父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
57 / 204
ガチャ屋開業編

057 カナタ、うっかりする

しおりを挟む
お知らせ
 56話でウッドランド子爵の一人称を「俺」と書いていましたが「私」の間違いでした。
 訂正しました。内容的には読み返す必要は全くありません。

―――――――――――――――――――――――――――――――――


「婚約なんて、父様に伺ってみないと判断できません」

 ウッドランド子爵の提案にカナタは大慌てした。
貴族家同士の子息による婚姻は、家と家の縁を結ぶという政治的なことでもあり、カナタの一存では決められない事だったからだ。

「うむ。そこは私からファーランド伯爵に連絡を入れるつもりだ」

「あ、その手があったか……」

 そこでカナタは気付いた。自分が無事な事を手紙で実家に連絡すれば良かったと。
カナタの常識では、連絡手段といえば貴族家が早馬で手紙を送るというものか、冒険者ギルドで依頼して商人や冒険者が手紙を運ぶかぐらいだった。
冒険者ギルドに依頼する場合、確実性という面で不安があった。
都市間の手紙のやり取りは商人か冒険者が運ぶしかなく、元々ついでの仕事であって必ず届く保証がなかった。
一方早馬は貴族家のみの管轄であり、他人は利用することが不可能だった。
つまり、ウッドランド子爵に頼めば、ほぼ確実に実家と連絡が出来たかもしれなかったが、カナタは手紙を送るということすら頭に浮かんでいなかったのだ。
カナタはなんとか家に帰ろうとお金を稼ぐことに必死になり、そのうち家出状態でも良いかと思ってしまっていた。

「カナタさま、わたくしでは嫌なのですか?」

 サーナリアが目をウルウルさせてカナタに懇願する。
その目を見てしまうと、もうカナタは駄目だった。
他人に迷惑をかけられないというカナタのスイッチが入ってしまうのだ。

「わかりました。父様が認める・・・・・・なら、この婚約お受けします」

 こうしてカナタは仮にでも婚約に同意してしまうのだった。
ウッドランド子爵もサーナリアも言質をとったと小さくガッツポーズしていた。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 店に戻った時には夕暮れ時となっていた。
カナタ、ニク、ララが不在の間、ユキノを中心にサキとレナがアイテム販売を手伝ってくれていた。
ヨーコも手伝おうとしたのだが、壊滅的に売り子が向いていないかった。
夕方、依頼から帰って来た冒険者がハズレオーブを持ち込み、そのお金でアイテムを買うという流れが今日は成立していた。
どうやらエクストラポーション奪取のためのクエストの片寄りは、オークション終了と共に正常化したようだ。

「ご主人さま、ハズレオーブの買取が今日は400まで行きました」

 ルルが自分の担当部署が好評だったことを笑顔で報告して来た。
彼女が長文を話すのはかなり珍しく、興奮している様子が伺える。

「アイテムの売り上げも10万DGまで行きましたよ」

 ユキノも嬉しそうに報告した。
アイテムの販売は、買い物後あれこれ屋敷で整理をした後から始めたそうで、販売時間的には短かったものの思った以上に売れたようだ。

「ハイポーションの引き合いがかなりあって、もしかするとここでの販売価格は安すぎるのかもしれません」

 この店では、ハズレオーブ300DGから出るポーションを、1UPでハイポーションにして売っているため、利益率が滅茶苦茶良かった。
だが、安すぎると他店とのバランスであまり良くないかもしれない。
今は冒険者ギルドの買取価格3000DGに少し色をつけて3300DGで売っている。
それでも安すぎたのかもしれない。

「せっかく客がついているのに値上げするのは心苦しいが、他店から恨みを買うのも良くないね。
ユキノ、明日あたりにこっそり他店の売値を見てきてくれないか?
今までの情報が甘かったかもしれない」

 カナタはユキノに【隠密】のスキルがあることを思い出して、ユキノに見てきてもらうことにした。
ハイポーションも時期によって価格が変動しているかもしれない。
特にオークション前後は諸々の事情で怪しく思えた。

「それじゃあ、今日はもう店を閉めようか」

「「「はい」」」

 店を閉め廊下を通って屋敷に入ると、カリナが食事の用意をしてくれていた。
ここも総勢10人と1匹の大所帯だ。
カナタは貴族も奴隷も関係なく全員で食事をするようにしているので、全員が同じテーブルにつく。
1日10万DGの売り上げがあれば、全員が食べていくには充分だろう。
全員で楽しく食事をし、1日の幕が下りる。この繰り返しも悪くないとカナタは思っていた。

 食後の紅茶を飲んでおちつくと徐にカナタが明日の予定を話出した。

「明日からはヨーコ、サキ、レナの3人にグリーンバレーまで往復してもらうつもりだ。
準備は出来てるかな? 向こうでは3日ほど宿泊してハズレオーブを、特にゴレーム系のオーブを手に入れて来て欲しい」

 カナタが3人の遠征の話をすると、サキが恐る恐る手を挙げて質問してきた。

「ご主人さま、そのハズレオーブですが、背嚢リュックでは、3人でも持ち運べる量が限られてしまいます」

「!」

 カナタはうっかり失念していた。
自分には【ロッカー】という便利スキルがあるため、荷物の心配をしなくても良いが、彼女たちにはそんなものは無い。
つまり、物理的に持てる量しか運ぶ事が出来ない。

「大量輸送をするには、馬車や騎獣に獣車を引かせるか、マジックバッグを持たないとなりません」

 マジックバッグは高額すぎて買えるわけもなく、そこそこする獣車を買うお金も今は無かった。
つまり、今現在大量の荷物を運ぶならカナタ自身が行く必要があった。
カナタは自分基準で物事を考えすぎており、他人は自分とは違うということをうっかりしていたのだった。

「そうだね。馬車や獣車を買うにもお金がいるね。
マジックバッグは……ガチャドロップで手に入らないか?」

「転移蛙という魔物のドロップ品にマジックバッグが出ると聞いたことがある」

 レナが調べていたのかマジックバッグの入手情報を披露する。

「その魔物が出る場所は?」

 ヨーコが今にも狩りに行こうと前のめりになる。

「アトラスダンジョン……」

 レナのその一言でヨーコががっくりと項垂れる。
アトラスダンジョンは難関ダンジョンで、ヨーコたち3人では挑戦は無理だったのだ。
アトラスダンジョンで狩りが出来るぐらいの腕があれば、グリーンバレーまで行ってチマチマ稼ぐ必要がないぐらいの大金を稼げる。
本末転倒だった。

「となると馬車か獣車ね。
騎獣シフォンはいるけど、まだ獣車を引かせるのは可愛そうだわ」

 ヨーコはシフォンのことをちらりと見て溜め息をついた。

「わかった。最初の買取は僕とニクで行ってくる。
それを売れば1000万DGぐらい稼ぐことが出来る。
そうすれば馬車ぐらいなら簡単に買えるはずだ」

「え? 私も行くわよ?」

「え?」

「え? だめなの?」

「いいえ……」

 こうして最初のグリーンバレー出張はカナタとニク、そしてヨーコも行くことになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...