父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

075 キキョウ、ソフトに迫る

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 翌日。目覚めるとカナタは拘束されていた。
目が覚めたその瞬間から身動きがとれなくなっていたのだ。
目の前にあるのは肌色の山と谷。

「おはよう、ご主人さま。お目覚めになられたのですね?」

 後頭部に圧がかかりカナタの顔は一瞬だけ肌色の谷に埋まる。
目の前の肌色はキキョウの胸元、そして拘束具は彼女の腕と脚だった。
カナタが目を上げると、薄布一枚でベッドに同衾していたキキョウと目が合った。
カナタは11歳、性的な欲求はまだなかったが、性的な羞恥心は持ち合わせていた。
慌てて起き上がろうとするカナタだが、キキョウの腕と脚にがっちりホールドされていて身動きがとれない。
カナタが縋るような目で訴えると、キキョウは拘束具を緩め、カナタは身動きが取れるようになった。
起き上がったカナタは、キキョウの頭に昨日ガチャから出たエメラルドのティアラが乗っていることに気付いた。
キキョウとティアラの組み合わせは、彼女が元第一王女なだけあり、その姿はあまりにも似合い過ぎていた。
キキョウがベッドから身体を起こし、これ見よがしにティアラの乗った頭を主張して来る。
カナタは、はぁ~とため息をつくと、この一言を言うしかなかった。

「わかった。皆が納得しているなら、ティアラはキキョウにあげる」

「やった~♡」

 このティアラ、白金貨12枚――1億2千万DG――の価値があるのはカナタには伝えない方が良いかもしれない。
ちなみに他のアクセサリーの価値も白金貨――1千万DG――数枚だ。
カナタの中ではRアイテムは金貨1~10枚程度、SRアイテムで金貨10枚~100枚程度の感覚だった。
エメラルドのアクセサリーは、そのカナタの常識的感覚とは軽く1桁違う高額アイテムだったのだ。
これでカナタの奴隷は全員が自分を買い戻せるだけの私有財産を手に入れた。
だが、自分を買戻しカナタの側を離れようと思う者は誰もいなかった。

 やっと周囲を見る余裕の出来たカナタは、ダブルキングサイズのベッドに女性たちが寝ていることにも気付く。
いつもは自室へと戻るので、よほどエメラルドをもらったことが嬉しかったのだろう。
カナタは女性たちが同衾していることを気にもせずにベッドから起きあがった。
ここらへんまだ子供で、お姉さんと添い寝した程度の感覚だった。

 ベッドの脇には護衛としてニクが椅子に座っている。
彼女は一晩中、いや24時間1日中カナタの護衛をしている。
忘れがちだが、彼女はカナタに使役されている肉ゴーレムであり、人形つまり物なのだ。
たまに見せる感情豊かな表情もプログラミングの結果なのかもしれない。
しかし、カナタには遺跡のパーツを取り付けた後の最近のニクの表情は本物に見えるのだ。
そんなニクなのだが、いつも眠ることがない。
肉体を維持するために飲み食いはする。
ニクにも眠って欲しいところなのだが、眠りとは脳の休息であり、愛砢人形ラブラドールシステムは眠りを必要としないらしい。
カナタは、毎朝この眠らないニクを目にして、ニクが人間ではないということを再認識させられるのだ。

「おはよう、ニク」

「おはようございます、マスター」

 いつも通りの挨拶をニクと交わし、寝ている女性たちを起こさないようにと避けながらベッドから降りる。
カナタは全員と思っていたが、カリナは朝食の支度で既に起きている。
カナタは夜着から着替えリビングに向かう。



 女性たちもポツポツと起き始め、ダイニングに全員が揃ったところで朝食開始。
サラダに白パン、オークのロース肉のソテーに野菜スープの朝食を全員でいただく。
シフォンにも温野菜と塩胡椒なしのロース肉をあげている。
わいわいと賑やかな朝食の後は紅茶で寛ぐ。

