父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

052 カナタ、オークションに参加する5

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 カナタの意思ではなかったとしても、オークションは成立してしまっていた。
お金が足りなくて落札無効となる場合もあるが、それは本人が奴隷落ちして賠償するという重いペナルティがあったので、逆にそうならなくて良かったぐらいだった。
なので、落札は間違いでしたとなどと簡単に言えないのがオークションなのだった。
カナタは返済予定のお金にまで手を出してしまった事に頭を抱えたが、まだ挽回出来るだけの出品が後半にも残っているので、これ以上落ち込まないように、それと無駄遣いしないように頭を切り替えた。

 一方、カナタが操られているという危機であるのに、護衛のニクが何も反応しなかったが、ニクはカナタが生命の危機を迎えていないと判断し、その結果カナタが女奴隷を何人買おうがどうでも良いと思っていた。
経済的な損失という部分まで護衛するつもりはニクには更々なかった。

 その後生き物オークションも滞りなく進み、6番の御仁もお眼鏡に適う奴隷を買えたようで、ご満悦の様子だった。
カナタはあれだけ競り合ったことで恨まれてしまい、6番の御仁と後で揉めなくて済んで良かったと思っていた。

 そしてアイテムオークション後半が開始する。
カナタが出品していた武器防具は、それぞれ高値で売れ、3230万DGの売り上げを得た。
そのうち最低落札価格としてカナタの落札予算に組み込まれていた1800万DGを差し引いた残りは1430万DG、10%は出品料として主催者に支払われるので、1287万DGが利益となった。
それに加えて270万DGの残金があるので1557万DG、返済予定の1900万DGに343万DGも足りない。
カナタに残っている出品物はエクストラポーションあと1つのみ。
既に落札予算入りしている最低落札価格と出品料も含めると682万DGで落札されなければ、目的額――1900万DG――に到達しない計算だった。

「お待たせしました。
後半初のエクストラポーションの出品です!
こちらはM氏による出品になります」

 本日6つ目のエクストラポーションの出品に会場が騒めく。
しかも3人目の出品者の登場。
いよいよこれが最後の出品だろうと、落札者たちが白熱する。
ただし、前半に次ぎ生き物オークションと大金を使ってしまった落札者は、指を咥えてそれを見ているしかないのだ。

「それでは、300万DGから10万DGずつ上げて行きます。
310、320、330……560、570、580!
はい、31番さん580万DGで落札です!」

 本日出品されたエクストラポーションの落札額2位の高値だった。
その高値であってもカナタの目標金額の100万DG安。
次にカナタの出品が壇上に登った時に、はたしてこれより高く落札してもらえるのだろうか?
どう見ても絶望的だった。

「続きまして、遺跡出土品の出品です。
ウルティア国の古代遺跡から出土したキューブです。
S級鑑定士でもこれが何なのか鑑定不能という珍品です。
用途不明なため、オブジェとしてお楽しみください」

 それは謎の金属光沢を放つ10cm×10cm×10cmの立方体だった。
カナタはまた変なものが出て来たなと思って興味を失った。
しかし、ニクが尋常ではない様子でガバリと前のめりになり、カナタの頭の上に被さって来た。
胸がカナタの頭に乗っているのだが、ニクは全く気にする様子がなかった。

「それでは、100万DGから10万DG刻みで上げて行きます」

「マスター、あれ落札して」

 ニクがカナタの右腕を掴むと思いっ切り番号札を揚げさせた。
その尋常ではない様子にカナタはビックリしたが、目標額に到達しない可能性が高い今、余計なお金を使うわけにはいかなかった。

「お1人のようです。
5番様100万DGで落札です」

 オークショニアは落札開始に番号札を揚げていたのがカナタだけだと認識し、そのままカウントアップをせずに最低落札価格での落札を確定した。
カナタはただでさえ足りないお金が更に100万DG減ってしまったことにニクに文句を言おうとした。
しかし、ニクが満足の笑みを浮かべているのを見て、ニクが喜んでいるならいいかと何も言わなかった。
実はこの出土品が鑑定出来ないのはとんでもない代物だからであり、その使用用途を知っていたニクにとってはお買い得であったことなど、この会場にいる誰もが気付いていなかった。

 しかし、それどころではない人物がここに居た。
このオークションに参加した目的である1900万DGの確保が不可能になったカナタだ。
カナタはそっとウッドランド子爵に耳打ちする。

