父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
28 / 204
家出編

028 カナタ、馬車を助ける

しおりを挟む
 報奨金を受け取ったカナタは、その足でグリーンバレーを旅立ちグラスヒルへと向かった。
ここ4日間はやることがなかったので、冒険者ギルドでハズレオーブを仕入れる毎日だった。
1日平均100個のオーブを手に入れたため、ハズレオーブは447個集まった。
旅の装備の購入代金や、その間の宿賃を支払い、そこに報奨金50万DGが手に入ったため、カナタの残金は57万2千7百DGとなっていた。
足止めされた期間の宿代が自腹だったので、報奨金は差し引き42万DGだったようなものだった。

 グリーンバレーを旅立ったカナタたちは、街道を順調に進み3日目の朝を迎えた。
その間、お約束の盗賊には襲われず、魔物にも遭遇せず、何事もなく過ごした。
グラスヒルへの道は残すところ2日、既に中間地点を過ぎていた。
盗賊が現れなかったのは、グリーンバレーに潜む斥候役がカナタたちの噂を入手し危険と判断したためだった。
一方魔物はニクの放つ殺気に当てられて出て来なかった。

 だが、ここにカナタたちの噂を知らない連中がいた。
それはグラスヒルを縄張りとする盗賊だった。
グリーンバレーとグラスヒルの盗賊同士は、街道の中間地点を暗黙の境界線として住み分けているだけで、情報交換するほどには仲の良い間柄ではなかった。
それが盗賊の不幸だった。

「マスター、前方で馬車が囲まれています」

 野営地を離れて4時間ほど経った頃、カナタたちは盗賊に襲われている馬車を発見した。
20人の盗賊が1台の馬車を囲み、その護衛と思われる冒険者4人と切り結んでいた。
その現場に現れた少年と美少女。
普段なら盗賊は、徒歩の旅人などの金にならない相手を襲ったりはしない。
しかし、彼らの目には絶世の美少女であるニクが映っている。
ニクは襲うに足る価値があると判断されたのだ。
カナタたちは馬車を襲っている盗賊から分かれた6人の盗賊に囲まれた。

「おい、金と女をギャーーーー!!」

 ニクが荷電粒子砲20発を発射するのに5秒もかからなかった。
ニクは馬車を囲んでいる盗賊もついでに倒していたのだ。

「敵対勢力の無力化を確認」

「ニク、まだ武器の使用許可は出してないよ?」

 ニクがカナタの方を見つめ真剣な表情で報告をする。
それに対してカナタは呆れた表情で返す。

「武器使用許可は4日前に出されています」

 ニクが何を言ってるんだという表情で答える。
どうやら路地で強盗に襲われた時から武器使用許可が下りっぱなしだったらしい。

「なるほど、敵対勢力に対しての武器使用許可を僕が解除していなかったというわけか……」

 カナタはそれなら仕方ないかと納得した。

「じゃあ、武器使用許可解除ね」

「武器使用許可解除しました。
荷電粒子砲発射待機状態から停止とします。
次回発射まで2秒のアイドリングが必要です」

 ニクが命令を受諾すると、カナタはやれやれと肩を竦めた。

「了解。(今回は盗賊だったから良かったけど、僕たちの接近を警戒した隊商の護衛だったら危なかった)」

 カナタは右腕を失ってのた打ち回る20人の盗賊を見て安堵の溜息をつくのだった。
そんなカナタの元へ馬車の護衛をしていた冒険者の1人がやって来た。

「礼を言う。
俺はカリストの栄光というパーティーのリーダーをやってるレグザスという。
助かったよ。しかし凄い魔法だな」

 レグザスはニクの荷電粒子砲を魔法だと思ったらしい。
そのレグザス以外の3人は、サクサクと盗賊にとどめを刺していた。

「さて、こいつら盗賊はどうする?」

 カナタたちを襲いに分かれた6人だけは、未だ生かされている状態だった。
その6人の処置をどうするかとレグザスは言っているのだ。

 選択肢は2つあった。
1つはここで盗賊にとどめを刺し、【ロッカー】に死体を入れてグラスヒルの衛兵に報告する。
もう1つはグラスヒルまで盗賊を生かしたまま連れて行き衛兵に突き出す。
生かして連れて行くには20人という人数はリスクが高すぎる。
なので馬車を襲っていた14人は冒険者によって躊躇なく処分されたのだ。
しかし、こちらの6人の処置はカナタたちの意見を聞くということなのだろう。

