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ガチャ屋開業編
053 キツネ獣人ヨーコ、策に溺れる
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オークションで奴隷として売られていたキツネ獣人、名前をヨーコという。これでも小国の姫だった。
ヨーコの国があったのはスヴェルナ帝国と辺境の堺だった。
国とは言っても小さな街程度の田舎であり、帝国の論理によると国とは認められず、いつのまにか帝国の一部ということにされていたらしい。
なのでヨーコたち自身ですら帝国の領民であるという認識は全くなかった。
それが突然、帝国領であるにもかかわらず税金が未納であると、帝国の軍隊に攻められ、反逆罪のうえ戦争捕虜として捕らえられてしまったのだ。
戦争捕虜で奴隷落ちという体で奴隷となっているが、実際は所謂奴隷狩りによる奴隷化と同じだった。
ヨーコの国を滅ぼし領有するため、いや領民を奴隷化するために詭弁が弄されただけのことだった。
そんな経緯で奴隷化されてしまったヨーコだが、帝国から隣国であるメルティーユ王国に連れて来られてから劇的な変化があった。
メルティーユ王国では、奴隷の人権が法で守られており、帝国での酷い待遇からは嘘のような好待遇となっていたのだ。
そのおかげだろうか、制限を受けていた魔力枷が弱体化し、【魅了】の魔眼を使うことが出来るようになった。
「キキョウ姉さま、サキ、レナ、今から3人に幻術をかけます。
姉さまたちは、人族を装って契約奴隷として身を隠してください。
なるべく3人で固まって雇われるようにしてくださいね」
ヨーコの姉は元第一王女、サキとレナは護衛の剣士と魔術師だった。
国を失い奴隷とされたが、お家再興をまだまだ諦めてはいなかった。
「ヨーコはどうするのです?」
心配してジッと見つめるキキョウにヨーコは少し目を晒して答えた。
「私は、この魔眼で隙を見て逃げ出します。
間抜けを魔眼で操って落札させてそのまま逃げてやりますよ。
せいぜい高く買ってもらおうかなw」
キキョウは、ヨーコが余裕ぶって話しているのに気付きつつ、かける言葉が見つからなかった。
そこまでしてくれる妹の負担になってはいけないと、本当に大丈夫なのかという言葉を飲み込んだ。
大丈夫ではないに決まっているからだ。
だけど、妹を信じてここは策に乗るしかなかった。
全員が闇オークション――キキョウたちは闇だと信じている――で売られてはお終いだからだ。
「「姫様、ご無事で」」
「サキもレナも姉さまを頼みます」
「「お任せください」」
姉妹今生の別れの時だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
闇オークション――闇とヨーコが思っているだけ――が始まった。
バックヤードの檻から、手足に枷を嵌められ首輪を鎖に繋がれた奴隷女性が引き立てられていく。
ヨーコたちとは違う場所から戦争捕虜を装って連れて来られた女性だろう。
そんな奴隷たちが次々に落札されていく声が聞こえて来る。
「戦争捕虜? 冗談じゃない。ただの奴隷狩りでしょ?」
彼女たちには悪いけど、救うだけの力も余裕もヨーコにはなかった。
そして、ヨーコがオークションに上げられる番となった。
舞台袖からは、番号札を持った落札人がボックス席に座っているのが見えた。
「さて、どの人に落札してもらおうか?」
ヨーコが舞台に引き立てられると、中央最前列に座っている子供と目が合った。
どう見ても7歳児、この子なら性的なことにはまだ目覚めていないだろう。
逃げるのに時間がかかっても暫くは純潔を守れるはず、それに中央最前列という好待遇の席に座っているからには並大抵ではない金持ちか、王侯貴族様のはずだ。
そう思ってヨーコはカナタをターゲットに決めた。
「(この子にしよう! この子なら変な扱いはしないはず)」
ヨーコは【魅了】の魔眼を発動すると、中央最前列のカナタを魅了し操った。
カナタは一瞬驚きを見せながらも番号札を揚げ続けた。
オークションは白熱し、6番のブタ貴族が上げ幅を増やせと要求する。
