父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

051 カナタ、オークションに参加する4

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 カナタがフェンリネルの子を落札し、その子がバックヤードに下げられると、次の生き物が壇上に上げられた。

「え? 獣人?」

 それは猫系の耳としっぽを持った獣人の女性だった。
奴隷が出品されるとはカナタも聞いていたので、所謂職業斡旋的な奴隷なのだろうとカナタは思っていた。
しかし、その獣人の手足には枷が、首には鎖で繋がれた首輪が嵌められ、自由に動けないように鎖は短く繋ぎ止められていた。
その様子は、どう見ても人権が守られているようには見えなかった。
カナタは盗賊に捕まっていたララとルルの酷い処遇は盗賊に捕まったせいだと思ていた。
この国の法律では奴隷にそんな扱いをしてはいけなかったからだ。
しかし、目の前には違法行為を当たり前とする盗賊と同じように振舞われたかの様子の獣人奴隷がいる。

「どうしてこんな扱いを?」

 カナタの疑問にはオークショニアが答えた。
それは偶然だったのだが、タイミング的にまるでカナタに答えたかのように聞こえた。

「この獣人奴隷は、隣国スヴェルナ帝国にて奴隷となり、この国に輸出された奴隷です。
我が国の法律では、他国の法の元で奴隷となった者の取引は合法であります。
例え我が国では違法となる扱いで奴隷とされていたとしても、他国では合法である限り、我が国では一切関知しないことになっております。
安心して落札していただきたくお願いいたします」

 つまりこの獣人女性は本人の意思で出稼ぎに来た奴隷ではなく、本人的に奴隷という立場に不服があるということだった。
だから、万が一のことを考え、拘束され自由を奪われた状態でのオークションとなったのだろう。
奴隷契約魔法で縛っていても、死を賭して抵抗しようとすれば、カナタなど捻り殺されてしまうかもしれない。
この国で奴隷となったのであれば完全に違法奴隷だった。
それが外国の奴隷となり、この国で売られるのなら合法になる。
完全に抜け道となっているグレーな奴隷だった。
唯一幸いなのは、外国と違って衣服を剥ぐなどのセクハラ的な扱いを受けて売られていないことだろう。

「猫系獣人、24歳女性、戦士職、戦闘系スキルあり、欠損や傷なし、非処女です。
スヴェルナ帝国にて戦争捕虜となり奴隷化です。
それでは、300万DGから5万DG刻みで上げて行きます。
305、310、315……350、355!
はい、3番様落札です」

 カナタは最前列ど真ん中という座席をこれほど恨めしく思ったことは無かった。
獣人女性は目の前に居るカナタをずっと睨みつけていたのだ。
それにしても、この美人な戦闘系猫耳お姉さんが355万DGで落札された。
カナタは自分が買わされたメイドが1000万~2000万DGだったのは何だったのかと頭を捻った。
尤も、外国では合法でも、自国の倫理観では限りなく黒に近いグレーな合法なため、安いとはいえカナタもさすがに札を揚げる気力がわかなかった。

 そういった奴隷たちが何人も落札――350~450万DGだった――され、間に珍獣や騎獣なども挟んだ後、目の前に連れて来られた美少女はキツネ系のモフモフ尻尾を持った獣人だった。

「キツネ系獣人、14歳女性、回復スキルあり、欠損や傷なし、処女。
スヴェルナ帝国にて戦争捕虜となり奴隷化です。
それでは、1000万DGから10万DG刻みで上げて行きます」

「は? 急に1000万?」

 容姿は基準になるのだろうけど、急に最低落札価格が上がった理由は何なのだろうか?
カナタは疑問でしょうがなかった。
これまでに出品された奴隷は、漏れなく所謂特別な契約オールオッケーな奴隷だった。
そこにとある付加価値があったから高くなっているということに、カナタには気付くことが出来なかった。

 この世界はDNA検査など無い世界なので、貴族が自分の子であるという確証を得るためには、処女と関係を持って子を生すことが重要だった。
そのために貴族も庶民も処女信仰とでも言うべき価値観が定着してしまっている世の中だった。
だから奴隷の値段にも処女か非処女かという、本来ならどうでも良い――特に異世界人にとって――はずのセクハラ紛いの価値観が反映してしまうのだった。

「それでは、開始します。
1010、1020……」

 何故かカナタの腕がしっかりと番号札を掲げていた。

「え?」

 カナタは本来、このような奴隷を欲しがるつもりは全く無かった。
奴隷を雇ったのも、実務としてメイドが3人ほど必要だったからだ。
元々、カナタの住居の掃除や料理など身の回りの世話が出来る程度のメイドで良かった。
貴族家の矜持とか体面を保つために立派なスキルを持ったメイドが必要というわけでもなかった。
そもそも1900万DGもの借金を背負ってまで、あの3人のメイドを雇う必要はない。
他にもっと安いメイド候補の奴隷を探せばよかったのだ。
それが何故か義務感のような焦燥感に駆られて借金の申し出までしてしまった。
そして、またもや自分の意思でしているかのようにカナタは札を揚げていた。
思わず自分でも信じられないと声が出てしまったほどだ。

「カナタ様?」

 サーナリアもカナタの行動に疑問を持ち驚きの顔を見せた。
いや、むしろカナタがそこまで女好きだったのかと疑いの目を向けた。
この奴隷オークションは、どう見ても性奴隷オークションだからだ。
そもそもサーナリアの実家が主催しているオークションなのだ。
そこに普通に参加しているサーナリアも年齢の割には清濁併せ呑む器量を持った女性だった。
一瞬驚きを見せたが、カナタに悟られなかった様子を見て、敢えて言葉を飲み込んだ。

「1350、1360、1370」

 カナタがオークションで使える残予算は1370万DGだった。
既にその限界まで落札額は上がっていた。

「1380、1390、1400」

 ついにカナタは借金1900万DGの返済分に手をつけた。
つまり3270万DGが今のリミットだった。
尤も、後半のオークションでエクストラポーションと武器防具が高く売れれば、充分補填出来る額なのだが、オークションのルール上現時点で使える限度額はそれだった。

 この時、5番札のカナタと6番札を掲げた太った貴族然とした人物が落札を競っていた。
中央席5番のカナタ、その左の4番席は主催者のウッドランド子爵、その反対側中央右6番席となれば重要人物であることは間違いない。
6番の貴族は、番号札を上に突き上げるようにして、オークショニアに増加額の引き上げを要求した。

「現在、5番様と6番様の一騎打ちとなっております。
6番様のご要望により、これより50万DG刻みとさせていただきます。
1550、1600、1650……1800」

 あっと言う間に落札額が上がって行った。
この時、カナタが何故か番号札を上に突き上げ増加額の引き上げを要求した。
その目は誰かに操られているかのように虚ろだった。
対してカナタの目の前にいるキツネ獣人の少女の目は赤く光を発していた。
カナタはキツネ獣人の少女に操られていたのだ。

「5番様のご要望により、これより100万DG刻みとさせていただきます。
1900、2000、2100……3000!
おめでとうございます。
3000万DG、本日の最高値で5番様の落札です!」

 ついに6番の御仁が札を降ろした。
カナタも3200万DGが限度額だったのでギリギリの競い合いだった。
だが、カナタは1900万DGの借金返済分を継ぎ込んでしまった。
後半のアイテムオークションで余分に1900万DGを稼げなければ、追加で何かを出品しなければならないだろう。

「え? どうして僕が落札者に?」

 カナタは自分がキツネ獣人の少女を落札したことに驚いていた。
その戸惑う様子を見ながらキツネ獣人の少女はニヤリと笑みを浮かべるのだった。
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