「マスター。殺すのが一番安全です」

 ニクは殺すことに票を投じた。
レグザスもそれに同意なようで首を縦にうんうんと振っている。

「レグザス、こいつら見たことあると思ったら冒険者と兼業してやがる」

 レグザスの仲間が冒険者ギルドカードを手にして見えるように振っていた。
せっかく生かして連れて行っても、またこの連中が冒険者と兼業となると、カナタたちが殺戮者と思われかねない。
今回は同時に襲われた馬車の主とカリストの栄光たちがいるため、審議官を呼ぶなどということにはならないだろう。
しかし、また取り調べられたり待機させられるなどの面倒事に巻き込まれるのは必定。
殺してしまうのが一番手っとリ早かった。また、それが許される命の軽い世界だった。

「他の連中のギルドカードも集めておけ。
死体を持ち帰らずに済む」

 レグザスが「どうする?」とニクに視線で尋ねる。
カナタが7歳児程度に見えるため、2人の主導権はニクにあると思ったのだろう。

「マスター。盗賊の拠点アジトを制圧することを具申いたします」

「え?」

「第一に、この人数の盗賊が消えれば、その原因となった者を残った盗賊が見逃すわけがありません。
第二に、盗賊のアジトを制圧すれば、そこに残されたお宝はマスターのものとなります」

 ニクが怖いことを言って来た。
顔色一つ変えずに言うその姿にカナタは背筋に冷たい物を感じた。
しかし、この盗賊を引き渡しても殺しても、カナタが疑われ生き残りの盗賊関係者から復讐される可能性が高い。
盗賊が馬車を襲撃したタイミングとグラスヒルへとカナタたちが該当門を出入りした頃合いで、誰が盗賊を返り討ちにしたか、だいたいの関係者は把握出来るだろう。
それに加えて衛兵に通報すれば、もっと特定は容易になる。
毒を食らうなら皿までとも言うが、るならアジトまで殲滅するべきだろう。

「一理あるな。俺たちにはアジトの制圧は無理だろうが、嬢ちゃんの魔法なら可能だろう」

 カナタがニクの主であり、主導権を握っていることに驚きつつ、レグザスが無責任なことを言う。

「ああ! どっちにしろ拙い!
もうやっちゃった――14人死亡、6人右腕欠損――んだから、盗賊の残存戦力に復讐されかねない!
しょうがない。ニク、やれるの?」

「お任せください」

 ニクが怖い笑顔で答えると、レグザスが盗賊たちにアジトの場所を吐かせる。
その手際と言ったら……。
生き残った盗賊は、たった1人だけだったとだけ言っておこう。
その盗賊も用が済んだらサクっと……。

「俺たちも一緒にと言いたいところだが、俺たちは雇い主を護衛しなければならないからな」

「レグザス、命の恩人に手助けを」

 馬車からメイド2人を従えた少女が降りて来て、そう口にした。
その少女は年齢12歳ぐらいで腰まで伸びた金髪が美しく、瞳は大きく輝くような碧眼だった。
その顔は美しく、着ているドレスは赤で豪華絢爛、見たまんま貴族のご令嬢だった。
ドレスは貧乏なファーランド伯爵家のカナタの貴族服より上物だった。
よく見れば馬車も装飾過多な貴族仕様だ。

「しかし、お嬢の護衛を離れるわけには……」

 不満げな顔で答えるレグザスを制してお嬢様はカナタに近づくと優雅にカテーシーをした。

「危ない所をご助力いただき感謝いたします。
私、ウッドランド子爵家二女のサーナリアと申します。
お名前を伺ってもよろしいですか?」

 サーナリアが、カナタの方を向いて名前を尋ねて来た。

「僕はファーランド伯爵家三男のカナタです」

 カナタは初めて会う異性の貴族に戸惑い名前を言うので精一杯だった。

「ファーランド伯爵家のカナタ様ですね」

 サーナリアはカナタの名を何度も口ずさみ覚えているようだ。

「お礼はグラスヒルにてあらためていたします。
レグザス、あなたにはカナタ様とともに行き盗賊の拠点制圧を命じます。
我らも盗賊の恨みを買うのは同じでしょう。
これだけ倒せば、今日はこの街道にはもう盗賊は出ないではずです。
護衛は残り3人で充分です」

 レグザスたちカリストの栄光は、ウッドランド子爵家と専属契約をしている冒険者だった。
なので、ギルドを通さない依頼が雇い主権限で成立する。

「承知しました。俺もカナタ様には助けられた恩義があります。
微力ながらお手伝いしましょう。
あの魔法を見たら必要ないかもしれませんがね」

 こうしてカナタ、ニク、レグザスの3人は盗賊の拠点制圧に向かうことになったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

処理中です...