「ご主人さまの今日の予定は、ニクと私と一緒に街の探索と、転移起点の更新になります。
商業ギルドで購入しました地図によりますと、ご主人さまの行きついた先の街はオレンジ男爵領オレンジタウンとのこと。
季節のフルーツとスイーツで有名な街になります」

 秘書役のララがカナタの予定を口にするやいなや、女性たちの眼の色が変わった。
いつのまにか自分もメンバーに入れているララは知らんぷりをしている。

「街の探索には私も同行しよう。
初めての街となるとご主人さまを知らない輩が絡んで来る可能性が高い。
対人戦なら、ニク殿より私が適任だろう」

 いつもは同行を希望しないサキが真っ先に同行を口にする。
どうせスイーツに目が眩んだだけなのだろうが、その積極性はカナタの好むところだった。

「それじゃあサキも一緒ということで大丈夫かな?」

 カナタがサキの同行をあっさり認めてしまったため、レナとユキノの護衛組は自分も行きたいというセリフを飲み込むしかなかった。
カナタの大事なお店を守るのも重要な任務に代わりないのだ。
自分も行くと言ってこれ以上お店から護衛を減らすわけにはいかなかった。
瞬発力のあるサキの勝利だった。

 だが、転移枠はあと1人分ある。はずだった。
ララがちゃっかりと確保していなければのことだが……。

「では、お店組で残るのは、ヨーコ、ルル、レナ、ユキノ、カリナ、キキョウで良いですね?」

 いつのまにかララが残り枠1つは自分だということにしていたのだ。
カリナとキキョウは屋敷組なので残って当然だと思っていたが、ヨーコとルルは黙っていなかった。

「いやいや、グリーンバレーに同行したのも私なんだから、当然私でしょ?」とヨーコ。

「私も行きたい……」

 ここで、カナタに意見されると終わると察したララは、即座に反論する。

「ヨーコはグリーンバレーに同行したからこそ、今度はお留守番でしょ?
ルルはハズレオーブ購入の責任者なんだからお店で頑張って!
となると交渉担当の私が行くしかないでしょう?」

 あまりに正論。これで同行はララに決定かと思われたとき、いつもは大人しいルルが珍しく口を開いた。

「ハズレオーブ購入はギルドに依頼した。
だからオレンジタウンにはルルが行く」

 カナタの方針でハズレオーブの購入は冒険者ギルドに委託することになっていた。
そのことをすっかり忘れていたララは、ルルに隙を見せることになった。

「でも、ルル目当てで冒険者が売りに来るかもしれないでしょ?
ルルが残るべきじゃないかな?」

「冒険者の目当てはカリナさん。エロい目でいつも見てる」

「ブフッ!」

 ルルの発言にカナタが紅茶を吹く。
カリナをエロコーナー担当にしてしまったのはカナタだった。
それでカリナに冒険者の目が集中してしまっている?
ちょっと責任を感じてしまうカナタだった。

「そこらへんにしよう。
確かに、僕の方針がルルの仕事を奪ってしまったかもしれないね。
今回はルルに同行してもらおう。
ララ、君にはお店の総監督という仕事がある。
今回は折れてくれ」

「しかたありません」

 ララが折れ、今回の同行者はサキとルルという珍しい組み合わせになった。

「あれ? 枠いっぱいまで同行させるなんて話にいつなった?」

 そもそも転移の距離を延ばすためには少数で行動した方が魔力の残量的に有利なはずだった。
しかし、カナタの魔力量は異常な数値なため、あまり気にする必要が無かった。
カナタもそんな感じだったので、2人の同行をすんなり認めたのだった。
これがハズレオーブの回収日に重なっていたなら、そちらのチームに護衛が必要なので、サキの同行は認めていないところだった。

「それじゃあ、僕とニク、サキ、ルルで行って来る」

「「「「いってらっしゃいませ」」」」

「わん!」

 いつのまにか員数外にされていたシフォンの主張は誰も聞いてくれなかった。
それを察したキキョウがシフォンをモフモフして慰めるのだった。
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