父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

027 カナタ、通報する

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 カナタは、このままでは今後も度々このように襲われるのではないかと気付いた。
ここは、自分たちの実力をアピールして、未然に危機を防ぐべきではないかと思ったのだ。
それが衛兵に通報するという考えに至った理由だった。

 カナタが路地から通りに出ると、丁度衛兵が駆けつけるところだった。
どうやら通行人が通報したらしい。

「衛兵さん、こっちです!」

 カナタは衛兵を呼んだ。

「!」

 カナタに呼ばれ路地裏の惨状を見た衛兵が絶句する。
そこには右腕を失ってのた打ち回る冒険者が3人いたからだ。
通報は路地から光魔法が空に向かって放たれたというものだった。
衛兵は、大方強盗が返り討ちにあったのだろうと思っていたが、ここまで綺麗に右腕だけを狙うとは、並大抵の魔術師ではないと認識した。

「強盗です。剣を抜いて襲って来たので返り討ちにしました」

 先ほど衛兵を呼んだ7歳児ぐらいの少年が、淡々と状況を説明しだす。
少年とは思えない理路整然とした説明と強盗を返り討ちにした実力を想像して、衛兵はカナタを不思議なモノを見るようにしばし見つめてしまった。

「状況はわかった。
しかし、剣を抜いて襲って来たという話なのに、その剣が見あたらない。
確かにこいつらの腰の剣は鞘だけになってる。
しかし、それを以って剣を抜いたとは認められん」

 その衛兵の口ぶりにカナタは面倒なことになったと気付いた。

「マスター、あそこ」

 ニクが示した先にキラリと光るものがあった。

「ああ、あそこに剣の一部がありますね」

 衛兵が、そこに近づき元の部分が溶け落ちた剣先を手にした。
光魔法で溶けたということだと思われた。

「一応、これが物証となるか……。
街中で剣を抜いただけでも重罪になる。
被害者が強盗だと言うならおそらくそうなのだろう」

「違う、俺たちが襲われて反撃したんだ!」

 強盗のリーダーが苦し紛れの嘘を吐く。
それを聞いた衛兵は、しばし思考を巡らすと、カナタに向けて言った。

「だが、先に手を出したのがこいつらとは限らん。
こいつらの正当防衛という可能性も捨てきれん。
お前たち2人も衛兵詰め所に来い。
取り調べをする」

 この世界、目撃者もなく犯罪を証明するのはとんでもなく難しかった。
カナタは、そこで本で読んだ知識を披露する。

「どちらの証言が正しいのかは、審議官を入れれば一目瞭然でしょ?
なんで僕たちが取り調べをされないといけないの?」

 そう言ったカナタに衛兵は呆れ顔になった。

「一般人の関わる事件に審議官など来るわけがないだろ」

「え? 僕貴族だよ?」

 カナタの言葉に衛兵の目が点になった。
よくよく見ればカナタは仕立ての良い貴族の坊ちゃんと思しき服装をしている。

「坊ちゃん、それを証明することは?」

 衛兵の言動が遜るものに変わった。
例え子弟でも、貴族であれば話が違って来る。
もし襲われたのが事実であり、それに衛兵が難癖付けたと親に思われたら、今後の衛兵の人生に影響が出かねなかった。

「貴族と証明できるものをお持ちで?」

「これ?」

 カナタは衛兵に貴族の身分証明書を提示した。
その瞬間、この事件は解決した。

「失礼しました!
この件は貴族に対する不敬罪が成立します。
審議官を入れてこいつらを調べれば犯罪を立証可能です。
坊ちゃんには、取り調べなど不用です」

 これは貴族優遇に思えるかもしれないが、貴族が貴族の名を出して証言したからには、そこに審議官が入って嘘とわかればお家摂り潰しもあるのだ。
貴族の名にかけて証言したことが嘘であるわけがないというのが衛兵の認識だった。
審議官が入ればバレる嘘をつくメリットが貴族側には無いからだ。

「良かった。
僕らはこれからグラスヒルに向かうんだけど問題ない?」

「出来れば審議官が確認するまでは、この街に留まっていただきたい。
強盗を討伐した報奨金も出ますので」

「え? 報奨金出るの?」

「はい。おそらく余罪も出るでしょう。
それらの事件の数に見合った報奨金が出るはずです」

 それは美味しいとカナタは思った。
カナタはしばしこの街に残ることにした。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 数日後、審議官が入って尋問を行ったところ、強盗の事実が確定し、余罪もたんまり出て来た。
強盗たち3人は犯罪奴隷落ちで鉱山送りになり、その労役で被害者に弁済することになった。
死刑に処してはそこで終了なので、被害者のために生かすということらしい。
カナタたちも強盗捕縛の報奨金をもらい、やっと街を出ることが出来るようになった。
この件が知れわたり、カナタたちにちょっかいを出す不心得者は居なくなった。
不心得者の間では、カナタたちの実力を認め、割りに合わないという認識となったのだ。
もし捕まらなかったとしても腕一本持っていかれる。
そんな危険を冒すメリットがアイテム買取価格程度の金には無かった。
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