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東京って恐いところだなぁ
しおりを挟む「夜、新宿駅前でスマホいじってたら、知らない女の人に話しかけられて」
うんうん、と俺は鞘師さんの話の続きを待つ。
「僕が『誰ですか?』って聞いたら、『なに知らないフリしてんの? 約束したでしょ? 私の顔見て判断したでしょ!』って腕を掴まれて」
「え、こわっ……」
でしょー、と鞘師さんは眉をひそめる。
「『キャンセル料取るから!』って、女の人が僕のポケットに手を突っ込んで財布を盗もうとしてきて」
「え? え? マジですか?」
「はい、僕は振りほどいて、近くの人に『警察呼んでください』って助けを求めて事なきを得ました」
「恐ろしいですね……。何だったんですか、その人は?」
「警察に聞いたんですけど、その女の人、出会い系サイトで男の人と会う約束してたらしいんですよ」
また出会い系サイトか。
ミナミも言ってたな。
東京じゃ登録してる人が多いのか?
「その約束した男と僕の服装が同じだったみたいで。なんで同じか分かったっていうのは、約束した男が待ち合わせ場所に『こういう服装で行く』って女の人に伝えてたから、です。お互い顔も知らないまま会う予定だったらしいから」
「な、なるほど、その服装が、偶然鞘師さんと同じだったんですね」
「はい、勘弁してよって話ですよ」
やれやれといった感じで鞘師さんは言った。
「でも会う約束しただけで財布盗もうとするって変ですよね」
俺が聞くと、
「いえ、どうやらその女の人、男の人とホテルで『アレコレ』してお金を貰う約束してたらしいです」
何秒か、俺の思考は止まっていた。
「……ん? ええと、つまり、男にお金を貰う代わりに、『そういうこと』をしようって約束してた……と?」
「らしいです。向こうもお金に困ってたんでしょうね。約束をキャンセルされたら困るって。いやもう鬼のような形相で僕に迫ってきて恐かったですよ……」
「さ、災難でしたね……」
「僕の人生でトップスリーに入ります」
俺と鞘師さんは引きつった顔で笑いあった。
「和泉さんはラッキーでしたね。軽傷で済んで」
「いや、ホント、今の話を聞いて思いました!」
マジで危なかったな……。
もし、ミナミじゃなくて、鞘師さんが遭遇したような女性だったら……。
俺のメンタルは持ってなかったと思う。
そう考えたらミナミはまだまだカワイイ方だったのか。
「気を付けます」
「本当に気をつけて下さいね」
はい、と俺が返事したところで、時間が来た。
時刻はお昼の12時。
今日はお昼過ぎからの仕事を覚えることになっているのだ。
「じゃあ、新たにリネンのお仕事を教えますので」
「待ってました!」
俺がそう言うと、
「今の『マグマダイバー』のアスカですか?」
「分かっちゃいます?」
俺たちはエヴァンゲリオンの話で盛り上がりつつ、事務所を出た。
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