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ウルティア国戦役編
200 カナタ、暗黒面に落ちそうになる
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カナタがまず着手したのは、戦力の増強だった。
獣型愛砢人形の性能は、その身体能力の高さから愛砢人形を上回っているように見えたからだ。
パワー、反射神経、ともに尋常ではなかった。
カナタはガーディアの工房までイータを伴って戻ると、ミュー、ミュー2、イプシロンを愛砢人形間通信で招集した。
『ミュー、ミュー2、イプシロン、直ぐに戻ってきて……』
『何かあったのね? わかった。直ぐに戻る』
ミューはカナタの声のトーンで、直ぐに戻る必要があると察した。
「マスターの様子がおかしい。
急ごう、何か悪いことがあったみたい」
街中へと買い物に出ていたミューたちは、新たに加わったマイの生活必需品や洋服を買いに同行していたのだ。
「(何があったの? マスターがあんなに落ち込んでいるなんて……)」
ミューは嫌な胸騒ぎを感じつつ帰路を急いだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
続けてカナタは残り10個の山吹色のゴーレムオーブを開けた。
今度は10連の恩恵で高レアリティにならないようにと、1個づつ開けていった。
その結果は……。先行量産型のベータが1体、狙撃型のラムダが1体、防御型のゼータが2体、第二期量産型のイオタが3体、最終量産型のミューが3体だった。
結果、戦闘力と防御力に偏ったものとなっていた。
そこにはこの後の戦いに備えたいというカナタの願望が実現しているのかもしれなかった。
あれだけ違う顔にしたいと拘っていたカナタだが、この状況に形振り構っていられなかったのだ。
そのため、ミュー型が合計6体となってしまい、その異常さは言い逃れ出来ないものとなってしまった。
六つ子を含めた20数人姉妹など、この異世界でも存在しえなかった。
「これから迷宮に逃げ込んだ敵組織の幹部と獣型愛砢人形3体を狩る。
皆にも協力してもらうつもりだ」
「「「「「はい、マスター」」」」」
カナタは暗黒面に落ちようとしていた。
いつもならば、直ぐに配布される洋服とエッチな下着も忘れているぐらいだった。
彼女たち10人の愛砢人形は、全裸のまま立たされていた。
「カナタくん、それは違うぞ!」
そこにやって来たのは、ミューたちと買い物から帰って来たマイだった。
マイはカナタを抱きしめると諭すように訴えかけた。
「何があったかわからないけど、皆を物のように扱うのはやめて!
カナタくんは、皆を人として扱ってくれるから大好きだってシータが言ってたよ!」
シータの名が出たことでカナタは震えだし、シータの名をブツブツと呟きだした。
「シータ、シータ、シータ……」
「マスター、シータに何かあったのね?」
ミューのその問いかけにはカナタではなくイータが答えた。
「先の作戦でガンマ1が重体、それを助けようとしたマスターを庇ってシータが危篤状態よ」
「!!」
ミューはイータの報告に驚愕した。
謎の組織を騙して、ただの情報収集をするだけの作戦だったはずが、どうしてそうなった。
ミューはカナタが受けたショックを察し、マイと共にカナタを抱きしめた。
「辛かったのね。マスターは自分が許せないのかもしれないけど、それでマスターが変わってしまっては、シータの気持ちに反することになるよ。
ほら、裸ん坊な新しい子たちにエッチな下着を履かせないと!」
ミューはカナタの背中をポンポンと叩いて促した。
それにしても、エッチな下着が定番なのはどうかと思うとマイは思っていた。
それはカナタがHNアイテムオーブを開けると高確率でエッチな下着が出てきてしまうためなのだが、普通の下着を買って来ることも可能なのだ。
「ほら、服も出しなさいよ。
私と同じ顔がずっと全裸なのは私も恥ずかしいんだからね!」
ミューが顔を赤らめて言う。
その様子にカナタもクスリとやっと笑顔が出た。
「そうだね、ごめん。皆には酷いことをした。
女の子がずっと全裸のままなんて人権侵害のセクハラだね」
カナタは知らないはずの知識からまたこの世界には存在しない単語を口にしてしまった。
「ジンケンシンガイ、セクハラ、何それ?」
その言葉の響きが可笑しくて皆して笑うしかなかった。
「うん。元気が出た。
皆とあの獣は違う。もうあれを愛砢人形とは呼ばない。獣型で充分だ」
「獣型?」
「うん、おそらく獣と人の合成獣を素体として砢システムを搭載した改造型だ。
反射神経とか基礎能力が獣寄りな分、危険な存在だと思う」
カナタの神妙な顔にミューたちもその危険性を察した。
「そのための増員か……。
マスターは現有戦力では危ないと思ったわけね」
「うん、もう誰かが倒れるのは見たくなかったんだ」
「となると指揮型が居ないのは痛いかも」
ミューが思案顔になり考え込む。
「あ、ガンマ1は治療済みだから、ガチャオーブを開ければ復活するはずだよ。
それにさっきニューが出て今も作戦行動中だよ」
「「「「「え? ニュー?」」」」」
ミューとミュー2、そして3人の新たなミュー型が口を揃える。
彼女たちにとってミュー型特化の指揮型であるニューは最大に苦手な存在なのだ。
「あの眼鏡っ子が出たのね……」
ミューが頭を抱える。
いったいニューとミューの関係とはどういったものなのだろうか。
「はぁ、出てしまったのはしょうがない。
皆、なんとか団結して対抗するよ!」
