父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

009 ジェフリー、顛末1

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 アラタが王都にやって来たのは、王城から呼び出しがあったからだ。
王都でファーランド伯爵家の名前を使い詐欺事件が発生していた。
その犯人が捕まり、ファーランド伯爵家との繋がりを確認するため、当主のアラタが呼ばれたのだ。

 アラタが案内されたその部屋は王都を守る衛兵隊の隊長執務室だった。
その席には審議官が同席していた。
審議官とは嘘を見抜く【真実の目】というスキルを持った国家機関所属の特殊職だ。
全員が国家機関に所属し、犯罪捜査に限定してその能力を使うことが出来る。
審議官の前では嘘をつくことは出来ない。
つまり、証言の信憑性が高くなる。
貴族を尋問するからには、冤罪などあってはもっての外。
それなりの手続きが必要だった。

「この男に見覚えは有りますか?」

 衛兵隊隊長によりアラタの目の前に引き立てられてきた男は、アラタの知らない男だったが見覚えがあった。
知らないのに見覚えがあるとはおかしな話だが、アラタの目の前の男の顔が、知っている人物にそっくりだったのだ。

「知らない男だが、正体はわかった」

 アラタは苦渋の表情で答えた。
それもそのはず、我が子だと思っていた息子が自分の血を引いていないことが判明したのだから。

「この男は、我が家で雇った女給メイド、ジュリアの配偶者だろう。
立場は女給メイドだが、息子を産んで側妾待遇として我が家にいる。
恥ずかしながら、この男は息子だと思っていた次男ジェフリーにそっくりだ。
ジェフリーは我が息子ではなかったということだな……」

 審議官が頷き、嘘ではないことが証明される。
アラタの証言に衛兵隊隊長もばつが悪そうにしている。
しかし、捜査を勧めなくてはならないため、突っ込んだ質問をする。

「この男は伯爵家の次期党首・・・・ジェフリーからお墨付きを得て取り込み詐欺をはたらいていました。
次期党首ということですが、ジェフリーとは庶子なのですね?
つまり、ファーランド伯は無関係と」

「ああそうだ。
長男のナユタと三男のカナタには継承権があるが、庶子のジェフリーには無い」

 これは王国の法で貴族同士の子でなければ爵位の継承が出来ないからだ。
母が平民で庶子であるジェフリーには継承権など最初からない。
いや、1つだけ例外があった。
それは跡取りが庶子1人しか居なかった場合だ。
その場合、庶子の母親がやんごとなき貴族家に養子に入り、無理やり貴族の子とするのだ。
あくまでも緊急措置であり、2人も跡継ぎ候補のいるファーランド伯爵家では無用のケースだ。

「しかもジェフリーは我が子ではない赤の他人と判明した。
継承権などあるものか。
そして、この男と我が伯爵家は無関係だ」

 審議官が嘘はないと頷く。

「承知しました。
つまり、この詐欺事件は伯爵家乗っ取りを画策した陰謀の一部ということですな」

「そうなりますな。いや、これは拙い!」

 衛兵隊隊長の言葉にアラタはハッとした。
ジェフリーによるカナタへの執拗な嫌がらせ。
庶子という立場からの嫉妬が原因と思っていたが、そうではないかもしれない。
これが良からぬ方向に行くのではないかとアラタは危惧した。

(こうしてはいられない。直ぐに領地に戻らなければ……)

「息子が危ないかもしれない。
私は直ぐに領地へと戻るとしよう」

「わかりました。
それでは審議官を同行させましょう。
審議官ならば、相手の嘘を見抜けます。
相手は今回の事件の関係者になるわけで、これも捜査の一環になります。
簒奪未遂の証拠ともなりましょう」

「助かる」

 本来なら私的な問題に首を突っ込めない審議官だが、今回は捜査の一環として同行が許された。
既にこの件は犯罪用件が成立しており、その共犯者逮捕のため特例で審議官の同行が認められたのだ。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 アラタは審議官を伴い、急遽領地に戻ることにした。
そんなアラタの元に家令のセバスチャンからカナタ行方不明の急報が届いた。
どうやらジェフリーがやらかしたようで、それを薄々予測していたアラタは顔を顰める。

「間に合わなかったか……」

 アラタは自分の迂闊さを呪った。
元々ジェフリーの出自には疑問があった。
ジェフリーの母ジュリアと関係を結んだのは、酒により前後不覚に陥っていた時だった。
アラタは酒には強い方だった。
それなのに、その日に限ってなぜか酩酊してしまった。
いつもと違うのは、専属女給メイドが体調不良のため急遽担当となったジュリアの存在だけ。
そもそも入浴介助の女給メイドに手を出すなどアラタの主義ではない。
それなのに、ジュリアにお手付きをしたと言われた。
異常事態に次ぐ異常事態、その後ジュリアがジェフリーを産んで現れる。
「あなたの子ジェフリーです」と。
そもそもジェフリーが呪いの影響を一斉受けていないことからも、ジェフリーがアラタの子ではない可能性は高かった。

「庶子ならば、我が子として育てても良いかなどと思うのではなかった……」

 その甘い判断がカナタを殺すことになったのかとアラタは苦悩するのだった。
殺すとは語弊があったかもしれない。
正確には行方不明だが、カナタは状況的に時空間の彼方に放り出された。
生きて帰ることはまず不可能な事態で死んだと同じだ。

「ジュリアとジェフリーには罪を償ってもらわねばならない」

 アラタは怒りの表情で領地へと馬車を飛ばすのだった。
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