があるな……。
いや、父様と離れている今がチャンスのはずだ!」

 カナタは父アラタが王都に行っている今こそ、ガチャを引くチャンスだと思っていた。
カナタが持つ仮説、『父アラタとの距離が呪いの強さに影響する』を実証する絶好の機会だった。

 アイテムガチャは1000DGの課金で1回引くことが出来た。
しかも10連ガチャを引くと1つだけレアリティがHNハイノーマル確定になるという。
そして【携帯ガチャ機】の特殊効果は、全てのオーブがレアリティ1UPだ。
つまりHNが1UPしてレアが1つ確定となるはずだった。
カナタは1万DG課金して【携帯ガチャ機】のアイテム10連ガチャを引くことにした。

 【携帯ガチャ機】の表面にあるタッチパネルでアイテム10連を選ぶ。
そして支払いのアイコンに【お財布】と念じて手を置くと1万DGが支払われる。
これでアイテム10連ガチャを引く準備が整った。
カナタはダイヤルに手をかけると右に回しガチャを引いた。
ちなみにアイテムガチャはハズレでスカの何も出ないということはない。
ハズレ扱いはタワシになる。創造神様によると様式美だそうだ。

ノーマルの携帯食料と水来い!」

ガチャガチャ ガガガガコン キン!

 アイテム10連ガチャを引いたエフェクトで【携帯ガチャ機】が光る。
赤い光が瞬く。銅色と銀色の光も見える。
どうやら、RとSRが当たっているようだ。
『開く』はオート設定のため、そのまま空中に詳細が表示される。

HNアイテム ハイポーション×2
HNアイテム マジックポーション×3
Rアイテム 鋼の剣+2
HNアイテム オーク肉(ロース)
HNアイテム テント
HNアイテム オーク肉(バラ)
SRアイテム 魔鋼の槍
HNアイテム 美味しい携帯食料×4
Rアイテム 皮の鎧+1
HNアイテム 美味しい水(1リットル水筒)×5

「何これ……」

 カナタが驚くのも当然だ。
今までカナタは呪いの影響でガチャはハズレしか引いてこなかった。
本来ならばタワシ一択。
今回もNの中でもハズレよりちょい当たりの携帯食料と水が出ることを期待してガチャを引いたのだ。
それなのに最低でもHNとか夢のようだった。

 だが、食料系が美味しい携帯食料×4と美味しい水×5、それにオーク肉のみ。
オーク肉は生だ。当然調理器具なんて持ってないし、この空間で火を起こすことも出来ない。
本来なら喜ぶはずのRアイテムとSRアイテムも武器防具という想定外。
最悪な状況になったら、ハイポーションとマジックポーションを水代わりに飲むしかない。

「テントなんて、この中で広げられないよね?」

 それらは、ただただ1立方mの生活空間を狭めるだけだった。
これらのアイテムがオート設定のために、その場で開かれ実体化していたのだ。
テントは個人で持ち運ぶためにコンパクトに畳まれていた。
しかし、皮の鎧なんてそのままその形で空間を圧迫していた。

「もう1回10連ガチャなんて空間的に出来そうもないな。
それにしてもどうして?」

 カナタは呪いに何かあったと見て自らのステータスを確認する。

「ステータス!」


名前 :カナタ=ミル=ファーランド

種族 :人間 年齢:11才 性別:男

職業 :魔術師 (勇者)女神の加護により隠蔽中

レベル:5

体力 :300/300(100,000)呪いにより低下中

魔力 :50,000/50,000(1,000,000)呪いにより低下中

幸運 :47(+47+100(ガチャバカ一代補正分))呪いにより低下中

状態 :成長不良 (呪いの余波)

Nスキル:お財布 生活魔法 図鑑Lv.2 MAPLv.2 ロッカーLv.1

HNスキル:魔力操作Lv.2

Rスキル:身体強化Lv.2

SRスキル:時空魔法Lv.2(5)呪いにより低下

URスキル:魔力探知Lv.2

LRスキル:

GRスキル:携帯ガチャ機

称号:ガチャバカ一代 (勇者)女神の加護により隠蔽中

加護:女神ソフィアの加護(小)

取得魔法:

装備:

所持品:ハイポーション×2
    マジックポーション×3
    鋼の剣+2
    オーク肉(ロース)
    テント
    オーク肉(バラ)
    魔鋼の槍
    美味しい携帯食料×4
    皮の鎧+1
    美味しい水(1リットル水筒)×5

所持金:1万3千5百DG(1億1万3千5百DG)女神の加護により隠蔽中


 なんと呪いの影響が弱まってHPが300になっていた。
これは時空によりカナタと父アラタの間が隔てられたからなのだろう。
しかも幸運の数値が-3から47に上昇している。
この幸運が【携帯ガチャ機】の結果を好転させたのだろう。
これだけの幸運値ならば脱出の道も開けるかもしれない。
カナタは携帯食料4つと水筒が5本でどうにかなる間に脱出するべく方法を模索するのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...