一気に落札額が跳ね上がる。
「(冗談じゃない。こんなブタ貴族なんてごめんよ! 坊ちゃん頑張ってよ?)」
その意思が通じたのか、中央のカナタも上げ幅を増やせと要求した。
この強気の態度が効いたのか、ついにブタ貴族が降りて5番の坊ちゃんがヨーコを落札した。
「(よし。第一段階終了。後は奴隷契約の時にもう一度操ってやろう)」
ヨーコは上手く事が運んだとほくそ笑んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それでは、清算と商品の引き渡しを行います」
バックヤードに設けられた応接室に、フェンリネルとキツネ獣人、遺跡出土品のキューブが運びこまれていた。
そこに出品者兼落札者のカナタと護衛のニク、オークションの事務員が入室する。
カナタがソファーに座り、ニクがカナタの背に立つ。
事務員はソファーに座ると、早速清算用のパッド型精算機を手にして報告を始めた。
「11品の販売代金7280万DGから、出品料10%を差し引いた6552万DGが、カナタ様の売却益となります」
カナタは出品したアイテムの販売代金6552万DGを受取証と引き換えで手に入れた。
あまりに多い金額なので貨幣では取引せずに【お財布】決済にした。
事務員のパッドとカナタの【お財布】を接触させると、チャリンという音とともに6552万DGが【お財布】に加算された。
「続いて落札代金3800万DGをお支払いいただきます」
カナタは【お財布】でそれを支払う。
事務員のパッドとカナタの【お財布】を接触させると、チャリンという音と共に3800万DGが【お財布】から差し引かれた。
「続きまして、奴隷の主従契約を奴隷魔法で書き換えます」
奴隷魔法の使い手が呼び込まれ【契約鑑定】の魔法を使い、鑑定結果を【自動書記】の魔法で紙に書き写した。
「この通り、戦争捕虜による奴隷化で合法奴隷です」
鑑定結果の書類はそのままカナタに渡された。
「え?」
ヨーコは焦った。
帝国では、奴隷契約時に鑑定書類なんて渡さなかった。
ここで【魅了】の魔眼を使って、奴隷契約自体を書き換えてやろうと画策していたヨーコにとって、この鑑定書類は想定外だった。
「(拙い。奴隷契約を書き換えたことが、これじゃバレてしまう……)」
その焦った様子をニクがジッと見つめていることにヨーコは気付いていなかった。
「続けて奴隷契約魔法をかけます。
こちらに奴隷のお嬢さん、こちらに主人である坊ちゃんが立ってください」
焦ったヨーコは全員を【魅了】の魔眼で操り、奴隷契約を行ったかのように記憶を書き換えようと思い実行に移した。
「マスター、危険です」
ヨーコの眼が赤く光った瞬間、ニクがヨーコの眼を遮るように左腕を出した。
ニクの左腕には光の障壁が展開され、魔眼の魔力を弾き返していた。
ヨーコは全員に対して魔眼を使ったのだが、愛砢人形であるニクには通用しなかったのだ。
ニクはヨーコの首筋に手刀を当て気絶させるとカナタに報告した。
「魔眼です。マスターは落札の時から操られています」
この後、オークショニア、ウッドランド子爵も駆けつけ今後の検討をすることになった。
カナタが魔眼で操られて落札させられたこと、魔眼によって奴隷契約魔法を回避しようとしたこと、これはオークション始まって以来の不祥事だった。
しかし、カナタは借金分の儲けも残ったし、ヨーコを買うこと自体を撤回しようとは思わなかった。
カナタのアイデンティティは、トラブルを避けるなら多少は我慢するというものだった。
それは病床の身で遠慮が身についてしまった弊害なのかもしれない。
「それでは、このまま奴隷契約魔法をかけます」
ヨーコとカナタの奴隷契約は、ヨーコが気絶したまま行うことになった。
奴隷魔法の使い手の左手から淡い光の球が出て来てふわりと漂うと、ヨーコの右首筋にある奴隷紋に触れた。
その光の球が奴隷紋に輝きを与える。
奴隷魔法の使い手が右手をすっとカナタの方に向けると、その光の球がカナタの方に向かい胸の中心に溶けるように沈んでいった。
【契約鑑定】と【自動書記】で契約内容を書面に書き写し確認する。
間違いなく奴隷契約が成立した。
