父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
12 / 204
家出編

012 カナタ、外の世界の厳しさを知る

しおりを挟む
 美味しい匂いに誘われたのは冒険者パーティーだった。
魔物が跳梁跋扈する森林で焼き肉をしているカナタのような呑気な冒険者は、危機意識の低い金持ちのお坊っちゃんパーティーと相場が決まっていた。
そこに寄ってくる冒険者パーティーとなると、あわよくば金持ちのお坊っちゃんを殺して金や装備を手に入れようとする山賊兼業冒険者か、お節介にも忠告のうえ護衛してあげようと思った気の良い冒険者の二択だった。
今回寄って来たのは、残念なことに前者の山賊兼業冒険者だった。
深い森林の中、魔物に襲われて亡くなったのか、人に襲われて亡くなったのか区別はつかないのだ。

 彼らはカナタを発見すると、その幸運に思わず舌なめずりした。
カナタは貴族服の上に子供用の皮の鎧を着ている。
子供は成長が早く、子供用の皮の鎧などあっと言う間に着れなくなる。
それをあつらえるという事は、金がある証拠だった。
それだけで金持ちのお坊っちゃんと認定出来た。
しかも、子供一人だけで、護衛の冒険者なり騎士も居ない状態だ。
彼らはカナタを取り囲むような配置に付き、代表の中年冒険者が偶然を装ってカナタの前に出て来るという手口をとった。

「坊っちゃん、このような危険な森の中で焼き肉とは、ちょいと危険じゃないですかね?
良い匂いが森中に広がってますぜ」

 カナタは、目の前に中年の冒険者が現れるまで、【魔力探知】をすっかりし忘れていたことに気付いた。
それほど焼き肉は美味しく、カナタは夢中になっていたのだ。
カナタは慌てて【魔力探知】をかける。
すると、自分を囲むように冒険者が配置されていることに気付いた。

(囲まれてる? まさかこの人たちは……)

「どうやら、気付いたようだな」

 カナタが顔色を変えたのを見て、中年の冒険者の顔つきが変わる。
自分たちがただの冒険者ではないことにカナタが気付いたと中年の冒険者は察したのだ。
その顔は既に親切な冒険者ではなく、犯罪に手を染めたゴロツキそのものだった。

「おい、お前ら、出てこい!」

 カナタが【魔力探知】で得た情報通り、カナタを囲むように手下が木の影から草むらから現れる。
カナタは中年含めて合計6人に囲まれていた。

「というわけだ。死ぬか身ぐるみ剥がれるか選びな」

 中年の冒険者、いや山賊は、ニヤニヤしながらカナタに要求した。
この世界では、お金を【お財布】というスキルで収納するのが常識だ。
【お財布】スキルは神様がもたらしたDGドロップゴールドというお金専用の収納スキルで、本人の意思でないと中身のお金を取り出すことが出来ない。
つまり、殺してしまうとDGは【お財布】スキルと共に消えてしまい、手に入れることは出来ないのだ。
なので、本人の意思で【お財布】からDGを出すか、取引の機能でDGを【お財布】間で渡すという手続きが必要になる。

 ただし、本人が意図せず【お財布】の中身を残したまま亡くなった場合、神様によりその家族の【お財布】にDGが均等割りで渡されることがある。
そのまるで相続のような現象は、亡くなった本人の善行如何によるものだと囁かれている。

 なので、このような山賊にDGを渡すというケースは、カナタ本人の意思により渡す以外は有り得ないのだ。

「おら、財布を出せ」

 中年の山賊は、腰の剣に手をかけながらカナタを脅す。
しかし、カナタはそれどころではなかった。
【魔力探知】で違う脅威を見つけてしまっていたからだ。

 それはヴァルチャードッグ、ハゲタカ犬とも腐肉あさりとも称される魔物だった。
腐った肉の臭いに敏感で、その臭いに誘われて寄ってくる2mほどの大きさの魔物だった。
この魔物たちが、カナタが捨てたオーク肉(腐敗)に呼び寄せられた者たちだった。

 カナタは、あまりにも外の世界の危険性に無知だったので、二重にしくじっていたのだ。
腐肉あさりと呼ばれるヴァルチャードッグだが、実は群れによる狩りも得意としていた。
その獲物として人間は格好のターゲットだった。
そのヴァルチャードッグがカナタ含めて山賊をターゲットとして接近していた。
その数20。

 中年の山賊は、カナタが自分たちを恐れず、違う脅威に怖がっている様子に気付いた。
そして、自ら【気配察知】をかけてヴァルチャードッグの存在に気付いた。
その中年の様子に手下も脅威に気付き始めた。

「お頭! どうしやすか?」

 手下が山賊丸出しで尋ねる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...