父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

130 カナタ、人に任せるを知る

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 鉱山ダンジョンから帰って来た一行は、とりあえずグラスヒルの屋敷まで戻って来た。

「ありがとう。これで暫くは魔宝石に不自由しないよ。
ヨーコパーティーには今後も採掘を頼むよ」

 カナタは魔宝石入手の目途がついて安堵していた。
しかし、事はそう簡単にはいかなかった。

「暫くは、ヨーコと、サキ、レナ、エルナ、ローレライでグリーンバレーの鉱山ダンジョンの採掘担当ということで構わないわ。
だけど、おいおい私とサキ、レナの3人は抜けて、他のメンバーに代わってもらうわよ?」

「ええっ!」

 ヨーコが言うには、ヨーコ、サキ、レナの高レベル組は、他のメンバーが安定して採掘出来るようになったら抜けるということらしい。
カナタの計画ではニルムレッドとミーリカの2人はグラスヒルの屋敷に常駐してもらって、お店の護衛任務と入れ替えで採掘にも行ってもらうつもりだった。
ヨーコは自分たちに代えてその4人に近い将来には鉱山ダンジョンの採掘担当になってもらいたいと言うわけだ。

「いや、ヨーコにしか【鑑定】を渡してないでしょ?
【鑑定】が無いと採掘は大変だよ?」

 鉱山ダンジョンで楽に採掘が出来ていたのは、【鑑定】により鉱物の埋まっている場所を特定出来ていたからだった。
【鑑定】はRスキルであり、カナタはガチャで手に入れるためにスキル限定1000連ガチャを引いている。
新たな人材に渡すためには再度1000連ガチャが必要になってしまうだろう。
そう思っていたのはカナタだけだった。

「それはHNスキルの【地中探査】でも代用可能よ。
スキル限定1000連ガチャで出ていない?」

 【地中探査】は用途が限られるスキルのため、【鑑定】のように万能ではなかった。
そのためあまり注目されるスキルではないのだが、こと鉱石掘りに関しては有能なスキルだった。

「ああ、あるね……。
スキルオーブにしておくよ」

 【鑑定】問題はあっさりクリアされた。
そもそもあれだけ必死になって【鑑定】を手に入れなくても良かったということだった。
カナタの無知思い込みが招いた失敗だった。

 ヨーコがパーティ―に残るなら、サキかレナのどちらかを護衛につけなければならなかった。
パーティ―バランス的に理想なのは前衛のサキということになるが、サキはカナタと魔物の氾濫の討伐に行ったおかげで騎士爵位も叙爵している。
さすがに採掘に行かせるのは勿体ないとヨーコでなくとも思うだろう。
パワーレベリングの間なら良いが専従させるのは違うということだった。
いや、そのヨーコ自身が亡国の姫君なので、採掘担当を姫にやらせようと思うカナタの感覚の方がおかしかった。

「ならば、リーダーになれる人材を雇うか、誰かをリーダーとして育成するべきでしょうね。
その人物に【地中探査】を渡せば良いのよ」

 そのリーダーとして当て込んでいたのが傭兵のリュゼットだったのだが、傭兵の矜持が採掘や店の護衛仕事を許さなかった。

「リーダーはエルナで行けると思うけど、4人だけじゃ採掘メンバーと店の護衛が足りなくなるという事だよね?」

 当初の予定ではパワーレベリングの後、6人の戦闘職があらゆる任務に就くはずだった。
その中の2人が立場上カナタの従者にしかなれず、更にヨーコたちが採掘担当から抜けるとなると、今後のことを考えれば人員が不足することが明白だった。

「そこはこっちで雇っておくから、カナタは工房のことと領地のことだけを考えていて」

 そうなのだ。カナタは南部辺境伯領から領地を割譲されることになっていた。
近いうちに褒賞としてハズレオーブ5万とともに領地が引き渡されることになっていたのだ。
カナタはその準備もしなければならなかった。
となると領地運営にも人材が必要となってくる。
ヨーコはそこで中心となるメンバーこそ自分たちだと思っているのだ。

 ちなみにヨーコの身分は現在奴隷だが、主人の委任状があれば代理として奴隷を購入できた。
隷属魔法は便利なもので、ヨーコの主人に隷属させるという契約が可能だった。
なのでヨーコが雇う奴隷は奴隷ヨーコの奴隷ではなく、きちんとカナタの奴隷となる。

 そして騎士爵となったサキは、その時点で奴隷ではなくなり、カナタに隷属魔法で縛られている騎士というややこしい身分となっている。
ライジン辺境伯により任命された騎士爵位だが、その枠は王国より任命権を渡されたもので、身分的には王国に属する騎士となりきちんと給料が出る。
隷属魔法は、カナタの臣下であるという臣従契約と言い換えても良かった。
これによりサキは他の貴族からの勧誘を拒否しやすく、王国の労役義務を免除されることになる。

 そんな立場が可能ならば、グラスヒルの屋敷にいるメンバーは奴隷から開放して、この臣従契約に切り替えても良いとカナタは思っていた。
つまり借金を抱えている臣下という扱いにするのだ。
それでも人員が不足する未来がカナタは容易に推測できた。

「ああ、つまり領地を運営する人員も雇わないとってことだよね」

 カナタの周囲は慢性の人材不足だった。
しかも信用できると確信するまでは奴隷として縛らねばならないような秘密が多い。 
雇うとは言っても、どうしても一部人権が制限される奴隷を使うしかなかった。

 奴隷ならグラスヒルが一番豊富な人材を集められそうだった。
グラスヒルは流通の要衝でありオークションの内容も充実しているのだ。

「ヨーコには【鑑定】があるから、そこらへんの見極めは一任出来るか……。
よし、そこらへんもヨーコに頼もうか」

 カナタは伯爵家の三男だが、長いこと寝たきりだったため貴族家のほんの一部しか目にしていない。
つまり、貴族家がどのような人材により運営されているのかを知らない。
そこで王族だったヨーコに丸投げすれば男爵家の運営も万全だと判断したのだ。

 今回、工房絡みで奴隷を雇う際に、カナタは面白いからと安易に傭兵を雇ってしまった。
しかし、傭兵を何処で使うのか、契約によりどのような場面では使えないのかを知らなかった。
そのため無駄な出費ともいえる契約となってしまい、リュゼットにも悪いことをしてしまった。
これが、最初から領地防衛のための領軍指揮官として雇うであれば良かったのだ。
そういった判断がカナタには出来ないなら、誰かに任せるというのもカナタの取る道だった。

 カナタは全て自分でやろうとしすぎていた。
音声通信機などはその最たるものだろう。
自分で作った方が早い。しかし自分で作ったのでは一生魔導具を作り続ける人生だっただろう。
任せられるものは任せる。それが今回工房を作った理由だった。
雇った職人や戦闘職もララに選んでもらった方が上手く行っていた。
今後も他人任せにする場面は多くなるだろう。
カナタも男爵ともなれば、それで良かったのだ。
魔宝石のことも一言「魔宝石を手に入れる人員を確保して実行」で良かったのだ。
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