父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ウルティア国戦役編

195 シータ、盗聴する

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 カナタ一行は、カルカイムの街の南門へと続く街道脇に設定してあった転移起点に【転移】して来た。
そこでカナタ、ニク、シータ、ゼータ5、イータのカナタ班と、ガンマ1、ラムダ3のガンマ1班とにパーティ―を分けた。

「こちらの反応が探知出来ないようにジャミングをかけます。
マスターの班の者はシータを中心に10m以内に居てください」

 シータはカナタ班のシステムが探知されないように、ジャミングをかけていた。
これはシータを中心とした半径10m程度のの反応を漏れなくするためであり、妨害波のようなものを逆探知されることはなかった。

「マスター、通信で組織と接触しました。
待ち合わせ場所はカルカイムの街北門外の丘の向こう側です。
これより待ち合わせ場所に向かいます」

 ガンマ1班はここで別れて南門からカルカイムの街へと入った。
ガンマ1たちは、そのまま北門へと抜けて待ち合わせ場所まで行くはずだ。

「では僕らは外壁を反時計回りに迂回するよ」

 カナタ班は、このまま外壁を伝って北門外の丘へと東から迂回する予定だった。
そこでニクの荷電粒子砲の射界を確保し援護ならびにシータによる盗聴を行うのだ。

「僕らも急ぐよ。
外壁を回ったら目立たないように接近する」

 カナタも最初は街の中の建物内から盗聴するだけで済むかと思っていた。
しかし、万が一の時に救援に向かえるだけの距離にまで詰めておく必要があると思い直し、謎の組織との待ち合わせ場所に近づくことにしていた。

シータだけなら加速装置で直ぐに向かえるのに……」

 シータがジャミングをしているため、カナタ班は一塊で移動する必要があった。
謎の組織がの反応を探知出来る可能性があるからには、隠密行動を取らざるを得なかったのだ。

「なら、ニクが先行しよう」

 ニクは万能型なため、シータと同様にシステムの反応を隠蔽することが出来た。
ただ、他の機能と併用しようとするとリソースが足りず、自分の周囲ぐらいしか隠蔽することが出来なかった。
ニクが全能力を発揮するためにはさらなるキューブの拡張が必要だった。

「ニクにはガンマ1たちの援護のための位置取りを頼む」

「了解した」

 ニクは飛翔ユニットを起動し、外壁を目隠しとして低空を飛んで行った。
頃合いを見て地上に降りて進むつもりだ。

「マスター、失礼します」

 ニクを見送ってすぐ、ゼータ5はカナタに声をかけるとカナタをお姫様抱っこした。

「ちょ、ゼータ5、なに?」

「このまま走ります。
喋ると舌を噛みますよ?」

 そう言うとゼータ5は駆け出した。
シータとイータもそれに示し合わせたように駆ける。
彼女達もなるべく早く配置に付くべきだと思っていたのだろう。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ああ、酷い目にあった」

 お姫様抱っこから開放されたカナタはぐったりしていた。
さすがに高速で走る愛砢人形ラブラドールの乗り心地は最悪だったのだ。
だが、そのおかげか、ガンマ1たちが謎の組織と接触する前に、カナタたちは丘を一望する監視地点へと移動することが出来た。
どうやら謎の組織の者たちはカルカイムの街から死角となる丘の裏側に隠れるようにガンマ1たちと会うつもりのようだ。
カナタたちはそれを東から監視するかたちで伏せていた。

「マスター、始まります」

 盗聴していたシータが外部スピーカーに切り替え、皆にも聞こえるようにした。
カナタも風魔法の【音声結界】で音が漏れないようにする。
いよいよ謎の組織とガンマ1たちの会話内容が聞こえて来た。

『良く来たな、ガンマ1、ラムダ3。
俺はナンバー8だ』

 ナンバー8とガンマ1たちは面識があるのだが、黒ローブで体も顔も隠したナンバー8は、外見からは識別が困難だった。
ガンマ1たちも声だけ知っているという関係だったため、ナンバー8は敢えて自己紹介をしたのだ。

『私は黒「ろ」の23番』

 ナンバー8と言った男の後に女の声が聞こえた。
どうやら相手は男女の2人のようだ。
それに対してガンマ1とラムダ3が会釈したような衣擦れの音が聞こえる。

『さて、お前たちを呼んだのは、他でもない。
先の任務の実施状況を直接報告してもらうためだ。
黒「め」の97番の報告では任務に成功したとしかわからん。
あいつは無能すぎる』

