最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
26 / 280
一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

25 聖女さん、状況考察

しおりを挟む
「二人共、お怪我は無いですか?」

「ん、俺は全然大丈夫」

「私も全然平気」

 各々魔物を倒した私達は、そういう風に声を掛け合いながら合流する。
 二人共涼しい顔をしている辺り、本当にウォーミングアップって感じの戦いだったんだと思うよ。
 私もそうだしね。
 いい運動になった。

 ……でも平気なのは私達に限ってはの話で。

「で……結局何だったのかな?」

 種族も何も関係なく、徒党を組んで攻めてきた魔物達。
 今こうして起きていた不可解な現象は、軽くスルーしちゃいけない一件だと思う。

「……気のせいかもしれねえけどさ、さっきのオーガとかすげえ目が血走ってた気がするんだよな。そもそも正常な状態じゃなかったっていうか……」

「え、ほんと? 勢いで顔面ぶん殴ったから気付かなかった」

「凄い勢いでしたもんねアンナさん」

「横目で見てたけどすげえワイルドな一撃だったな」

「いや、ワイルドさで言えばステラも凄かったでしょ」

 ほんとワイルドの塊だったよね。

「お、おう……喜んでいいのか分からねえな。女の子っぽくねえし……」

「ちなみにだけどその言葉私にもかけてるからね」

 直前に言われてるからね私。

「わ、悪い」

「いいよ。私は普通に気にしてないから」

 そもそも誉め言葉で言われてる事は分かってるから。

「しかし女の子っぽくないか……この中で現状一番戦い方が女の子っぽかったのってシルヴィになるのかな」

「じ、自分で言うのもなんですけど、私のも大概だと思いますよ……」

「まあ比較対象私達だからね……こう言っちゃなんだけど、いないでしょ。この中で女の子っぽいファイトスタイルしてる人って」

「そもそも冷静に考えて女の子っぽい戦い方ってなんだよ」

「ほら、例えば……例えばだよ……えーっと……ヤバイ具体的な案が出てこないや。もしかして私達女子力低い?」

「こんな事に女子力も何も無いと思いますけど……まあ私達みたいな戦い方じゃない人達が女の子っぽいって事ですかね?」

「それだ!」

 知らんけど。
 ……まあそれはその内雑談で続きをやるとして。

「で、一応の答えが出た所で……話、戻そっか。随分と脱線したし」

「そうだな……で、もしかしてコイツら、誰かに操られでもしてたのか? なんか正気じゃなかったみてえだし」

「それなら色々納得行きますね、そうでもないと色々な種族が徒党を組んで、なんて事はないと思いますから」

「でもだとしたら……誰がなんの為にそんな事を?」

「……わっかんねえな」

「検討……付かないですね」

 誰もそんな事は分からない。
 各々唸りながら首を傾げるだけ。
 ……うん、分からない。何が起きてるんだろ。

 こんな事が可能な程強い新手の魔物がこの辺りに住み着いたか……それとも人為的なものか。
 いずれにしても放置しておくと色々と面倒な事になりそう。

「なーんか薬草採取に来ただけの筈なのに、ちょっとした事件に片足踏み入れてる気がするね」

「言う程ちょっとしたかこれ?」

「ちょっとした……だったら良いんですけどね」

「ま、考えても仕方がないし……今はとりあえず先に進もうか」

「そうだな」

「何かが起きてたとしても、私達の目的自体は変わらないですからね」

「まあやる事は増えるかもしれないけどね」

 そんな訳で此処で悩んでいても仕方がないから、私達は先に進む事にしたのだった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...