父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

140 カナタ、高速移動網を構想する

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「急にそんなこと言われても困っ!」

 カナタが急な加増に抗議しようとした時、突然アフオ元男爵の首の無い身体が立ち上がると、ライジン辺境伯を後ろから斬り付けて来た。
その行動を目にしているのはカナタだけかもしれない。
首が無いということは死んでいると思っていたカナタは、驚きのあまり行動に起こすことが出来なかった。

ズシュン!

 そこにニクの荷電粒子砲の光条が突き刺さった。
アフオ元男爵の身体はその一撃で黒焦げとなった。
万が一のためにとニクがずっとロックオンし続けていたことが役に立った瞬間だった。

「バカな! 死んでいたはずだ!」

 ライジン辺境伯の目にはゆっくりと倒れて行く黒焦げの身体が映っていた。
その胸には異様な物が嵌められていた。

「まさか、それで操られていた?」

 カナタはいち早くその胸の異物に気付き推測を口にした。
身体を動かしていたのがアフオ元男爵の脳ではなく、その異物だとしたら、元男爵は操られた被害者だったのかもしれなかった。

「俺もこんなものは見たことがない。
カナタ、調べられるか?」

 とその時、カナタと辺境伯の前にニクが立ちふさがった。

ズシュン! ズバーーーーーーー! 

 光条がカナタと辺境伯に向かって来ていた。
それはニクが発した荷電粒子砲ではない。
ニクは目の前でカナタたちに背を向けており、その左腕が次元空間壁を展開し荷電粒子砲の光条を防いでいた。

ズシュン! ドシュ!

 二発目の光条が向かって来た。
しかし、二発目の狙いはカナタたちではなく、アフオ元男爵の胸にある異物だった。
胸の異物は光条に貫かれ跡形もなく消えた。

ズシュン! ズシュン!

 ニクが荷電粒子砲の発射元へと2発反撃を行った。
しかし、敵は目的を達したということか、姿を現すことなく撤退して行った。

「まさか、ニク以外にも愛砢人形ラブラドールがいるのか!?」

 敵が放ったのはどう見てもニクと同じ荷電粒子砲だった。
ニクが次元空間壁を展開できる愛砢人形の左腕を持っていて良かった。
これが無かったらカナタもライジン辺境伯も死んでいたかもしれなかった。

「胸の異物はもう駄目だな。
撤退の速さ、フェイントで俺たちを狙う手口、明らかに手練れだ。
奴は、この異物の破壊が目的だったと見て良いな」

 何やら陰謀の匂いがして来た。
異物をアフオ元男爵の胸に嵌めてコントロールし、いったい何をしようとしていたのか?
だいたい、ウルティア国からの魔物の氾濫も異常事態だった。
一連の事件の裏に何か組織立った陰謀があるのかもしれなかった。

「おい、お前ら、アフオが急に変わったという印象はあったか?
アフオはこの異物に操られていたのかもしれん」

 ライジン辺境伯は、慌てて捕まえられたアフオの家臣に問い質した。

「そういえば、氾濫討伐に出る前からおかしかった気がする……」

 子飼いの家臣の一人がぽつりという。

「確かに悪い人だったけど、子悪党であって根っからの悪ではなかった。
なのに箍が外れたように要求が度を越して行って……」

 どうやら操られていたのは決定的のようだ。

「魔物の氾濫も魔物の量やドラゴン出現など明らかに異常だった。
そしてこの異物、何やらこの南部辺境が狙われているように思える」

 ライジン辺境伯は一連の出来事が同じ元凶から発する事件だと捉えたようだった。

「もし、この異物がウルティア国上層部に蔓延していたとしたら一大事だぞ。
カナタ、ミネルバの防衛はお前に任せたいところだが、さすがに人数が足りないな。
よし、ライジニアに帰った第2軍を早急にこちらへ回そう」

 ライジン辺境伯は、カナタに向き直ると真剣な表情で言った。
しかし、その第2軍が到着するまでに敵が動かないという保証はなかった。
アフオ元男爵を操る理由、ムンゾではなくミネルバにまで手を伸ばした理由、そこから推測されるのは、ミネルバへの侵攻だろう。
その防衛のため辺境伯は、第2軍を派遣してくれるということだった。

「しかし、時間が惜しい。どうしたものか」

 実はカナタはその解決策を知っていた。
カナタが設置する【常設転移門】があれば、軍隊を瞬時に移動させることが出来る。
その【常設転移門】をカナタはライジニア、グラスヒル、ガーディア、ミネルバと設置して相互に行き来できるようにしようと計画していた。
それを軍事に利用すれば、何処が狙われても一瞬で軍隊が駆けつけることが出来る。
まさに戦略に革命を齎す魔導具なため、カナタは公表を控えていたのだ。

 しかし、この期に及んで辺境伯に協力しないという手は無かった。
辺境伯は自らの領都を護るための軍をカナタの領地であるミネルバに派遣してくれるというのだ。
カナタはその恩に報いなければと思った。

「辺境伯、僕は【常設転移門】という魔導具が作れる。
それを設置すると、魔力を供給できる限り、二つの地点を次元回廊で繋ぐことができるんだ」

 魔力供給は、ヒナが発明した魔力製造機が無尽蔵に魔力を作り供給できた。
これによりライジン辺境伯の護る南部辺境は軍を遠隔地に移送する手段を手に入れることができるのだ。

「カナタ、すまんが、その【常設転移門】を王都用にも製造してくれ。
最低でも東西南北の辺境用に4組必要だ」

 国家防衛の緊急事態となれば、他の国境も危険かもしれなかった。
しかも、その魔導具を王都まで運ぶのでさえ2か月以上はかかってしまうのだ。
そして、敵にも愛砢人形ラブラドールが存在する可能性。
一体で全ての戦闘状況をひっくり返す力が敵にもあるとすれば、こちらの護りも考え直さなければならなかった。

「あ、僕がファーランド領まで【転移】で運んで、【常設転移門】を使って帰ってくれば良いんだ!」

 カナタは【常設転移門】の運搬方法を思いついた。
カナタがファーランドに戻り、そこで呪いの影響で転移出来なくなっても、魔導具ならば魔力を供給するだけで転移が可能だった。
そこから王都まで荷を運ぶのに5日なので、最低限の日にちで帰って来られるだろう。
そうすれば南部辺境伯領と王都は瞬時に援軍のやり取りが出来るようになる。

 まあ他の北部西部東部の辺境まで運ぶのは、さすがにカナタも行ったことが無く無理だった。
だが、ガチャオーブ化して運ぶのであれば、飛竜を乗騎とした竜騎士に運んでもらうという手が使えそうだった。
竜騎士の飛竜は高速移動が可能だが、その運搬能力は人ひとりが限界だった。
巨大な魔導具など運べる能力はないのだ。それが飛竜を輸送に使っていない理由だった。
(マジックバッグの使ってという方法はあるが、その容量もあまり大きくはない)
しかし、ガチャオーブ数個程度であるならば持ち運びに支障は無かった。
カナタはここでも流通革命を起こせる手段を持っていた。
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