心障ニート狂想曲

F星人

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ついに人生初のバイト

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 2018年、六月二十日(水曜日)。

 ついに、ついに人生初のバイト初日が訪れた。

(ああ、緊張する……)

 バクバクはしない程度に心臓が強く鼓動している。

 高校三年目にして初めて海南大附属高校への挑戦権を得たスラムダンクのゴリもこんな気持ちだったんだろうか。

「やるっきゃない……」

 俺は白シャツの上に紺色のパーカーを羽織り、下は黒ズボンで新宿歌舞伎町に来ていた。

 そしてCホテル付近のゲーセンの中で、ワイパックスを飲む。

「よし、行くぞ……」

 約束の十時まであと五分のところで、俺はホテルの裏口まで来た。
 そこから、らせん階段を上がって、前に面接をした部屋に入る。

「……あれ、ここで良いんじゃなかったっけ……」

 中には誰も居なかった。相変わらず二リットルの天然水が詰まった段ボールや、布団、枕、毛布が場所を取って狭い。

「奥に入れば良いのかな……」

 奥の扉を開けて、中に入った。

 奥の部屋は、毛布や布団の類は無いが、物置という感じだ。

 貴重品を入れるための白いロッカーが一番最初に目に入った。ロッカーは一つ一つが小さい。その四方は二十センチあるかないかくらい。

 細かく見る余裕が無かったため、他にある物は何がなんだか分からなかった。

「あら和泉いずみさん?」

 沢井さわいさんが言った。扉のすぐ近くに居たため、気づかなかった。

 沢井さんはデスクに置かれたノーパソの前で座っている。今日も白シャツに黒めのズボン。ここで働く人はそれが正装らしい。

「遅いじゃない? もう十時よ?」

「え、でも……」

 十時に来いって言われたんですが。

「遅刻はダメよ。ちゃんと時間通りに来てもらわないと――」

「沢井さん、和泉さんは10時に来るように言われてましたよ」

 と、男が割って入ってきた。

 サヤシさんだった。こちらも白シャツに黒ズボン。

「沢井さんが十時にくるようにおっしゃってました」とサヤシさん。

「あらそうだった? ごめんね和泉さん」

 いえ、と俺は笑っておいたが、ちょっとイラッとしていた。
 一ヶ月前とはいえ、あんたが忘れてどうすると。

 でもサヤシさんが助けてくれるとは思わなかった。俺の事敵視してる感じだったし。

「じゃあそこのロッカー……十三番が空いてるはずよ。そこに貴重品を入れて」

「あ、はい」

「もしもの時の連絡取るために必要だからスマホは持っておいてね」

「分かりました」

 俺はロッカーに財布と時計、マンションの鍵を入れておいた。カバンはロッカーの上に置くように指示されたので、その通りにした。

(やっぱり敵視してるよなあ……)

 ロッカーに貴重品を入れている間にも、サヤシさんが俺をよくない目で見ているのが分かった。

『とりあえずそのサヤシさんには、まず第一にキミの年齢を伝えてあげて』

 ドクター中田はああ言っていたけど……。それが何を意味するんだろう。

「じゃあサヤシくん、和泉さんにいろいろ教えてあげてね」

 言うと、沢井さんは部屋から出て行った。

 

 
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