父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ガチャ屋開業編

072 カナタ、生産する

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 カナタのガチャ屋でいま何が必要かというと、ハズレオーブを運ぶための手段だった。
ハズレオーブを他の街で仕入れ、それを拠点となる街のガチャ屋に持ち込む。
ガチャ屋のある拠点でガチャを引き、1UPの恩恵を受けることで高額のアイテムを手に入れ、それをガチャ屋で売る。
そのサイクルでガチャ屋が成立するのだ。

 そこで問題となるのが、集まってくるハズレオーブ1000個の容積と重さだ。
街と街の間は遠く、数日の旅程が必要になる。
なので、ハズレオーブは旅の日数的にまとめて運ぶ必要があり、それが1000個という目安になっている。
そのハズレオーブ1000個を街と街の間で運ぼうと思ったら、鞄どころか大げさだが荷馬車が必要になるのだ。

 冒険者はパーティーで行動し荷物を分散して持つことで、儲けとなるクエストで手に入れたガチャオーブを街まで運んで来る。
だが、荷物の容量や重さの制限で、クエストの最中になくなく手放すガチャオーブがあるのだという。
荷物の容積と重さは、長期クエストほど冒険者を苦しめることになるからだ。
余談だが、それにより荷物持ちポーターという職業が成立するぐらいなのだ。

 カナタの場合、ハズレオーブを【ロッカー】に仕舞うことで、容積の問題――現在5m×5m×5mが何コマ(魔力量に依存)もある――と重さの問題が無くなり、さらに【転移】で距離の問題と時間の問題もクリアできる。
この【転移】部分だけは他人に委託出来ないが、荷運びという部分はどうにかなるのではないかとカナタは思っていた。
幸い先日、カナタは面白いスキルを手に入れた。それは錬金術と付与魔法と陣魔法だった。


「マジックバッグを作ろうと思う」

 カナタの宣言にヨーコ、キキョウ、サキ、レナが反応する。

「「「「作れるのですか!?」」」」

 カナタの奴隷の中で、マジックバッグのような高価なアイテムに触れる機会があったのは、王族関係者であるこの4人だけだった。
ララ、ルル、カリナ、ユキノはマジックバッグが高いという認識以上にはピンと来ていない。
ちなみにニクは我関せずという態度だ。

「作れるよ。そのために必要な、時空魔法、錬金術、付与魔法、陣魔法のスキルは持ってるからね」

 この世界のスキルは、それを持つことで何が出来るのかが頭に浮かんで来る便利なものだ。
カナタは、これらスキルを取得したことで、マジックバッグを作れると確信したのだ。

「何か手伝うことは……ありませんね……」

 手伝おうと申し出ようとしたカリナが、自らのスキルを鑑みて、自分では役に立たないと思い直して消沈してしまった。
その様子を見たカナタはむしろカリナに手伝ってもらうことにした。

「いや、僕の苦手とする部分もあるからお願いしたいな。
例えば、マジックバッグにするバッグを選ぶとか、手を加えるときの裁縫仕事は僕には無理だからね」

 カナタの要請に、カリナは笑顔で「はい」と答えた。
ちなみに裁縫スキルを持っていない――あると偽装していた――面々は、カリナに良い所を奪われてぐぬぬ状態となっていた。
ヒューマンのメイドに偽装していた、彼女たちのことである。

 こうして開始したマジックバッグ開発計画だが、元となるバッグを買って来たところで、案外簡単に作れてしまった。

「まさか、こんなに簡単にマジックバッグが出来てしまうとは……」

 カナタとカリナがやったのは、まずカナタが付与魔法でバッグに時空魔法を付与した。
無属性の魔宝石に陣魔法で制御術式を書き込んで制御装置を作成、燃料石とともにカリナがバッグに縫い付けたポケットに固定。
それを錬金術でミスリルの制御導線を繋いで一体とすることで完成だった。
その完成品のマジックバッグが目の前に2つあった。
見た目は全く同じものだったが、1つには小さくフェンリネルのマークが刺繍してあった。

「ご主人さま、いったいいくらで出来たの?」

 ヨーコの質問にカナタは思いだすように材料費を語る。

「燃料石(小)が銀貨1枚と大銅貨5枚。これが4個。
無属性の魔宝石(小)が銀貨4枚。
革のバッグが銀貨5枚。
ミスリル少々が銀貨10枚かな」

「つまり、合計銀貨25枚、2万5000DGでマジックバッグが出来たのね?」

「「そんなバカな!」」
 
 ヨーコの計算は合っている。サキとレナが驚いたのはその安さに対してだ。

「マジックバッグといえば、白金貨10枚――1億DG――を出しても欲しいという商人はいくらでもいるぞ」

 サキが言うのはダンジョン産のドロップオーブから出た希少なマジックバッグのことだ。

「いや、それより性能が低いからもっと安く見積もれるはずだよ」

 カナタが作ったマジックバッグは、制限が設けられていた。
その制限とは?