ヨーコが目覚めた時には奴隷契約魔法は終わっており、最初の【命令】として許可なく魔眼を使わない事と命じられた。
カナタに落札させ、あわよくばサッサと逃げ出そうと思っていたヨーコの目論みは見事に外れたのだった。
ヨーコの国があったのはスヴェルナ帝国と辺境の堺だった。
国とは言っても小さな街程度の田舎であり、帝国の論理によると国とは認められず、いつのまにか帝国の一部ということにされていたらしい。
なのでヨーコたち自身ですら帝国の領民であるという認識は全くなかった。
それが突然、帝国領であるにもかかわらず税金が未納であると、帝国の軍隊に攻められ、反逆罪のうえ戦争捕虜として捕らえられてしまったのだ。
戦争捕虜で奴隷落ちという体で奴隷となっているが、実際は所謂奴隷狩りによる奴隷化と同じだった。
ヨーコの国を滅ぼし領有するため、いや領民を奴隷化するために詭弁が弄されただけのことだった。
そんな経緯で奴隷化されてしまったヨーコだが、帝国から隣国であるメルティーユ王国に連れて来られてから劇的な変化があった。
メルティーユ王国では、奴隷の人権が法で守られており、帝国での酷い待遇からは嘘のような好待遇となっていたのだ。
そのおかげだろうか、制限を受けていた魔力枷が弱体化し、【魅了】の魔眼を使うことが出来るようになった。
「キキョウ姉さま、サキ、レナ、今から3人に幻術をかけます。
姉さまたちは、人族を装って契約奴隷として身を隠してください。
なるべく3人で固まって雇われるようにしてくださいね」
ヨーコの姉は元第一王女、サキとレナは護衛の剣士と魔術師だった。
国を失い奴隷とされたが、お家再興をまだまだ諦めてはいなかった。
「ヨーコはどうするのです?」
心配してジッと見つめるキキョウにヨーコは少し目を晒して答えた。
「私は、この魔眼で隙を見て逃げ出します。
間抜けを魔眼で操って落札させてそのまま逃げてやりますよ。
せいぜい高く買ってもらおうかなw」
キキョウは、ヨーコが余裕ぶって話しているのに気付きつつ、かける言葉が見つからなかった。
そこまでしてくれる妹の負担になってはいけないと、本当に大丈夫なのかという言葉を飲み込んだ。
大丈夫ではないに決まっているからだ。
だけど、妹を信じてここは策に乗るしかなかった。
全員が闇オークション――キキョウたちは闇だと信じている――で売られてはお終いだからだ。
「「姫様、ご無事で」」
「サキもレナも姉さまを頼みます」
「「お任せください」」
姉妹今生の別れの時だった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
闇オークション――闇とヨーコが思っているだけ――が始まった。
バックヤードの檻から、手足に枷を嵌められ首輪を鎖に繋がれた奴隷女性が引き立てられていく。
ヨーコたちとは違う場所から戦争捕虜を装って連れて来られた女性だろう。
そんな奴隷たちが次々に落札されていく声が聞こえて来る。
「戦争捕虜? 冗談じゃない。ただの奴隷狩りでしょ?」
彼女たちには悪いけど、救うだけの力も余裕もヨーコにはなかった。
そして、ヨーコがオークションに上げられる番となった。
舞台袖からは、番号札を持った落札人がボックス席に座っているのが見えた。
「さて、どの人に落札してもらおうか?」
ヨーコが舞台に引き立てられると、中央最前列に座っている子供と目が合った。
どう見ても7歳児、この子なら性的なことにはまだ目覚めていないだろう。
逃げるのに時間がかかっても暫くは純潔を守れるはず、それに中央最前列という好待遇の席に座っているからには並大抵ではない金持ちか、王侯貴族様のはずだ。
そう思ってヨーコはカナタをターゲットに決めた。
「(この子にしよう! この子なら変な扱いはしないはず)」
ヨーコは【魅了】の魔眼を発動すると、中央最前列のカナタを魅了し操った。
カナタは一瞬驚きを見せながらも番号札を揚げ続けた。
オークションは白熱し、6番のブタ貴族が上げ幅を増やせと要求する。
一気に落札額が跳ね上がる。
「(冗談じゃない。こんなブタ貴族なんてごめんよ! 坊ちゃん頑張ってよ?)」
その意思が通じたのか、中央のカナタも上げ幅を増やせと要求した。
