父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

083 カナタ、荷を受け取る

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「いや、それでは商売の信義に反するな……。
よし、ザイードの冷蔵の魔導具は最初の申し出通り買わせてもらおう。
その上で新型を売ってもらおうではないか」

 さすがに自分に都合良く言い過ぎたと思ったのか、オレンジ男爵はもはやゴミとなった冷蔵の魔導具の購入も打診してきた。
買おうとしたものがゴミだと知ったからといって、掌を返して新型だけが欲しいというのでは、カナタの心象を悪くするのではないかと危惧したせいだった。
カナタにそんな気持ちが無かったとしても、オレンジ男爵は貴族としての矜持でそんな都合の良い態度をとるわけにはいかなかった。
オレンジ男爵はこの世界の貴族にしては誠実な人だった。

「ザイードの荷をまだ見ていないので、なんとも言えませんが、僕の作った冷蔵の魔道具――冷蔵庫ならば取引に応じます」

「よろしく頼む」

 詳細は商業ギルドからザイードの荷を受け取った後ということになった。
カナタたちは、もう昼すぎだったため引き渡し準備が終わっているだろうと期待して、商業ギルドへと荷を受け取りに向かうのだった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「災難でしたね」

 商業ギルドに行くと魔法契約に携わった職員が苦笑いで労いの言葉をかけてきた。
まさかあんなことになるとは、この職員も思っていなかったのだろう。

「魔法契約が破られたことは、こちらに保管されていた魔法書類によっても確認されました。
ザイードもまさか襲撃が表沙汰になるとは思っていなかったようで、奴の泊まっていた宿屋に馬車と荷はそのまま残っていました。
荷は魔法契約違反により結界魔法が発動し差し押さえられていましたので、ギルドで回収いたしました」

 魔法契約の書類は3通作られ、当事者ごとに1通、そして商業ギルドが1通を保管する。
そして、魔法契約が破られる事態となったときには、その書類が発光し違反があったと知らせることになる。
違反があると商業ギルドは契約に則って当事者に対して差し押さえを実行することがあった。

「このまま全てをカナタ様に引き渡すことも出来ますし、商業ギルドが処分して換金することも出来ます」

「それでは、冷蔵の魔導具とガチャオーブだけ引き取って、他は処分してください」

 商人が荷を運ぶときに、中身の知れている確定オーブの場合、オーブの状態で運んだ方が荷の重さや容積の点で都合が良かった。
なので、商人の荷の大半はオーブの状態で運ばれていた。
カナタの場合は、携帯ガチャ機による1UPの恩恵があるので、お金よりオーブの状態で手に入れた方がよかったのだ。

「馬車も処分でよろしいですか?」

 うっかりしていたが、馬車もザイードの元財産であり、各々3割で買い戻すはずだった。
そのお金の支払いも反故にされていたので、この2台の馬車と4頭の馬もカナタの所有物だった。
カナタはこの馬車に使い道があるかと思案した。
そして冒険者チームならば使い道があるだろうと判断した。

「馬2頭と馬車1台は引き取ります。もう1台と馬2頭は売却で」

「了解しました」

 代金は纏めてギルドカードにチャージされることになった。
そして、カナタはガチャオーブと冷蔵の魔導具、馬車1台を手に入れたのだった。


 カナタたちは宿屋まで帰って来ていた。
馬車1台と馬2頭は、厩舎の前でこっそりグラスヒルの屋敷に【転移】で運んでおいた。
この時、屋敷前から通りまで馬車を通す道がないことに気付いたが、どうせ使うときはカナタの【転移】で移動させることになるので、そのまま気にしないことにした。

 ガチャオーブは【ロッカー】に仕舞った。
するとオレンジ男爵から依頼のあった冷蔵の魔導具だけが手元に残った。
もはやゴミとなったザイードの持ち込んだ冷蔵の魔導具だが、それはカナタの実家にあったものとほぼ同型だった。
カナタが冷蔵の魔導具を知っていたのも、実家で実物を見た知識によるものだったのだが、その性能はかなり低いという印象だった。
ザイードの荷にあった冷蔵の魔導具も、実用に耐えなくはないが価格としてどうなのかという代物だった。

「さすがにこれを売りつけるのは気が引けるな」

 カナタもこの魔導具で大金を手に入れようとはとてもではないが思えなかった。
カナタは思案すると一つの解決策に辿り着いた。

「そうか、この魔導具が高額な理由は魔宝石を使用しているからだ。
この魔宝石の性能を存分に発揮した冷蔵の魔導具にしてあげれば、何の問題もない」

 カナタは、この冷蔵の魔導具に新型同様の改良を加えることにしたのだ。

「魔宝石の制御能力と燃料石の魔力量ならば、筐体を拡大出来るな。
筐体も断熱材入りにすれば大型冷蔵庫が出来るはず」

 思い立ったら、我慢できないのがカナタだった。
とりあえず冷蔵の魔導具を分解して魔宝石と燃料石を取り出す。
それ以外は残念ながら、ただの木製収納箪笥にしかならないので【ロッカー】に放り込む。
【陣魔法】のスキルで魔宝石の魔法陣を高効率なものに書き換え、筐体内部に区画を設けて補助的な魔法陣を描き、個別に温度設定が出来るようにした。
次に筐体は6ドアの業務用冷蔵庫(知らないはずの知識による)とした。
これは試作冷蔵庫と同じステンレス鋼の板で断熱材を挟んだもので作った。
6つの区画ごとに開けられるように棚とドアを作り、観音開きで左開き3ドアと右開き3ドア、全部で6ドアになるようにした。
この区画ごとに温度設定を変えられるので、区画ごとに任意で冷凍庫にも出来るようにした。
ドアと筐体の隙間を無くすためのパッキングも魔物素材で再現出来ているので安心だ。
正面右中央段のドアを開き、内側に魔宝石と燃料石を設置し、各区画の魔法陣にミスリルで配線を繋げて完成だ。

「よし、これなら新型と費用対効果が同じになる」

 カナタはまたとんでもないものを作ってしまった。
この業務用冷蔵庫と小型冷蔵庫によって、オレンジタウンのスイーツは更に発展することになる。
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