父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

073 カナタ、転移ポイントを知る

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 ガチャ屋本店の移設を決定したカナタだったが、本店の出店場所の決定及び店舗の確保を済ませたわけではなかった。
カナタの移動手段は徒歩あるいは、【転移】魔法による瞬間移動である。
一見行きたい放題と思われる【転移】魔法も、カナタが訪れたことのある場所あるいはカナタの見える場所以外に移動することは出来なかった。
徒歩より速い移動手段として騎獣フェンリネルのシフォンが居るのだが、まだ子供であり乗って移動することは今は不可能だった。

「ウルティア国まで普通に行こうとすれば、一般的な馬車で3か月かかるのか。
乗り継ぎなどの余裕を持てば、4か月かかっても不思議じゃないか……。
自前の獣車か馬車を買うか、【転移】できる地点の距離を伸ばすか、少し考えてから出発しよう」

 まず問題となるのは、獣車や馬車を用意しても、それを【転移】で運べなければ拠点であるグラスヒルの館に戻ることが出来ないということだ。
カナタが転移で館に帰って、ニクだけ残して番をさせるという方法もあるにはあるが、獣車や馬車という価値のあるものの護衛が一見か弱く見える美少女1人だけとなると……。
盗賊ホイホイにしかならないだろう。
ニク1人にして何かトラブルに遇ったら……大変なことになる。相手が!
例え相手が犯罪者だったとしても大惨劇が発生し、面倒なことになるのは明白だろう。

「これは【転移】の限界への挑戦をしてみるかな」

 カナタはグラスヒルの南門を出て人のいない草原まで出向いていた。
一応護衛としてニクが付いて来てくれている。
ここで転移実験をしようというのだ。
今までは扉をイメージしていたために、人ひとり通れるほどの四角い扉が出て来ていた【転移】だが、大きな門をイメージすれば、獣車や馬車が通れるのだろうか?
もし、通れるのなら、カナタのこの【転移】は転移門といったジャンルのものになるのではないだろうか。
カナタは大きな門をイメージして【転移】魔法を使ってみた。

「あ、出来るんだ……」

 カナタは拍子抜けしてしまった。
目の前には大型の獣車でも通過できるような、大きな門が現れていた。
引かれる車の車輪が通れるように、扉にはあった下枠が門には存在しなかった。
イメージの力というのは、ここまで魔法を変化させるのだ。
いや、イメージが魔法の限界を決めてしまっていたのだろう。

「限界を決めていたのは、僕のイメージだったということかな?」

 人数的な制限は魔法レベルに依存し、運べる容積や距離は魔力量に依存する。
それがわかっていても、カナタ自身が人が通る扉としてイメージしていたため、出入口の大きさに制限が出来ていたのだ。

「つまり、これって『魔法執行者が行ったことのある任意の場所に転移することが出来る』の解釈によっては、僕が何か勝手に制限をつけている可能性があるということか?」

 ここで問題となるのは『行ったことのある』というワードだ。
カナタは【転移】を使っているうちに、目で見える先までは【転移】できることを経験により知っていた。
見えている場所は厳密には行っていないので、『行ったことのある』という条件に当てはまらないはずなのだ。
つまりここで、逆に『見えている場所は行ったことのある場所である』との解釈が出来るのだ。
この『見えている』とは『肉眼で見えている』なのか、『魔法的に見えている』なのかで、使い勝手が大きく違って来る。
カナタは【遠見】のスキルを持っている。
この【遠見】で見えている場所は『行ったことのある』に加わるのか否か。
カナタは早速実験する。

「【遠見】! お、丁度良い岩があるな」

 カナタが【遠見】のスキルで見てみると1kmほど先に岩があった。
肉眼ではまったく見えないぐらいの小さめの岩だが、個性的で唯一無二の形をしているので、目標としては優秀な岩だった。