 ついついボヤキが出るナンバー8の溜息までもが聞こえる。

『かしこまわりましたわ。
先の敵愛砢人形ラブラドール破壊任務の詳細報告でよろしくて?』

『そうです、事細かに報告しなさい』

 黒「ろ」の23番と名乗った女の声が報告を促す。

『まず、敵愛砢人形ラブラドールは第一量産型のεイプシロンでしたわ』

『なに、イプシロンだと!』

 ナンバー8が驚きの声をあげる。
イプシロンは、強化外装が必要なこともありレアな機体なのだ。

『ええ、そのため強化外装に荷電粒子砲も次元空間壁も備えていたということですわ』

 これは予め打ち合わせで決めていた話だった。
アルファの存在を隠さなければならないので、同等の攻撃防御性能を持つ機体となると強化外装込みのイプシロンしか辻褄が合わないのだ。

『そんなレアな機体をあなた達だけで破壊出来るのかしら?』

 黒「ろ」の23番が疑問を投げかける。
だが、これこそがイプシロンを選んだもう一つの理由だった。

『イプシロンは強化外装を外していれば、ただの力持ちに過ぎないわ。
そこをラムダ3が狙い撃って終了よ』

『なるほど、確かに』

 ナンバー8が納得の声をあげる。
だがナンバー8の次の言葉にガンマ1は声を詰まらせた。

『では、イプシロンから制御核は奪って来たのだろうな?』

 イプシロンは強化外装と加えてシステムを二つ持っている。
例え破壊時にシステムを1つ壊してしまっても、もう一つは回収出来るはずだった。
そのような事を言われるとは想定していなかったため、ガンマ1は声を詰まらせたのだ。

『そ、それは……。
長距離射撃なので制御核を破壊してしまったのと、強化外装を外していたため、そちらの所在はわかりませんでしたので……』

 そのガンマ1の声は明らかに動揺していた。
それを見逃す黒「ろ」の23番ではなかった。

『おかしいだろ。
なぜ強化外装を鹵獲しない。
外された強化外装などただの木偶の坊だろうに』

『そうだ。考えてみるとおかしいではないか!』

 ナンバー8も鬼の首を取ったかのように追及する。

「拙い。ニク、いつでも撃てるように待機だ」

 盗聴していたカナタもガンマ1たちに危険が及びそうだと身構えた。

『それは、私共ガンマ1とラムダ3が破壊命令しか受けていなかったせいです!』

 ガンマ1の悲痛な叫びが聞こえた。
組織の愛砢人形ラブラドールは裏切らないようにと命令で雁字搦めになっていた。
命令以外の事をするには、どこまで行って良いのか細かい許可命令を予めしていなければならなかった。

『その命令を下したのは?』

『ナンバー8です』

 ナンバー8のポンコツが出た結果だと黒「ろ」の23番は瞬時に理解し頭を抱えた。

『そうですか。それなら無理ですね』

 黒「ろ」の23番は、ナンバー8にジト目を送るしかなかった。

『では、次の質問だ』

 ナンバー8は自らの不始末を誤魔化すように次の質問をする。
それで誤魔化せると思うなよと黒「ろ」の23番は、睨みつける。

『ここの迷宮にある研究施設が襲われた。
丁度、おまえたちがこの街に帰還した時のことだ。
何か知っていないか?』

 ナンバー8は、ガンマ1たちが縛りにより嘘をつけないはずだと事情聴取を始めた。

『『何も知りません』』

 だが、ガンマ1もラムダ3も、既にカナタの配下なため、堂々と嘘をついた。

『そ、そうか』

 これで言い逃れ完了。
組織との繋がりも維持出来たので、ガンマ1は今度は逆に探りを入れようとした。

『その研究施設とは?
何をしていたのでしょうか?』

『ああ、制御核の回収作業所だ。
その隠し部屋が暴かれて、制御核が盗まれてしまい困っているのだ』

 ナンバー8、やはりポンコツだった。
殺され制御核を抜かれる立場の愛砢人形ラブラドールに、その秘密を簡単に喋ってしまうとは……。

『ナンバー8、口が滑り過ぎです。
それは彼女たちに知らせるべきことではありません』

『あ!』

 ナンバー8の間抜けな声に聴いていたカナタも苦笑するしかなかった。
だが、その次の台詞はカナタの背筋を凍らせるものだった。 
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