父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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ウルティア国戦役編

204 カナタ、獣を狩る4

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ド――――ン!

 イプシロンが入り口の壁を破壊した音と衝撃は、アジトの中の獣型にも伝わっていた。

「わう!」

「がうがう!」

「がう!」

「なんだ? なんだ?」

 獣型3体はその異常事態に慌ててアジトから回廊に飛び出した。
その様子に黒「め」の97番は混乱するだけで、まだ状況が飲み込めていなかった。
そして扉から顔を出し、なぜナンバー8が負傷に至ったのか、その理由を瞬時に理解した。

「やばい、やばい!
なんで人形があんなに沢山いるんだ!」

 アルファニクを始め愛砢人形ラブラドールは、同じDNAを弄った素体から生まれている。
そのため、愛砢人形ラブラドールは全員姉妹のように似ており、その正体を知る者には容易に見分けがつくのだ。
しかも数が多すぎた。
敵の人形はこちらの5倍以上はいるようだった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 敵のアジトへと至る回廊に突入したカナタたちだったが、その回廊の狭さと自らの人数の多さに行動の自由を奪われていた。
回廊は人が5人並べる程度の幅であり、高さも3mぐらいしかなかった。

「ニクとゼータ5、6、7が前に出て次元空間壁を展開して!
各チームメンバーはその後ろに入って前進する!」

 カナタの命令でフォーメーションが築かれる。
4人を先頭にそれぞれ5人縦隊となり、中央後ろにカナタとイータが続く。
と、時を同じくして敵のアジトから獣型3体が飛び出してきた。
その姿を見て、カナタが素早く指示を出す。

「虎は狙撃型だ。荷電粒子砲を撃って来る。警戒しろ。
豹は防御型だ。次元空間壁を展開できる。奴を先に狙え!
型は速度型と思われる。格闘戦になったら全員でボコれ!
対応は各自の判断に任せる!」

 そのカナタの声は獣型にも聞こえていた。
狼型の46シロは犬と間違えられて要らぬダメージを受けた。

「行きます!」

 アルファニクの全体指揮により、荷電粒子砲を撃てる全愛砢人形ラブラドールが次元空間壁の隙間から獣型に一斉射撃をした。
虎型の39サクと狼型の46シロは豹型の44ヨシの後ろに慌てて入ると、その次元空間壁に守られる。
しかし、豹型の44ヨシの次元空間壁は負荷により消滅し、豹型の44ヨシは全身に荷電粒子砲を浴びて倒れ伏した。

 その様子を見た虎型の39サクと狼型の46シロは、豹型の44ヨシの後ろから飛び出すと、射線から外れた唯一の場所、天井付近の左右のに分かれて壁を走り出した。
荷電粒子砲の発射には一瞬のクールタイムがある。それを狙っての行動だった。
一斉射撃故の僅かな隙だった。

 虎型の39サクが荷電粒子砲を撃ち込み牽制する。
撃っているうちは、その射線に出て来るバカはいないだろうからだ。
狼型の46シロは加速装置を使い、射線をギリギリで避けることを選んでいた。
目的は一緒。敵の懐に入れば敵側は味方に当たることを懸念して荷電粒子砲を撃てなくなる。
混戦に持ち込み、その獣型故の膂力を解放するしか勝機はなかったのだ。
しかし、回廊はあまりにも長かった。

「わう!」「がう!」

 デルタの放ったミサイルが虎型の39サクと狼型の46シロの直ぐ側で爆発し、2体は回廊の床に転げ落ちた。
直撃して爆発するよりも、これは避けることが出来なかった。
そこに何本もの荷電粒子砲が撃ち込まれる。
もはやクールタイムの暇もないタイミングをずらした釣瓶撃ちだった。
哀れ虎型の39サクも狼型の46シロも、その性能を発揮する暇もなく倒れた。

とどめ!」

 ニューとミュー、ミュー2、4、5、6が簡易加速装置を使い獣型3体にそれぞれ2人ずつで接近し、首筋に次元ブレードを突き立てた。
これにより獣型はその機能を完全に停止した。

