父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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南部辺境遠征編

139 カナタ、加増される

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 ムンゾの西門をライジン辺境伯の獣車が通過したとき、門番は一瞬何が起こったのか理解が及ばなかった。
当然、それが自分たちの上司の上司である辺境伯であるなどと認識する暇もなかった。

「緊急閉鎖だ!」

 ムンゾの西門を護る門番は緊急事態であると認識し、自らの判断で慌てて門を閉めるロックを外す命令を出した。
ある意味優秀な門番だった。
門は釣り下げ式で、止めてある鎖のロックを外す事で緊急閉鎖が出来るようになっていた。
一人ではうっかりミスが発生する可能性があり、ロックは複数の門番により外さなければならない仕組みとなっていた。

ドスン!

 重い音を立てて門が閉鎖された。
既に辺境伯に侵入された後であったが、後続していたカナタたちにとっては迷惑な話であり、後続を断つという意味では正しい判断だった。

「ニク、門を破壊して!」

シュン ジュワー ドーーーーーン!

 カナタの命令にニクは獣車が通れるようにと荷電粒子砲を拡散させて放ち門を吹き飛ばした。
門は鉄製だったが、荷電粒子砲が当たると赤熱して熔け、そのまま爆発して吹き飛んだ。
直線的に撃たれていたら、その先にはライジン辺境伯の獣車が射線に入っていた可能性もあり、ナイス判断だった。
クヮァが引く獣車は速度を下げることなく、その門に開いた穴から街に突入した。

カンカンカン

 それに遅れること数秒で緊急事態を示す警鐘が鳴らされた。
これでカナタたちの侵入はアフオ男爵の知るところとなったと思われた。
本来ならば敵対勢力の侵入といった事態は、街道の物見などに予め発見されてしかるべきなのが、この世界の常識であった。
領境を越え何らかの武装勢力が侵入すれば、ある程度その行動は把握され、領都では領軍による迎撃準備をすることが可能だった。
しかし、今回カナタたちは【転移】によりその侵入の痕跡を残していない。
いきなり領都の目の前に武装勢力が現れ、街に奇襲をかけて来た。
王国史上今までの戦の中でほとんど例の無い事案が発生していた。

 ムンゾの代官屋敷はライジニアへと続くメイン街道が直に繋がる一等地に建てられていた。
つまり、ライジン辺境伯の獣車は、何にも隔たれることなく一直線にアフオ元男爵が居住する代官屋敷へと到達した。
その速度を全く落とすことなく。

ドーーーーーーーーーーーーン!

 何の迎撃準備も出来ないままでいた代官屋敷にライジン辺境伯の獣車が突っ込んだ。
その獣車を引くのは竜種。しかも戦闘用に鎧を纏わせた戦闘竜だった。
元々刃が通らないような鱗を持つ上に、物理防御魔法防御の付与がなされた鎧を着こんだ竜の体当たりに、代官屋敷の門などただの飴細工と一緒だった。

 その戦闘竜に引かれた獣車もいつのまにか変形していて、上部が大きく開き、そこにライジン辺境伯がハルバートを手に仁王立ちしていた。

 ここに至り、代官屋敷に詰めていたアフオ元男爵の配下は事の経緯を理解した。
雲の上の上司であるライジン辺境伯に気付き、恭順を示して武器を手放す者もいた。
だがほとんどはアフオ元男爵子飼いの臣下であり、その悪事の数々に協力して来た者たちで、侵入者がライジン辺境伯であると把握したにも関わらず、賊として武器を改めて構えていた。

ブン

 ライジン辺境伯のハルバートが振るわれると、武器を向けた者たちが胴で両断された。
それは獣車の速度を乗せた一撃であり、人ひとりを粘土のように分断していた。
その行程は一直線であり、死屍累々の直線道が屋敷の玄関まで出来上がっていた。

 獣車はそのまま屋敷へと突入する。
戦闘竜が体当たりで玄関扉を吹き飛ばす。
最早玄関扉など、その勢いを殺す役にも立たなかった。

「な、何や……」

 何奴と誰何しようとして、あまりにも良く知っている人物であることに固まる執事。
さらにその怒りの表情を見て、全てが終わったことを理解した。

「アフオを出せ! 反逆罪で貴族位はく奪のうえ、俺自ら引導を渡してくれる!」

 最早組織立った抵抗は出来なくなったいた。
カナタは、ニクに外から来るかもしれないアフオ元男爵の援軍に備えさせ、勝手知ったるラキスに信用のおける者とそうではない者を仕分けさせて捕縛していった。

「主よ。私はこれを待っていたのだ!
やはり主の元に来たのは正解だった!」

 抵抗する者は、リュゼットが水を得た魚のように活躍し倒して行った。
その動きはカナタが把握しているレベルとは到底思えないものだった。

「(リュゼットはレベルを偽装していそうだな)」

 カナタはリュゼットに対する認識を密かに改めた。
レベルが高ければそれだけ傭兵として自らを高く売れるというのに、どうして低く偽装するのか?
リュゼットの謎が益々増えていくのだった。

「ん?」

 カナタの目の前を使用人のような恰好の小太りの男が通ろうとしていた。

「あ、アフじゃないか!」

 カナタの目の前の人物は使用人に扮して逃亡しようとしていたアフオ元男爵だった。

「バレたか!」

 アフオ元男爵は、カナタが魔物の氾濫で活躍したことも忘れて、隠していた短剣でカナタに斬りつけて来た。
カナタはどうするべきか悩みながらその一撃を避けた。

「(やっぱり止めは辺境伯に任せた方が良いよね)」

 カナタは勇者の身体能力を駆使してアフオ元男爵の攻撃をいなし続けた。
ラキスもリュゼットも、その様子を見てカナタは問題ないと自分たちの仕事に戻った。
だがニクだけは、いざという時のためにずっとアフオ元男爵をロックオンし続けていた。

 そのうち屋敷の中を捜索し終わったライジン辺境伯が、カナタとアフオ元男爵のところにやって来た。

「そこに居たか! アフオ、貴様、良くもやってくれたな!」

「ひいーーーーーーーーーーーーーー!」

 ライジン辺境伯に鬼の形相で睨まれて、アフオ元男爵は足元から崩れて行った。
その尻の下には水たまりが出来て行く。

「成敗!」

 ライジン辺境伯は、アフオ元男爵を捕縛することなく、その首をはねた。
どのような悪事を働いて来たかなどは、捕まった配下からでも事情聴取可能ということだろう。
ライジン辺境伯は、アフオ元男爵に自分が裏切られていたことより、アフオ元男爵がカナタに迷惑をかけたことが許せなかった。
その怒りが即時処刑という行動となって表れていた。

 そして、ライジン辺境伯一人が暴れていた中、カナタたちがしっかり後方支援をしてくれていたことに気付き、相好を崩した。

「カナタ、よくやったな。ウスタイン領もカナタが治めると良い」

「は?」

 なぜかカナタはミネルバ領と一緒にウスタイン領も手に入れることになってしまった。
もしかして面倒な仕事を押し付けられただけなのかもしれなかった。
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