「【転移】」

 さすがに今回は扉を使ったが、目の前には【遠見】で見た岩があった。
『魔法で見える先』への転移に成功した瞬間だった。

「あれ? 魔法で見える先に転移出来るという事は、【MAP】で見える場所は転移出来るとか?」

 まさに発想の転換。カナタはとんでもない使用方法を思いついてしまった。

「【MAP】周辺地図」

 カナタが【MAP】を唱えると、カナタがこれまでに移動した場所及び【魔力探知】をした場所の地図が目の前の空中にAR表示された。

「あ、赤い点!」

 カナタが【ロッカー】に落とされた時に、閉じ込められた時空間から脱出した、あの森の中の場所に赤い点が表示されていた。
と同様にカナタがグリーンバレーに転移する時に使っている道外れにも青い点があった。
赤と青の違いはわからないが、どうやら時空間からの出口となった場所に点があるようだ。
【MAP】をスクロールさせると、グラスヒルの北門外の道外れにも青い点がある。
そして、今カナタが転移実験をした南門外の草原にも青い点があった。
これこそ、カナタが転移で使った転移起点ポイントだった。
最初の転移は場所のイメージだったかもしれないが、一度転移すると転移起点として登録され、再利用時に魔力が節約されていたのだ。

 そして赤い点とは、誰かカナタ以外の人が転移起点として設置したものだった。
カナタは偶然それを見つけることで、時空間の檻から脱出できたのだ。
つまり、あの赤い点は誰かが利用した転移の跡地だったということだった。
通常、他人の転移起点を使用することは不可能なのだが、あの場所で行われたのは魔術儀式によって強制的に時空間に傷を付けるという荒っぽい転移だったため空間に傷が残り、カナタにも利用することが出来たということだ。

「もしかして【魔力探知】で調べれば……あった!」

 カナタが魔力を南方に流してみると、別の土地にある赤い点を見つけることが出来た。

「【転移】」

 そこへ繋げるイメージで【転移】を使うと、扉の先はカナタの見たことも無い場所だった。
一度扉から出て彼の地を踏み【魔力探知】を行い戻ってくると、周辺地図のグラスヒル南部の離れた先に丸く踏破済み地点が現れた。
どうやらウッドランド領の領都を越えた隣の領地――だいたい馬車で10日ぐらいの距離――まで転移出来てしまったようだ。
これは正に僥倖だった。
この赤い点を探して【転移】をし続ければ、ウルティア国まで転移だけで辿り着けるかもしれないのだ。

「赤い転移起点ポイントか。これを利用しない手はないな」

 カナタはこの時、誰がこの赤い点を使ったのかということを全く意識していなかった。
それが犯罪組織なら、転移した先が犯罪組織の拠点である可能性もあるのだ。
誰が何の目的に転移したのか? それはまたのお話で。

 カナタの出発まではまだ時間的余裕があった。
その間、残される者のための準備もカナタはしなければならなかった。
今のところ魔力量に依存する【転移】の距離に限界は訪れていなかったため、カナタはこのグラスヒルの拠点に毎晩出来るだけ帰る予定だった。
それにより彼女たちをサポート出来る部分はするつもりだったし、任せられるものは任せられるように魔導具も用意した。
ハズレオーブの引き取りも【転移】で対応できるし、ダンジョンアタックもマジックバッグがあれば戦闘チームの3人だけで可能だ。
つまり、カナタが行わなければならないのは、カナタが転移出来る地点をウルティア国へと近付けることだった。
夜になったらそのままグラスヒルの屋敷まで【転移】で戻り、朝にまた転移起点まで【転移】して転移出来る地を先に伸ばしていく。

 ガチャ屋は当面営業することになった。
ウルティア国にお店を構えるまでは、ここでの稼ぎもバカにならないのだ。
ハズレオーブの購入資金がペイ出来て、奴隷の皆が余裕のある生活をおくれる。
それぐらいの収入が稼げれば問題なかった。
時間を設けてカナタがガチャオーブを開け、種類毎にインゴットをマジックバッグに入れ、それを冒険者ギルドに持ち込んで売る。
マジックバッグによって、女性の手でも金属のインゴットを運べる。
この売り上げはかなり期待が出来る。
その他雑魚モンスターのHNオーブから出るアイテムの販売もする。
冒険者がハズレオーブを売ったお金を排出させるのもガチャ屋の仕事なのだ。
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