父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

文字の大きさ
107 / 204
南部辺境遠征編

107 カナタ、悩む

しおりを挟む
 その日はそのまま休息日となり、夜には冒険者や兵に酒と豪華な食事が振舞われた。
武功賞をもらったカナタとディーンのパーティーと副ギルド長、辺境伯軍の幹部は、城塞内の大広間でガーディアの街の有力者と共に祝勝パーティーを行っていた。
そこでもカナタは、ライジン辺境伯の隣に座らされていた。
街の有力者も、その様子にカナタが重要人物であると認識していた。
どこからか辺境伯の隠し子という噂も広まっていた。

「カナタ、褒賞は何が良い?
従者の手柄は主人の手柄も同然だ。
第一、第二、第三武功賞の褒章はお前が決めて構わないぞ」

 辺境伯が無茶を行って来た。
それは褒賞を受けるべきニクとサキが構わないと言うところでしょとカナタは思ったのだが、ニクもサキも頷いていたので、カナタは溜め息と共にそれを受け入れることにした。
辺境伯はそんなカナタの様子にはお構いなしに話を続ける。

「魔物素材なら、欲しいものを優遇出来るぞ。
ドラゴン素材なんてどうだ?
鱗、牙、爪なんて高級武器防具が作れるぞ。
そうだ、武器防具そのものが出るかもしれない。あれはいいぞ」

 ドラゴンはニクが狩ったのだが、こういった集団討伐任務では、全てのドロップ品はDGもガチャオーブも混成軍を組織した貴族が一旦預かることになっていた。
誰がどの魔物を狩ったのか、どのガチャオーブが出たのかなど、この集団戦の中では判断がつかないことの方が多かった。
例えばAさんがほとんど瀕死まで持って行った魔物を、Bさんが横から止めを刺してしまったといった場合、ギルドカードの記録的にはBさんが討伐者となってしまう。
これをわざとやっていたならば、Bさんは冒険者の仁義に反したと叩かれることになる。
だが魔物の氾濫といった集団戦の中では、意図せずにそのような状況が発生してしまうことがあり、それは仕方のないことだった。
そのため混成軍を組織した貴族は、一定の金額を予め支払う約束で冒険者を雇い、後に討伐数やその魔物のランクにより褒賞として金一封を出すというのが定番だった。

 そのお金は魔物の氾濫を抑えるため国から交付される特別功労金と魔物がドロップしたDG、魔物素材の販売益から充当される。
それらを高く買ってもらうために、この街の有力者である商人や、他の領地から来ている貴族が戦勝パーティーに呼ばれているのだ。
彼らはガチャオーブの中身を予想し、ある意味自分の目を信じて博打を打つ。
魔物によっては、同じ赤色HNのアイテムオーブだとしても、ハズレから当たりまで違うものが出る可能性があるのだ。
例えば魔物の中で肉が出やすいと言われるオークが居る。
だがその肉は部位によって金額が大きく違う。
さらに稀にだがオークが装備していたあまり高価ではない武具が出てしまうこともある。
ある程度レアリティが高くなると、あの秘薬の素材として有名なオークの睾丸なども出るが、それはガチャオーブのレアリティ色で推測がつく。

 辺境伯はカナタにガチャオーブを開けた後のドラゴンの素材を要求することが出来るぞと言っているのだ。
まあ、ドラゴンはニクが倒したので、もらえて当たり前だったのだが……。
ドラゴンは20個ものSRオーブをドロップしていた。
それを開いて素材が確定した後、どれか選んで持って行けという話だった。

「金でもいいんだが、これだけ大量のガチャオーブがドロップしていると、値崩れがな……」

 今回の魔物氾濫は、魔物の数が異常だった。
その分、ドロップしたガチャオーブも多かったので、買い叩かれることになりそうだったのだ。
なので辺境伯は、素材のままで手に入れた方が良いと言いたいのだ。

「それならガチャオーブのままの方が良いです」

 カナタには携帯ガチャ機があった。
この携帯ガチャ機にガチャオーブを再装填すると1UPの恩恵があるのだ。
つまり、SRの上、URが確実となる。

「あっ!」

 とここでカナタは気付いた。
今回回収された全てのガチャオーブを携帯ガチャ機に通したら、とんでもない儲けになると。
万の単位の魔物がドロップしたガチャオーブが全て1UPする。
さらに連ガチャによる上位レア確率UPの恩恵が乗れば……。
10連で1つ、100連で2つ、1000連で3つ、10000連で4つ上のレアリティを狙える可能性が高まる。
4つ上とはつまり、Nオーブが1UP恩恵後HNオーブになり、そこから→SR→UR→LR→GRとGRの出現確率UPが発生する。
ドラゴンのドロップしたガチャオーブはSRだ。
その数20なので10連ガチャが2回となる。
つまりここでも2つ上のLRが高確率で狙える。
こんなチャンスは今後無いかもしれなかった。

 しかし、それをするには自分のGRスキルである携帯ガチャ機の存在を、最低でも辺境伯本人には知らせる必要があった。
ライジン辺境伯が父アラタの盟友だとしても、そこまで気を許して良いものなのか?

「(ここは父様に連絡するべきだろうか?)」

 カナタは悩むのだった。

「おいおい、そんなに悩むな。
他にも領地なんかはどうだ? ここらへんの土地を割譲して、おまえに爵位をやってもいいぞ?」

 辺境伯には王より授けられた爵位の任命権があった。
子爵が3つ、男爵が7つ、騎士爵なら制限なしで与える権限を持っていた。
現在、子爵を2人と男爵を5人任命しているので、子爵か男爵位をカナタに与えることが可能だった。
辺境伯としては、その方がお金がかからずに有難かった。
辺境なので土地はいくらでもあるし、爵位も枠内なので懐は痛まなかった。

「そうだ、お前の従者も騎士爵位を与えてやろう。
うん、それがいい。
それ以外でドラゴンのオーブを渡しても良いんだからな」

 ライジン辺境伯はさりげなくカナタを取り込もうとしていた。
そこには全く悪気がなかったのが救いなのだが……。

「一度、父様と相談させてください。
出来れば魔法便を使わせて欲しいです」

 既にカナタの判断能力を超える事態となっていた。

「(そうだ。ララやヨーコたちにも相談しないと……)」

 カナタは目立つどころではない事態に混乱するだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...