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ウルティア国戦役編
163 カナタ、謎の組織を認識する
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カナタは仲間となったγ1とλ3から、襲撃して来た理由を訊き出していた。
「私達は『組織』とだけ呼ばれる組織に所属する愛砢人形でした。
今回は、ムンゾでλ3が接触した愛砢人形を破壊しろと命じられました」
ムンゾの件ならカナタにも覚えがあった。
「あのムンゾで荷電粒子砲を撃って来たのはλ3だったのか!」
その事実を知り、ニクの額に青筋が浮く。
ニクが次元空間壁で防御しなければカナタが死んでいただろうからだ。
そしてニクの反撃を退けてλ3は逃げているのだ。
λ3は、その事実に申し訳なさそうに俯いた。
一番恐ろしい長姉に睨まれているからだ。
その様子を見て、カナタは助け船を出した。
「こら、ニク。λ3はもう仲間だ。
いじめるんじゃない。
それとあの時は、ニクが完璧に守ってくれたじゃないか」
「はい♡ マスター」
カナタのよいしょでニクの機嫌が直った。
その様子にλ3は涙目になりながら、助かったと胸を撫で下した。
「話を戻すけど、その命令はどのようにして伝えられたんだ?」
「はい。私たちは、通信機により呼び出しを受け、待ち合わせ場所に向かいます。
そこで黒いローブの人物から直接命令を受けていました」
「通信機!」
カナタが驚いたのは、その組織が通信機を実用化していることと、それが愛砢人形の通信機と送受信できるということだった。
「はい、おそらく私たちから切り取られたものを元にして製造し、使っているのかと思われます……」
γ1が沈んだ顔で話したのは、おそらく切り取られた愛砢人形は、もう生きていないということだからなのだろう。
「私たちが損傷すると、組織はマスターのように治そうとは思ってくれません。
使えなくなったら部品取りをして廃棄、それが組織のやり方でした……」
「バカな! どうしてそんな惨いことを……」
カナタはその処遇に憤りを覚えた。
そんな組織にいる愛砢人形が可愛そうだと同情した。
そして救わなければという使命に似た感情がカナタに芽生えた。
「僕は、組織に残っている愛砢人形も救いたい。
組織の情報をもっと教えて欲しい」
「申し訳ありません。
組織からの接触は一方的で、こちらから組織の人間の居場所はわからないようになっているのです。
しかも、組織の人間は全員黒いローブを羽織っており、顔も仮面で隠していて個人の特定も出来ないのです」
カナタの救いたいという気持ちは、情報不足という壁に阻まれてしまった。
組織は、構成員の誰かが捕らえられた時のために、情報が漏洩しないようにと構成員の間でもお互いの情報を得られないように最大限の努力をしていたのだ。
知らなければ漏らすことは絶対に無い。それを実践していたのだ。
「どうにか出来ないものか。
そうだ、γ1たちは、何処から此処へどうやって来たんだ?」
「私たちは、ウルティア国にて待機していて、そこからこちらへと転移の魔道具でやって来ました。
その魔道具は命令受領時に組織から往復用にと二つ支給されています。
今も復路用に一つ持っています」
γ1は、転移の魔道具をカナタに提出した。
それこそが赤い起点を作る転移の魔道具だった。
「もしかして、帰還地点が記録されている?」
「そのはずです」
この魔道具によって帰還した先には、もしかすると組織の人間が報告を受けるために待っているかもしれなかった。
そこは間違いなくウルティア国であるはずだった。
だが、そこで組織の人間に接触して捕まえたとしても、そこから繋がるだけの情報をその者も持っていないだろうことが推測出来た。
「となると、ウルティア国に行って、砢システムの反応を調べて、待機中の愛砢人形と接触した方が良いかもしれない」
「はい。オーブから出たばかりの砢システムの反応を捕らえられるならば、もしかすると組織の拠点がみつかるかもしれません」
「それは有効かもしれないね」
カナタは、ミネルバを守るという使命と共に、ウルティア国にて愛砢人形救出もしなければならないと心に決めた。
