最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

36 聖女さん、トラップ解除

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「……しっかしこの悪路でこういう罠張られてるってのは面倒だな」

「潜り抜けようとして足でも滑らせたら発動しちゃいますからね……ちょっと迂回しようにもよく見たらそこら中に張られてますからね」

「うわ、ほんとだ」

 シルヴィの言う通り、糸の罠は目の前の物だけじゃなかった。
 此処から先に進むために通れそうな所の全てに緻密に罠が張られている。
 これは……うん、潜り抜けて進むのは本当にだるい。

 いっその事この道を通らずに飛んで一気に上まで……ってのも考えたけど、そもそもこれやってる奴が上に居るのかって言われると分からないし、罠が張られて無さそうな高さまで飛んでこの先に進むってのも一つの案だけど、それだと私しか進めない。
 シルヴィはそもそも飛べないし、ステラは飛ぶとなんか山火事起きそうだし。

 ……というかこれだけ緻密な罠を張れる相手が、無理矢理飛んで超えてくる奴への対策をしていないとも限らない訳で、そういうやり方は保留。
 だとしたらやるべきなのは正攻法だ。

「……じゃあ罠、解除して進もう」

 そう言って私は一歩前に出る。

「そ、そんな事できるんですか?」

「シルヴィは知ってるでしょ? 私元々魔術の研究やってたからさ。やってみなきゃ分からないけどやれるかもしれない」

「あ、えーっと……人に見られたらマズイ研究以外にも、こういう普通に役立ちそうな研究もしてたんですね」

「まだ誤解解けてない!?」

「え、なんだよそのマズイ研究って……つまりマッドサイエンティストって奴か?」

「はいまた誤解広がった! ……違うからね、別にヤバい研究とかはしてないからね絶対に!」

 誰がマッドサイエンティストだ!

「あはは、分かった信じるよ」

 ……本当に? 本当に信じてる?

 ……ま、まあシルヴィにもステラも、また家に呼んで今度はちゃんと誤解を解こう。
 うん、絶対に。

「き、気を取り直して罠の解除始めるよ。ちょっと待ってて」

 二人にそう言ってから魔術の糸に手をかざし、私オリジナルの解析魔術を発動させる。

「なるほど……へー、随分とニッチでマイナーな術式構成してるね。え、あーそう来たか。これはちょっと良い勉強させて貰ったね。でもそう来たならここをこうして……うっわガッチガチにプロテクトされてんじゃん。でも甘いよ。これはこうすれば突破できるんだよねー」

 そうして格闘する事約5分。

「っしゃあラストスパート! ここをこうして、この術式流し込んで、最後に中核をぶっ壊せば……よっしゃあ解除完了私の魔術研究の大勝利ィ!」

 罠の解除を終えた私は思わずテンションマックスで空に向けて手を突き上げていた。
 いやー良い勝負でした。
 対戦ありがとうございまーす!

 ……さてと。

「二人共、終わったよ」

 そう言って振り替える。

「おう、お疲れ」

「お疲れ様ですアンナさん」

 二人はそう言ってくれたけど、ステラから余計な一言が一つ。

「ちょっとマッドな片鱗見せたな」

「えぇ……」

 確かにちょっとテンション上がったけど、なにそんな風に見えてたの!?

「でもまあ個性的で良いと思うぜ」

「フォローが適当だ!」

 ま、まあそれはともかく。

「と、とりあえず注意は必要だけど、この先の同系統の罠は全部破壊したよ」

「え、全部ですか?」

「一回やれば種が分かるとはいえ、毎回毎回時間掛けてられないしね」

「簡単に無茶苦茶な事言ってくれてる気がするのは俺だけか?」

「そんなに無茶苦茶な事じゃないよ」

 そう言って私は二人に軽く説明する。

「一ヶ所一ヶ所別々に魔術を展開すると時間と労力も掛かるけど、何より維持が大変になってくる。これだけ緻密な構成してると尚更ね。だけど一つの術式として管理すれば規模は大きくても一つ管理すればそれで維持できる分運用しやすい。今回の罠の術式もそういうタイプ」

 だけど。

「だけどその運用の仕方にはデメリットが合ってね、結局全部の罠を一括で管理しているから、どこか一ヶ所を解析されて乗っ取られると一気に全部持っていかれる。つまり芋づる式に全部破壊できるんだ」

「なるほど、それで全部壊せたんですね」

「まあさっき言った通り注意は必要だけどね。この術師の張った罠は壊したけど、他にも別の魔術師が罠張ってるかもしれないからさ」

「確かに向こうが何人居るか分からねえからな」

「そういう事。まあこの人一人でかなり広い範囲に罠を張り巡らせていたから、この人だけがそれを担当してる可能性が高いと思うけどね。それでも十分機能するんだろうけど……残念、相手が悪かったね」

 そう言ってちょっとドヤってしまう。
 流石に魔術関連は私の専門分野だから、完全勝利でちょっと気持ちが良いんだ。

「まあこれは本当にドヤっていい奴だな。俺にはこういう難しいのは絶対無理だ。正直あんまり頭良い方じゃないからな」

「でも今まで聖女として色々な魔術を覚えたりする必要があったと思うんですけど、そういうのをちゃんとこなせてる時点でステラさんも頭良い部類に入るんじゃないですか?」

「いや、俺は完全に直感で今までやってきたからさ、あんまり深い事とか考えてなかったんだよ」

「簡単に無茶苦茶な事言ってくれてる気がするのは私だけ?」

「……アンナさん、私も同感です」

 ……いやいや、直感でこれまでやって来たって……えぇ……。

 と、そんな風にステラの驚きの一面が垣間見えた次の瞬間だった。

「……ッ!」

 私は半ば無意識に斜め上に直径1メートル程の大きさの結界を張る。
 次の瞬間、高速で飛来した何がが着弾。
 超小型の物ではないとはいえ、それなりに硬度を引き上げている筈の結界に僅かだけどヒビが入った。

「お、おいアンナ! 大丈夫か!?」

「け、結界にヒビが……」

「……大丈夫、罠が駄目なら直接って訳ね」

 敵の姿は見えない。
 見えない所から魔術で狙撃された。
 ……でも狙撃の方角と角度からある程度の位置情報は割り出せる。

「……上等じゃん」

 だったらここからやる事は一つだ。
 シンプルに行こうよ。
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