「ウッドランド子爵、追加で出品って出来ますか?」

「ものによるが、何かね?」

 ウッドランド子爵もカナタに耳を寄せて内緒話に付き合ってくれる。

「エクストラポーションでは?」

「うーむ。今日は出品が多かったから難しいかな……」

 エクストラポーションが出過ぎるのも良くないらしい。
ウッドランド子爵は主催者としての立場で難色を示した。

「となると聖剣?」

「いや、ここのオークションでは、そんなものを落札できる金額を誰も持っていないぞ。
それにもう後半、例え持っていても散財していて無理だろう」

 参加者は皆、かなりの散財をしている。
聖剣は軽く100億DGはすると言われている。
そんなお金はおそらく持って来ていないだろうし、ウッドランド子爵の出品圧力も王都でのオークションに出すという意味であり、ここで売ろうとは全く思っていなかった。

「ですよね」

 困ったカナタはあることを思いついた。
ここで100万DGのSR確率10%10連ガチャを引くのは無理だが、10万DGのSR確率5%ガチャ1回なら手持ちの金貨で引けないこともない。
それでSRアイテムが出ればオークションで200万DGは下らないはずだ。
カナタはこっそりスキルを使いガチャを引く。
ただし、この場で携帯ガチャ機を見せるわけにも動作音を聞かせるわけにもいかない。
携帯ガチャ機にステルスモードがあって良かったと思うカナタだった。

(ガチャガチャ、キン!)

 カナタの耳にだけガチャを引いた音が聞こえた。
カナタの目の前にだけ結果が表示される。

SRアイテム ファイアランスの指輪
       誰でも攻撃魔法【ファイアランス】が撃てるようになる魔導具
       5発撃ったら燃料石を交換しなければならない
       しかし、交換し続ければ無限に撃つことが可能となる

 カナタは望み通りのSRアイテムが出て喜んだ。
これも幸運値57のおかげだとカナタは思っていた。
実は屋敷の庭でグラス系魔物を500体以上討伐した際に、カナタはレベルアップしていたことに気付いていなかった。
その結果、幸運値は57どころではなく65となっていたのだ。

「では、この魔導具、【ファイアランスの指輪】ではどうでしょう?」

 カナタはポケットから取り出したかのような仕草でファイアランスの指輪を手にして、ウッドランド子爵にそれを見せた。

「カナタ君は、まだそんなアイテムを持っていたのかね。
それならば、問題ない。早速追加出品させよう。
おい!」

 そう言うとウッドランド子爵は、部下を呼びつけてファイアランスの指輪を出品に回した。
そして、何やら紙に書き込むとカナタに渡した。
それは預かり証であり、落札後の売上金を受け取るための受取証でもあった。

「ありがとうございます。
これで借金も返せそうです」

 この後、カナタが出品したエクストラポーションは560万DGで売れ、ファイアランスの指輪は1200万DGで売れた。
燃料石を交換し続ければ無限にファイアランスが撃てるなど、戦場の軍事バランスを変えかねないアイテムだったのだが、カナタはやらかしてしまったことに気付いていなかった。
それが1200万DGという安値・・で落札されたのは、偏に出品が後半で落札者がお金を持っていなかったせいだった。

 こうしてオークションは終わり、カナタの収支はエクストラポーション5つで2850万DG、武器防具5つが3230万DG、そして追加の魔導具が1200万DGで合計7280万DGの売り上げに、出品料10%を引いて6552万DGが純利益となった。
そこからフェンリネルの支払い700万DG、キツネ系獣人の支払い3000万DG、古代遺跡から出土したキューブの支払い100万DGを引いて2752万DGがカナタの儲けとなった。
借金1900万DGを支払っても852万DG残る。
カナタは当初の目的である借金返済の目途がつき、ホッとするのだった。

「そうそう、伝え忘れていた。
お店の修理代は300万DGだそうだぞ?」

 カナタは、すっかり忘れていた金額をウッドランド子爵から伝えられた。
大工さんをウッドランド子爵家に紹介してもらったこと、そしてカナタがウッドランド子爵家に居候していることで、修理代の連絡がウッドランド子爵に行っていたらしい。
もしファイアランスの指輪がガチャから出なかったら、カナタは修理代も払えないところだったのだ。
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