だが、その二つはもしかすると同じ敵を相手にしているのかもしれなかった。
「私達は『組織』とだけ呼ばれる組織に所属する愛砢人形でした。
今回は、ムンゾでλ3が接触した愛砢人形を破壊しろと命じられました」
ムンゾの件ならカナタにも覚えがあった。
「あのムンゾで荷電粒子砲を撃って来たのはλ3だったのか!」
その事実を知り、ニクの額に青筋が浮く。
ニクが次元空間壁で防御しなければカナタが死んでいただろうからだ。
そしてニクの反撃を退けてλ3は逃げているのだ。
λ3は、その事実に申し訳なさそうに俯いた。
一番恐ろしい長姉に睨まれているからだ。
その様子を見て、カナタは助け船を出した。
「こら、ニク。λ3はもう仲間だ。
いじめるんじゃない。
それとあの時は、ニクが完璧に守ってくれたじゃないか」
「はい♡ マスター」
カナタのよいしょでニクの機嫌が直った。
その様子にλ3は涙目になりながら、助かったと胸を撫で下した。
「話を戻すけど、その命令はどのようにして伝えられたんだ?」
「はい。私たちは、通信機により呼び出しを受け、待ち合わせ場所に向かいます。
そこで黒いローブの人物から直接命令を受けていました」
「通信機!」
カナタが驚いたのは、その組織が通信機を実用化していることと、それが愛砢人形の通信機と送受信できるということだった。
「はい、おそらく私たちから切り取られたものを元にして製造し、使っているのかと思われます……」
γ1が沈んだ顔で話したのは、おそらく切り取られた愛砢人形は、もう生きていないということだからなのだろう。
「私たちが損傷すると、組織はマスターのように治そうとは思ってくれません。
使えなくなったら部品取りをして廃棄、それが組織のやり方でした……」
「バカな! どうしてそんな惨いことを……」
カナタはその処遇に憤りを覚えた。
そんな組織にいる愛砢人形が可愛そうだと同情した。
そして救わなければという使命に似た感情がカナタに芽生えた。
「僕は、組織に残っている愛砢人形も救いたい。
組織の情報をもっと教えて欲しい」
「申し訳ありません。
組織からの接触は一方的で、こちらから組織の人間の居場所はわからないようになっているのです。
しかも、組織の人間は全員黒いローブを羽織っており、顔も仮面で隠していて個人の特定も出来ないのです」
カナタの救いたいという気持ちは、情報不足という壁に阻まれてしまった。
組織は、構成員の誰かが捕らえられた時のために、情報が漏洩しないようにと構成員の間でもお互いの情報を得られないように最大限の努力をしていたのだ。
知らなければ漏らすことは絶対に無い。それを実践していたのだ。
「どうにか出来ないものか。
そうだ、γ1たちは、何処から此処へどうやって来たんだ?」
「私たちは、ウルティア国にて待機していて、そこからこちらへと転移の魔道具でやって来ました。
その魔道具は命令受領時に組織から往復用にと二つ支給されています。
今も復路用に一つ持っています」
γ1は、転移の魔道具をカナタに提出した。
それこそが赤い起点を作る転移の魔道具だった。
「もしかして、帰還地点が記録されている?」
「そのはずです」
この魔道具によって帰還した先には、もしかすると組織の人間が報告を受けるために待っているかもしれなかった。
そこは間違いなくウルティア国であるはずだった。
だが、そこで組織の人間に接触して捕まえたとしても、そこから繋がるだけの情報をその者も持っていないだろうことが推測出来た。
「となると、ウルティア国に行って、砢システムの反応を調べて、待機中の愛砢人形と接触した方が良いかもしれない」
「はい。オーブから出たばかりの砢システムの反応を捕らえられるならば、もしかすると組織の拠点がみつかるかもしれません」
「それは有効かもしれないね」
カナタは、ミネルバを守るという使命と共に、ウルティア国にて愛砢人形救出もしなければならないと心に決めた。
だが、その二つはもしかすると同じ敵を相手にしているのかもしれなかった。
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