「このマジックバッグは容量を5m×1m×2mにしてある。
僕の【ロッカー】の上限が5m×5m×5mだから、長さだけ残して、他は燃料石の魔力節約で小さくしたんだ。
長さは長い物が入らないと困ると思って最大値にしておいた。
重量軽減は付いているけど、重量ゼロじゃなく軽減なので注意が必要かな。
それと時間停止は付いていない。時間停止は、結構魔力を食うみたいなんだよね。
なので生ものの輸送には使えないし、燃料石ももって1個3か月かな?」

 カナタがフェンリネルの刺繍の無い方のマジックバッグを手に持って説明する。
マジックバッグに制限を設けたのは、1つに燃料石の魔力を節約するためだった。
直ぐに魔力切れを起こして中身を道端に放り出されては困るから、燃料石(小)でも実用的な使用時間になるように抑えたのだ。
これは燃料石を大きくし数を多く使えば、交換までの時間を長くしたり、制限を解除できるのだが、その燃料石の重さには重量軽減や重量ゼロの恩恵が働かないので本末転倒となってしまうのだ。
固定式のマジックボックスなら可能かもしれないが、それを運ぶのは馬車か獣車になるだろう。

「つまり、機能制限付きのマジックバッグということね? 売るの?」とヨーコ。

「そのつもりだ。他との兼ね合いであまり安くするわけにもいかないから、これでも白金貨1枚――1000万DG――を下回る売値にしたい」

 カナタはダンジョン産でも機能の劣るマジックバッグが存在するので、それの値段より安い程度の高値にしないと市場が崩壊しかねないと危惧し、この値段設定にしたのだ。

「しかし、それでも欲しがる商人は多いと思う」

 サキとレナの言う通り、これを製造し販売すれば飛ぶように売れるだろう。
ダンジョン版の最高級マジックバッグは、燃料切れもなく時間停止機能も重量ゼロの機能もあるが、手に入るような値段ではない。
なので、機能制限をして実用的な値段にまで落とせば売れるのは間違いないのだ。
これならそこそこ裕福な商人が少し奮発すれば手に入れることが出来る値段である。
維持費に燃料石の費用がかかるが、交換は3か月に1度に抑えてある。
それも急に魔力切れにならないように正副予備で4個の燃料石を搭載済みだ。
半年交換を忘れても、2個だけ交換すれば継続して機能するようになっている。
カナタの知らないはずの知識が囁き、安心設計にしたのだ。

「それと、このマジックバッグをヨーコたちだけが持っていたら、襲われて奪われる可能性が高くなってしまう。
君たちを危険に晒したくない。
だから、このマジックバッグを売って、誰でも手に入る状態にしたい。
そうすれば、マジックバッグは在り来たりな存在になって危険度も下がるはずだ」

 カナタは、奴隷の彼女たちのことを心配して、このような機能制限付きのマジックバッグにしたのだった。
皆、カナタの思いを噛みしめて、改めて惚れ直すのだった。

「ちなみに、こっちは機能制限解除バージョンね。
容量制限は5m×5m×5mの(現在カナタが製造出来る)最大値。
時間停止機能あり、重量ゼロ、燃料石は空中の魔力から充填するので取り換える必要がない」

 カナタがもう1つのフェンリネルマークがついた方のマジックバッグを持ち出した。
こちらは自重していないカナタの奴隷たち専用のマジックバッグだった。

「ご主人さま、それってダンジョン産の最高級マジックバッグの容量制限ありと同等ということでは?」

「そうなるね。でも、ダミーの制限付きを売れば、知らない人たちは制限付きだと思うから皆は安全だよ?」

 カナタはおかしなところで自重出来ていなかった。
頭を抱える彼女たちだったが、自分たちのために特別に用意してくれたのが嬉しくもあり感激するのだった。

「ちなみに、バッグのデザインは選べるのよね?」

 ララが、良い所に気が付いた。

「それは一定の容量さえあれば問題ありません」

 マジックバッグの製作を手伝ったカリナが答える。
奴隷の皆は、どのようなバッグにしようかと浮かれ出すのだった。

「引っ手繰られないように、肩掛け必須にします!」

 カナタの一言が現実を思い出させた。
この世界はハンドバッグなどを手に持っていたら簡単に引っ手繰られてしまう。
バッグは肩掛け紐を斜めに身体にかけ犯罪に備えるのが常識だった。
だが、そうするとファッション性に難が出来る。乙女心は複雑なのだ。
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