心障ニート狂想曲

F星人

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ミナミが悪い。

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「あーいう力仕事してる人って惨めだよね。ちゃんと勉強しないからそうなるんだよ」

  ……え?

「絶対ああはなりたくないよ。そういう意味では見るたびに勉強になるかな?」

 ミナミの発言が信じられず、俺は歩く力さえなくなっていた。

 立ち止まった俺に合わせて、ミナミも立ち止まる。

「どしたの?」

「……ホントにそう思ってるのか?」

「何が?」

「今の……」

「今のって?」

「だから、ああはなりたくないとか……」

「そりゃそうじゃん。あんな惨めなお仕事したくないもん」

 俺は驚いたというか、何だろう。

 信じられなかった、という表現の方が正しいのだろうか。

 ミナミが言っていることが全く理解できず、頭の中がぐちゃぐちゃになって……。

 その辺の空間が歪んで見えるほどショックを受けていた。

「それ……おかしいって……」

 俺が絞り出した言葉がそれだった。

 大きな動揺で、自分が弱っているのが分かった。

「あの人たちだって、必死で働いてるっていうか……」

 すると、ミナミは珍しくムッと表情を険しくした。

「なに? 何が言いたいの?」

「馬鹿にするようなことは良くないっていうか……」

 今もそうだけど、その時の俺はもっと未熟で、気持ちをうまく言葉に表せずにいた。

「普通に働いてる人たちなんだから……」

「なに? さっきから何が言いたいの? 何でミナミが悪い感じになってるの?」

 ミナミは口調を強める。

「全然分かんないんだけど、ミナミは本当のこと言ってるだけだよ?」

「本当のことって……」

「本当のことでしょ?」

 ミナミの勢いは止まらなかった。

「普通に勉強して普通の大学に入って普通に就活すればああいうことにはならないじゃん!」

「でも……」

「でもなに?」

 パッと反論の言葉が浮かばなかった。

 もどかしい気持ちでいっぱいだった。

「働きたくなくて働いてないミナミに、そんなこと言う資格は無いんじゃないかって……」

 フッと、ミナミは鼻で笑った。

「そんな資格無いでしょ? あったら取ってるよ。どこで取れるのか教えてくれる?」

「そういう意味で言ったんじゃなくて……」

「どういう意味なの? 全っ然分かんない! もういい!」

 ミナミは強い歩調で池袋駅の方へ歩いて行った。

 ミナミはすぐに人ごみの中に姿を消していった。

 俺はクマのヌイグルミを片手に、突っ立つことしかできなかった。

『彼ら』の正しさを表現できなかった、悔しさと共に。

 

 
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