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テスト勉強を全力で邪魔しに来る奴①
しおりを挟む夏休み前のテスト前日になった。時刻は午後11時。もうすぐ当日になる。
テスト勉強もいよいよ追い込みの時期に入ったのだ。
「くっそお……。やっぱり物理学がやべえ……」
俺は寝間着姿で、ずっと自室にこもって勉強に励んでいた。
明日、行われるテストは英語と国語と現代社会で、どれも得意科目。
2日目の教科も、そこそこ得意としているものばかり。
問題は3日目の物理学と数学だ。
「何でこう……イチイチごちゃごちゃした公式があるんだよ……」
俺が頭を掻き乱していると、折り畳み式の円卓の上に、スーッと何かがスライド移動してきた。教科書やら参考書やらが広がった円卓の上に現れたのは、雛人形……マコであった。
「頑張ってますねー、堂本さん」
言うと、マコは縦に振動しながらギョホギョホと陽気に笑った。
(出たよ……)
今、最も現れてほしくないモノ部門、第1位。
今、最も抹消したいモノ部門、第1位。
今、最もウザいと思うモノ部門、第1位。
今、最も爆破してみたいと思うモノ部門、堂々の1位。
四冠王が来ました。
「いやー、テスト勉強ですか。懐かしい」
マコはお行儀良く座った状態のまま、スーッとスライド移動して、俺の手元で開かれた教科書のもとへ来る。
「おまえな……目障りだからジイちゃん家に居ろって」
「堂本さん。テスト勉強として捉えるから苦痛に思うんですよ」
人の話を聞け。
「もっとポジティブに考えましょう。テスト『勉☆強』って、間に『☆』を入れたりすれば楽しくなってくるはずです」
楽しくなるか。
「もー、堂本さんってば。さっきから苦虫を噛み潰したような顔してえ。もっと私が来たことに喜んだらどうですか? お祝いにプチパーティを開いたりしてみてはどうですか?」
こちとらテスト勉強で忙しくてそんな暇無いんだけど。
見れば分かるよね。そもそも嬉しくも何ともないし。
「何ですかその塩対応は。堂本さんってツンデレだったんですね」
いや本音が表情に出てるだけだよ。隙あらば『爆☆破』したい気持ちが溢れんばかりにあるわ。
「ああなるほど。私が日帰りのワイハ旅行に行っていた間、寂しかったんですね」
……わ……ワイハ行っとったんかコイツ。
マジか。
こっちが必死になってテスト勉強しとる間にワイハで眩い日光浴びとったんかコイツ。
マジか。
「ツンデレの堂本さんがテスト勉強に集中できるよう、私が歌ってあげます」
止めてくれ。極力止めてくれ。まあ、歌うとか冗談だろうけど、
「ララ~♪」
マジで歌うんかいぃ。止めてえ。頭に詰め込んだ物理学の知識が物理的に吹っ飛ぶから。
「ふ~。やっぱり歌うとストレス発散できますねえ。ふ~」
いや『ふ~』じゃなくて。おまえがスッキリしたところでこっちにはマイナスしか生じねえんだよ。いいからさっさとジイちゃん家に消えてくれ。
「ふふっ。堂本さんがもっと勉強に集中できるよう、私がこれから特別な『おもてなし』をしてあげます」
すると、マコはコホンと咳払いをした。
「お・も・て・な・し」片言の日本語で言うと、マコはギギギ……と軋み音を鳴らしながら、両手を合わせた。「オモテナーシ」
マコは両手を合わせたまま、ゆっくりとお辞儀した。
(……また古いネタを……)
反応に困る俺を見てか、マコは「おや」と首を傾げた(軋み音はセットで)。
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