父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ウルティア国戦役編

145 カナタ、独り立ちする

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 父アラタが解呪出来たことで、カナタも呪いの影響が消えた。
これによりカナタのステータスは異常な数値に跳ね上がった。
体力10万、魔力100万、幸運値は246という本来の数値となったのだ。
体力と魔力はカンストしており、レベルが上がってもこれ以上は増えることはなかった。

 なぜカナタ自身が低レベルの状態でカンストしているのかというと、これは女神ソフィアのミスによる。
多田野信がカナタの肉体を得て転生する際に、女神ソフィアはカナタの肉体を勇者仕様に変更した。
しかし、呪いの影響で思ったようなステータスを得られなかった。
そこへの修正として正解なのは、呪いの影響を排除することだったのだが、女神ソフィアは力業で呪いを前提としたステータスを与えてしまった。
これは呪いを直接受けているのがカナタではなかったことと、多田野信が制限時間をギリギリまで使ったせいで、カナタの肉体の勇者化に時間をかけられなかったことが原因している。
それがこのような問題のあるステータスをカナタが得ている理由だった。

 そのため、女神ソフィアによる勇者の称号の隠蔽は未だ消えていなかった。
そして、この異常な数値にも女神ソフィアは隠蔽をかけることとなった。
体力1000、魔力10万、これが目に見えるカナタのステータスだった。
隠蔽されていることはカナタ自身しか見ることが出来ない神仕様だ。
冒険者ギルドなどの魔導具や【鑑定】スキル持ちによって鑑定されても、その数値しか見ることは出来ない。
それでも勇者を疑わせる数値なのは、女神ソフィアのどこか抜けたところなのだろう。
もう一つついでに抜けていたのは、カナタの聖属性魔法が解禁されていることを隠蔽し忘れたことだろう。
聖属性は勇者を疑われる。
女神といっても万能ではないのは、多田野信の件でもお解りいただけるだろう。

「家族の団欒を噛みしめている所を悪いが、高速移動網の構築は急務だ。
そろそろ仕事を始めても良いかな?」

 声をかけて来たのは、この国――メルティーユ王国の王であるヒカル王だった。
高速移動網構想は魔導通信機により王国上層部で共有されていた。
もちろんその鍵となる【常設転移門】と【魔力充填機】をカナタが齎したことは極秘とされ三英雄しか知らなかった。
そのため、こんな現場にヒカル王自らがやって来たのだ。

「この中に【常設転移門】と【魔力充填機】が入ってます。
これが王都用で、こちらが各辺境用になります」

 カナタが渡したのは金色のガチャオーブだった。
【常設転移門】と【魔力充填機】を、このガチャオーブの状態で運ぶのならば、飛竜を使う竜騎士に東西北の各辺境まで高速で運ばせることが可能だった。
【常設転移門】は王都に設置するものと対になっているので、1対1でしか移動できない。
だが、国の中央と辺境が一瞬で行き来できるようになるのは、まさに移動革命と言って良かった。

「【魔力充填機】は、動力を魔力に返還して充填する魔導具です。
水力、風力に加えて馬などの力で動かす必要があります」

 王都には水力、風力は使用できないが、辺境ならばその土地土地に合った動力を利用することが可能だろう。
まあ、設置当初であればカナタが燃料石に充填した魔力で試験稼働が可能だった。


 早速王都用の【常設転移門】が王城内の専用広場に設置された。
その門の大きさは馬車が2台すれ違えるほどだった。
これは双方向にぶつかることなく移動できるようにということと、緊急時には2車線で利用できるようにという、カナタの知らないはずの知識経由の配慮だった。

 その行先は東部辺境、西部辺境、北部辺境、南部辺境とファーランドだった。
広場へは軍の駐屯地から直で馬車が侵入出来るようになっており、軍の移動がスムーズに行えるような配慮がなされていた。

「凄いものだな」

 これをカナタが作ったということに、父アラタもヒカル王も驚きを隠せなかった。

「この2つは、もう使えるんだな?」

「はい、僕が燃料石に魔力を充填済みですので、何回か使用可能です。
常設で使い続けるには、常に【魔力充填機】を動かす必要があります」

 ファーランドと南部辺境には、既に【常設転移門】を設置済みだったので、試験が行われることとなった。

「ここに起動ボタンがあります。
転移門は1対1なので、この起動ボタンを押すことで、相手側の転移門も起動します。
では、押してみます」

 カナタが南部辺境と繋がる【常設転移門】の起動ボタンを押すと壁が見えていた転移門の表面が水面のように揺らぎ、向こう側に別の景色が見えるようになった。

「この向こうがライジニアになります」

 カナタが一跨ぎでライジニアに行くと、ライジン辺境伯、アラタ、ヒカル王の順番で門を潜った。

「おう、まさしくライジニアではないか!」

 ヒカル王が驚嘆の言葉を漏らす。
そして、しばし思案すると徐に宣言した。

「この仕事、まさに国家繁栄の大事業である。
カナタ=ファー=ミネルバ男爵を伯爵に陞爵とする」

 カナタの子爵陞爵は時間の問題だったのだが、この大手柄を加えると子爵陞爵だけではその功績に対する褒賞としは評価が低すぎたのだ。
この瞬間、カナタは伯爵位となってしまった。

「立派になったな、カナタ……」

 父アラタもカナタの驚愕の仕事に感涙し目がしらを抑えることとなった。

「カナタ、お前はもう立派な貴族家当主だ。
これからは家出なんかじゃない。
貴族家当主として配下や領民のために尽力するのだ。
それに【常設転移門】のおかげで、いつでも直ぐに会えるだろう?」

「父様!」

「カナタ!」

 親子はひしと抱き合う。
呪いの消えた今、親子は離れて暮らす必要などない。
しかし、アラタはカナタに出来た仲間たちとカナタとの生活を慮って最愛の息子の独り立ちを容認したのだった。

「では、王都に戻ろうか。
そして東西北の辺境には俺が【常設転移門】を届けよう。
飛竜に乗れて信用がおけるとなると俺ぐらいしか居ないだろう?
【常設転移門】と【魔力充填機】の使い方も教えられるしな」

 【常設転移門】も【魔力充填機】も魔導通信機以上の国家機密指定魔導具だった。
それを一介の竜騎兵に運ばせるわけにはいかなかったのだ。
例えガチャオーブの状態であっても、それが金色に輝くアイテムオーブだと知れば中身がどうこうではなく魔がさしてしまうことは多々あるのだ。
金色のアイテムオーブを売れば一生遊んで暮らせるとなれば、竜騎士という立場を捨ててでも盗みかねないというのは、この世界のモラルでは仕方のないことだった。
信用出来る人物としてライジン辺境伯以上の適役はいなかった。

「これも持って行って」

 カナタがライジン辺境伯に渡したのはマジックバッグとその中に入っている音声通信機333333番だった。
ついでにヒカル王にも音声通信機222222番を改めて渡す。
ちなみに音声通信機000000番は特別な意匠を施されて今も陸路を輸送中だった。

「これでいつでも通信できるからね」

「お前、マジックバッグも作れるのか……」

「あ!」

 この3人には秘密が駄々洩れになるカナタだった。
尤もこの3人は三英雄であり、カナタが一番信頼できる人達なので問題はなかった。
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