父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

076 サキ、無双する

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 カナタは、ニク、サキ、ルルの3人を伴って、ウルティア国遠征の旅に出た。
まず、南門を出た先の人目に付かない草原まで移動した。
今回はオレンジタウン近くに進出した時の赤い起点は使わない。
その時に【魔力探知】で調べた半径300mの円の外周、その中でも安全と思われる場所に向けてカナタは【転移】を使った。
自分が魔法的に目にした先には転移できる、その決まり事を利用して転移したのだ。

 カナタの【転移】は、目の前に出現した扉を開くと、その先に転移先の風景が見えるという、どこでもド……違った……転移門的な魔法だった。
これにより、再度転移先の安全を確保してから転移するようにカナタはしていた。
この安全には、目撃者がいないということも含まれている。
カナタは扉を開けると転移先の周囲を見廻す。

「よし、大丈夫みたいだ。3人とも行くよ」

 カナタ含めて4人が扉を潜ったところで扉は姿を消した。
ちなみに、ニクは必ず2番目に潜るように命じてある。
理由は、ニクだけ物扱いになってしまうので、カナタ含めて3人目が転移すると扉が消えてしまうからだ。
【転移】は魔法を行使した本人に加えてレベルの数値人数分だけ同行者を連れていける。
今【転移】はレベル2のため、同行者は2人ということになる。
ニクは同行者ではなく、3人の荷物という扱いになるのだ。
つまり、ニクが扉を潜るためには最後の人より前に潜る必要がある。
荷物を最後にしてしまうと、その前に扉は消えて転移元に置いて行ってしまうことになるのだ。

「ここから南南西の方向にオレンジタウンがあるはず。
そうだな。歩いて3時間ぐらいだろうか?
ああ、獣車が欲しいな」

 今後は獣車を買って足にしたいとカナタは思っていた。
グラスヒルで買おうとしたのだが、あそこは物流の拠点にもなっているので在庫がなく、予約待ちで手に入らなかったのだ。
では一般の人はどうするのかというと、駅馬車があるので、旅にはそれを利用しているらしい。
だが、駅馬車を使ったら旅は4か月コースになる。
それを打開するために【転移】を使っているのに、それでは本末転倒となってしまうのだ。

「オレンジ領の隣のカンザス領では牧畜が盛んらしく、馬や騎獣が手に入りやすいそうだ。
そこでなら獣車を購入できると思う」

 カナタの狙いはオレンジ領の隣のカンザス領だった。
そこから出荷された馬や騎獣がグラスヒルに運ばれて売られているのだから、そこまで行けば買えるということだ。
とにかく、この世界は移動にコストや時間がかかる。
それは物を運ぶべき馬車や獣車にもいえるのだった。

「ご主人さま、そんなことより、早くオレンジタウンに行きましょう!」

 サキの目的はわかっている。
どうせ早く街に着いてスイーツが食べたいだけだろう。


 カナタたちは1時間ほど歩いて、漸く主街道に出ることができた。
ここを南に辿っていけばオレンジ領の領都であるオレンジタウンに到着するはずだ。
カナタ一行は暫く街道を進む。

「マスター……」

「わかってる」

 ニクが伝えようとしたが、カナタの【魔力探知】にも反応が出ていた。
わざわざ街道の左右に分かれて隠れる必要のある連中には、思い当たるふしが在り過ぎる。

「サキ、たぶん盗賊だ。ルルを守って……」

 カナタが言う前にサキが走っていた。
サキは剣鬼のJOBに【剣術免許皆伝】のスキルを持っている。
以前見せられていたステータスは偽装であり、こっちが本当のステータスだった。
気付かれたと理解した盗賊が藪の中から飛び出してサキの前に立ちふさがる。

「嬢ちゃん1人でどうするつもりだ?」

「俺たちが良いことをしてやんよ。げひゃひゃひゃ」

「おい坊主、女と金を置いていきな」

「命だけは助けてやんよ」

「そう言っといて、奴隷商に売り払うくせして。げひゃげひゃ」

 盗賊たちはカナタが主人だと見抜き、カナタに要求を突き付けた。
総勢16人の盗賊に街道の前後を塞がれていてカナタたちは身動きがとれなかった。

「マスター、盗賊と確認。殲滅しますか?」

「いや、制圧はサキに任せて、ニクは援護だ。
サキが危なくなったら助けてやってくれ」

 カナタはニクの過剰戦闘を止め、手加減の出来るサキに任せることにした。
いくら盗賊でもポンポン殺してしまうのは気が引けたのだ。

「ルルは僕の側を離れないでね」

 戦闘力のないルルはカナタが守る。

 盗賊たちに囲まれたサキは刀のような片刃の剣を使っていた。
その剣が腰の鞘から抜かれると盗賊たちの首が飛んだ。

「え?」

 カナタは目を疑った。
たしか、サキは手加減が出来るからとの売り込みでこの旅に参加したはずだ。
それなのに、サキはニクよりも手加減が出来ていない。
一振一殺。
サキが剣を一振りすると盗賊が一人死んでいった。

「ちょっとサキ、手加減、手加減!」

 カナタの声にハッとした表情をするサキだったが、正面側の盗賊は全員もう死んだ後だった。
その姿を目撃した後ろを塞いでいた盗賊は一目散に逃げ出した。

「はぁ。ニク、武器使用制限解除。敵を無力化。手加減だぞ? 手加減!」

「了解しました。マスター」

 ニクの右腕が光ると2秒後に光の束が空中を舞った。

「敵勢力の無力化を確認。戦闘を終了します」

 ニクの荷電粒子砲は、盗賊たちの片足を綺麗に吹き飛ばしていた。
たしかにこれで戦うことも逃げることも出来なくなった。

「どうしよう。ここから全員街まで連れて行くなんて無理だぞ」

 片足が無かったら歩かせて連れて行くことが出来ないとカナタは頭を抱えた。
しかし、ニクが足を狙わなければ、片腕を飛ばしても逃げられていただろう。

「すみません。ご主人さま……」

 前面の盗賊を殲滅したサキが戻って来た。
自分で手加減が出来ると言っていたのに、一切の手加減をしなかったことを反省しているようだ。

「サキ、どうして、手加減を忘れたの?」

 カナタは叱るつもりではなく、理由が知りたいと思って訊ねた。

「だって、ここで長く足止めされたら、スイーツ店が閉まってしまいます!」

 サキはスイーツに目が無かった。
この旅に同行したかったのも、オレンジタウンがスイーツの街で有名だったからだ。
それにスイーツ店はまだ閉まるような時間ではない。
いったい何軒梯子するつもりだったのだろうか。
スイーツのせいで死んだ盗賊は運が悪かったと諦めてもらうしかない。
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