「「「「おー」」」」
その可笑しな様子にカナタは和み、暗黒面から浮上するのを感じていた。
獣型愛砢人形の性能は、その身体能力の高さから愛砢人形を上回っているように見えたからだ。
パワー、反射神経、ともに尋常ではなかった。
カナタはガーディアの工房までイータを伴って戻ると、ミュー、ミュー2、イプシロンを愛砢人形間通信で招集した。
『ミュー、ミュー2、イプシロン、直ぐに戻ってきて……』
『何かあったのね? わかった。直ぐに戻る』
ミューはカナタの声のトーンで、直ぐに戻る必要があると察した。
「マスターの様子がおかしい。
急ごう、何か悪いことがあったみたい」
街中へと買い物に出ていたミューたちは、新たに加わったマイの生活必需品や洋服を買いに同行していたのだ。
「(何があったの? マスターがあんなに落ち込んでいるなんて……)」
ミューは嫌な胸騒ぎを感じつつ帰路を急いだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
続けてカナタは残り10個の山吹色のゴーレムオーブを開けた。
今度は10連の恩恵で高レアリティにならないようにと、1個づつ開けていった。
その結果は……。先行量産型のベータが1体、狙撃型のラムダが1体、防御型のゼータが2体、第二期量産型のイオタが3体、最終量産型のミューが3体だった。
結果、戦闘力と防御力に偏ったものとなっていた。
そこにはこの後の戦いに備えたいというカナタの願望が実現しているのかもしれなかった。
あれだけ違う顔にしたいと拘っていたカナタだが、この状況に形振り構っていられなかったのだ。
そのため、ミュー型が合計6体となってしまい、その異常さは言い逃れ出来ないものとなってしまった。
六つ子を含めた20数人姉妹など、この異世界でも存在しえなかった。
「これから迷宮に逃げ込んだ敵組織の幹部と獣型愛砢人形3体を狩る。
皆にも協力してもらうつもりだ」
「「「「「はい、マスター」」」」」
カナタは暗黒面に落ちようとしていた。
いつもならば、直ぐに配布される洋服とエッチな下着も忘れているぐらいだった。
彼女たち10人の愛砢人形は、全裸のまま立たされていた。
「カナタくん、それは違うぞ!」
そこにやって来たのは、ミューたちと買い物から帰って来たマイだった。
マイはカナタを抱きしめると諭すように訴えかけた。
「何があったかわからないけど、皆を物のように扱うのはやめて!
カナタくんは、皆を人として扱ってくれるから大好きだってシータが言ってたよ!」
シータの名が出たことでカナタは震えだし、シータの名をブツブツと呟きだした。
「シータ、シータ、シータ……」
「マスター、シータに何かあったのね?」
ミューのその問いかけにはカナタではなくイータが答えた。
「先の作戦でガンマ1が重体、それを助けようとしたマスターを庇ってシータが危篤状態よ」
「!!」
ミューはイータの報告に驚愕した。
謎の組織を騙して、ただの情報収集をするだけの作戦だったはずが、どうしてそうなった。
ミューはカナタが受けたショックを察し、マイと共にカナタを抱きしめた。
「辛かったのね。マスターは自分が許せないのかもしれないけど、それでマスターが変わってしまっては、シータの気持ちに反することになるよ。
ほら、裸ん坊な新しい子たちにエッチな下着を履かせないと!」
ミューはカナタの背中をポンポンと叩いて促した。
それにしても、エッチな下着が定番なのはどうかと思うとマイは思っていた。
それはカナタがHNアイテムオーブを開けると高確率でエッチな下着が出てきてしまうためなのだが、普通の下着を買って来ることも可能なのだ。
「ほら、服も出しなさいよ。
私と同じ顔がずっと全裸なのは私も恥ずかしいんだからね!」
ミューが顔を赤らめて言う。
その様子にカナタもクスリとやっと笑顔が出た。
「そうだね、ごめん。皆には酷いことをした。
女の子がずっと全裸のままなんて人権侵害のセクハラだね」
カナタは知らないはずの知識からまたこの世界には存在しない単語を口にしてしまった。
「ジンケンシンガイ、セクハラ、何それ?」
その言葉の響きが可笑しくて皆して笑うしかなかった。
「うん。元気が出た。
皆とあの獣は違う。もうあれを愛砢人形とは呼ばない。獣型で充分だ」
「獣型?」
「うん、おそらく獣と人の合成獣を素体として砢システムを搭載した改造型だ。
反射神経とか基礎能力が獣寄りな分、危険な存在だと思う」
カナタの神妙な顔にミューたちもその危険性を察した。
「そのための増員か……。
マスターは現有戦力では危ないと思ったわけね」
「うん、もう誰かが倒れるのは見たくなかったんだ」
「となると指揮型が居ないのは痛いかも」
ミューが思案顔になり考え込む。
「あ、ガンマ1は治療済みだから、ガチャオーブを開ければ復活するはずだよ。
それにさっきニューが出て今も作戦行動中だよ」
「「「「「え? ニュー?」」」」」
ミューとミュー2、そして3人の新たなミュー型が口を揃える。
彼女たちにとってミュー型特化の指揮型であるニューは最大に苦手な存在なのだ。
「あの眼鏡っ子が出たのね……」
ミューが頭を抱える。
いったいニューとミューの関係とはどういったものなのだろうか。
「はぁ、出てしまったのはしょうがない。
皆、なんとか団結して対抗するよ!」
「「「「おー」」」」
その可笑しな様子にカナタは和み、暗黒面から浮上するのを感じていた。
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