「奥にまだ1体いるはずだ。
おそらく負傷した男型だ。
警戒を怠らずに突入しろ!」

 カナタの命令で愛砢人形ラブラドールが次々とアジトへと突入する。
アジトの入り口扉は、荷電粒子砲の射線に入ったため、その流れ弾により破壊され、そこには黒ローブを纏った男がボロボロになって倒れていた。
黒「め」の97番だ。
彼は最初の一斉射撃の流れ弾でその生涯を閉じていた。
あの時、転移の魔導具で逃げれば良いとアドバイスしていれば状況は違っていたかもしれなかった。
無駄なプライドでアドバイスを怠ったため、黒「め」の97番は命を落とすこととなったのだ。

 そして、ナンバー8は……。

「どうやら、ここで治療をしようとしたけれど、無駄だったようです」

 イータの診断によりナンバー8の肉体の・・・死亡が確認された。
その遺体は右腕が肩から捥げ、右脚も腿から焼け焦げて膝から先は無かった。

「しかし、システムは生きてます。
どうしますか?」

 獣型のシステムは豹型以外の2体、虎型と型のものは回収されていた。
豹型は全愛砢人形ラブラドールの一斉射撃を受けたためシステムまで破壊されていたのだ。
しかし、虎型と犬型のシステムは機能停止していたが確保できていた。
動いているのはナンバー8のものだけで貴重だった。

「敵を知る貴重な資料となるだろうから回収する。
仕方ない。抉り出してくれ」

「はい、マスター」

 イータには酷かもしれないが、ナンバー8は既に亡くなっていたため、外科手術による回収をお願いした。
イータは気にせず作業を全うしてくれた。
カナタはイータの心の傷が気になったが、イータ本人は気にしていないようだったのが救いだった。

「何か異様ですね」

「そうだね……」

 その生きている改悪システムは異様な波動を発していた。
カナタは気味が悪いと思いながら、それを【ロッカー】に仕舞うのだった。

「ここに残っていた資料は回収しといたわよ」

 ミューがアジトの戸棚を漁って、一切合切回収していた。
さすがミュー。抜かりが無い。

「ありがとうミュー。よし撤収しよう」

 カナタたちはガンマ1とシータの復讐を果たし、ガーディアの工房へと【転移】で撤収した。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「ありゃ? やられちゃったか……」

 「ろ」組に戻って本部と繋ぎをつけた黒「ろ」の23番は、迷宮20階のアジトへと【転移】の魔導具で戻って来ていた。
その目の前には胸を切り裂かれ制御核を抜かれたナンバー8がベッドに横たわっていた。
ナンバー8は、黒「ろ」の23番がこの場を去った時のままの状態でこと切れていた。

「うーん。中級回復薬でも駄目だったのかな?
命の危険は脱したと思ったんだけど」

 ナンバー8は人間と男型愛砢人形ラブラドールのハイブリッドだったため、容体の見立てが通常の人とは違っていたのだ。

「ああ、こいつも駄目だったか」

 回廊への出入口には黒「め」の97番がボロボロの状態で倒れている。
おそらく次元空間壁に拡散された荷電粒子砲の流れ弾を受けたのだろう。
何か知っていたはずなのに、わざわざ口を噤んだこいつを哀れむ必要は無いなと黒「ろ」の23番は思った。

「となると……」

 アジトの外の回廊には獣型愛砢人形ラブラドールの黒焦げの遺体が転がっていた。
これも制御核を抜かれているようで、胸を開いた跡があった。

「本部からは、制御核だけは回収して来いって言われたけど、これじゃあ無理だわ。
長居は無用。さっさと逃げるか」

 黒「ろ」の23番は、長文の報告書を書かなければならないと思い溜め息をつきつつ、「ろ」組へと【転移】の魔導具で帰還した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

お知らせ

 次元空間壁と次元防御壁という記述が混在していました。
次元空間壁が正解です。

171、196、198、199を修正しました。
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