父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
63 / 204
ガチャ屋開業編

063 カナタ、ギルドの事情を知る

しおりを挟む
「待たせましたね。
私はこのギルドのギルドマスターをさせてもらっているレスターといいます。
全く最近の若い者は守秘義務も知らないようで困ります。
キャサリンは減給のうえ、男と別れないなら解雇ということになりました。
此度の件、ギルドの長として改めて謝罪いたします」

 応接室に現れたギルドマスターレスターは、いの一番に謝罪と受付嬢の処分をカナタに伝え、頭を下げた。

「ギルドマスターが謝る事な「いいえ!」い……」

「受付嬢による情報漏洩は上司であるギルドマスターの責任です!
事によっては損害賠償を請求出来る案件です!」

 甘いカナタに対し、ヨーコが強行に主張するのも仕方がない。
カナタはこの冒険者ギルドでは、所属冒険者に襲われたり、情報漏洩されて売られそうになったり、良いことが全くなかった。

「いやはや耳が痛い。そのお嬢さんの言う通りなのです。
私が言うのもなんなのですが、ここのギルドは他のギルドと違って程度があまりよろしくない。
私も頑張っているのですが、領主のカラーというものが出てしまうんですよね~」

 ギルドマスターのくせに自らのギルドとその所在地の領主を批判するその様子に、カナタは目を丸くしてしまった。
カナタのレスターに対する第一印象は”変な人”と確定した。

「受付嬢の採用にも縁故が幅を利かすし、街の治安が悪ければ居着く冒険者も犯罪者兼業なんてことになる。
領主があの感じだから、治安も悪い方に行きがちなんのですよね~。
おっと、これはグリューン子爵には内緒で頼みますよ?」

 お茶目に舌を出すレスターだが、30代男性がやってもぜんぜん可愛くなかった。

「はあ」

 カナタも引きつった笑顔で頷くしかない。

「ギルドマスターと領主がそんな仲なら、ここも安全とは言えないのではなくて?」

 その気の抜けたやり取りに、ヨーコは苛立ちを覚えて突っ込みを入れる。
レスターはヨーコの様子に脱線した話を慌てて軌道修正する。

「カナタ少年が死亡したとされている隙が突けなくなったのだから、グリューン子爵の悪だくみも終わりです。
流石にギルドという巨大組織と敵対したり、筆頭宮廷魔導士の魔法証明書に異を唱えることは無理かと」

「でも、ご主人さまが逆恨みで危害を加えられる可能性があるのでは?
子爵や衛兵が動かなくても、いくらでも不良冒険者がいるみたいですし」

 そのヨーコの指摘にレスターはニヤリと笑うと1枚の依頼書をテーブルに乗せた。

「カナタ少年、とくに護衛の彼女ニクの力は、強盗を一瞬で退治したと、ここ界隈の冒険者には有名です。
しかし、わかってない奴が1人いるのですよ」

「グリューン子爵だね」

 カナタが人差し指を立て、的を得たとばかりに答える。
なんと可愛い仕草か。
その可愛さはヨーコがカナタの頭をついついナデナデしてしまったほどだった。

「そう。だから、この依頼で少々グリューン子爵を脅かしてやって欲しいのです」

 ギルドマスターが持って来たその依頼とは……。
グリューン子爵邸の目と鼻の先にある屋敷の解体工事の依頼だった。

「この屋敷は立地が良いのだが、敷地に大岩が鎮座していてね。
さる御方が買い取ったのだが、古い屋敷と共に大岩も始末して更地にして欲しいと頼まれていたのです。
ですが、長く大岩を壊せる者がみつからなくてね。カナタ少年たちなら出来そうかなと」

 その大岩はグリーンバレーが街となる前からそこに鎮座していた。
この依頼は大岩を処理できる者がずっと居なかったために長らく塩漬けになっていたものだった。
レスターは、ニクの光魔法――荷電粒子砲――なら大岩でも壊せると当て込んだのだ。
塩漬け案件の処理とカナタたちの力をグリューン子爵に誇示するという、まさに一石二鳥を狙った策だった。

「つまり大岩を壊せる力をグリューン子爵に見せつければいいんですね?」

 カナタはニクに頼めばそんなことは簡単だと思い、この策に乗り気だった。

「確かに。良い手かも」

 ヨーコも不服はなかった。ニクも小さく頷いている。

「わかりました。この依頼引き受けましょう」

 カナタはヨーコとニクの同意を得ると依頼を引き受けることにした。

「助かります。
あ、それとNオーブの買取依頼ですが、とりあえず上限1000個を目安で依頼を出しておきましたよ。
依頼料の預託金33万DGを払っておいてください」

 逮捕騒ぎで中断していたハズレオーブの買取依頼も手続きが進んでいたらしい。
預託金は、そこから冒険者に依頼料とギルドに手数料が払われるのだそうだ。
上限はとりあえず1セット1000個だが、いつでも追加可能とのこと。
思ったよりギルドは仕事が出来ていた。
案外、このギルドも有能な人は有能なのかもしれなかった。

「わかりました。
街を離れている間も買い取って欲しいので、上限は10セット1万個で330万DG払うことにします。
足りなければその都度追加依頼をするということで」

 カナタは1億DGが解禁になったので、予算は潤沢にあったのだ。
これでグリーンバレーの冒険者ギルドに寄る度にハズレオーブを回収できるようになる。
身の安全さえ保障されるのなら、次はカナタだけで転移して来ても良いかもしれなかった。

「それじゃあ、大岩と屋敷の解体に行こうか」

「さる御方は、子爵より上位の貴族だから、たまたま・・・・岩の破片が飛んでも、グリューン子爵から文句は来ないと思いますよ?」

 レスターがニヤリと笑い、不遜なことを言う。
これは岩の破片を飛ばせというお約束なのだろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...