この強気の態度が効いたのか、ついにブタ貴族が降りて5番の坊ちゃんがヨーコを落札した。
「(よし。第一段階終了。後は奴隷契約の時にもう一度操ってやろう)」
ヨーコは上手く事が運んだとほくそ笑んだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それでは、清算と商品の引き渡しを行います」
バックヤードに設けられた応接室に、フェンリネルとキツネ獣人、遺跡出土品のキューブが運びこまれていた。
そこに出品者兼落札者のカナタと護衛のニク、オークションの事務員が入室する。
カナタがソファーに座り、ニクがカナタの背に立つ。
事務員はソファーに座ると、早速清算用のパッド型精算機を手にして報告を始めた。
「11品の販売代金7280万DGから、出品料10%を差し引いた6552万DGが、カナタ様の売却益となります」
カナタは出品したアイテムの販売代金6552万DGを受取証と引き換えで手に入れた。
あまりに多い金額なので貨幣では取引せずに【お財布】決済にした。
事務員のパッドとカナタの【お財布】を接触させると、チャリンという音とともに6552万DGが【お財布】に加算された。
「続いて落札代金3800万DGをお支払いいただきます」
カナタは【お財布】でそれを支払う。
事務員のパッドとカナタの【お財布】を接触させると、チャリンという音と共に3800万DGが【お財布】から差し引かれた。
「続きまして、奴隷の主従契約を奴隷魔法で書き換えます」
奴隷魔法の使い手が呼び込まれ【契約鑑定】の魔法を使い、鑑定結果を【自動書記】の魔法で紙に書き写した。
「この通り、戦争捕虜による奴隷化で合法奴隷です」
鑑定結果の書類はそのままカナタに渡された。
「え?」
ヨーコは焦った。
帝国では、奴隷契約時に鑑定書類なんて渡さなかった。
ここで【魅了】の魔眼を使って、奴隷契約自体を書き換えてやろうと画策していたヨーコにとって、この鑑定書類は想定外だった。
「(拙い。奴隷契約を書き換えたことが、これじゃバレてしまう……)」
その焦った様子をニクがジッと見つめていることにヨーコは気付いていなかった。
「続けて奴隷契約魔法をかけます。
こちらに奴隷のお嬢さん、こちらに主人である坊ちゃんが立ってください」
焦ったヨーコは全員を【魅了】の魔眼で操り、奴隷契約を行ったかのように記憶を書き換えようと思い実行に移した。
「マスター、危険です」
ヨーコの眼が赤く光った瞬間、ニクがヨーコの眼を遮るように左腕を出した。
ニクの左腕には光の障壁が展開され、魔眼の魔力を弾き返していた。
ヨーコは全員に対して魔眼を使ったのだが、愛砢人形であるニクには通用しなかったのだ。
ニクはヨーコの首筋に手刀を当て気絶させるとカナタに報告した。
「魔眼です。マスターは落札の時から操られています」
この後、オークショニア、ウッドランド子爵も駆けつけ今後の検討をすることになった。
カナタが魔眼で操られて落札させられたこと、魔眼によって奴隷契約魔法を回避しようとしたこと、これはオークション始まって以来の不祥事だった。
しかし、カナタは借金分の儲けも残ったし、ヨーコを買うこと自体を撤回しようとは思わなかった。
カナタのアイデンティティは、トラブルを避けるなら多少は我慢するというものだった。
それは病床の身で遠慮が身についてしまった弊害なのかもしれない。
「それでは、このまま奴隷契約魔法をかけます」
ヨーコとカナタの奴隷契約は、ヨーコが気絶したまま行うことになった。
奴隷魔法の使い手の左手から淡い光の球が出て来てふわりと漂うと、ヨーコの右首筋にある奴隷紋に触れた。
その光の球が奴隷紋に輝きを与える。
奴隷魔法の使い手が右手をすっとカナタの方に向けると、その光の球がカナタの方に向かい胸の中心に溶けるように沈んでいった。
【契約鑑定】と【自動書記】で契約内容を書面に書き写し確認する。
間違いなく奴隷契約が成立した。
ヨーコが目覚めた時には奴隷契約魔法は終わっており、最初の【命令】として許可なく魔眼を使わない事と命じられた。
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