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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。
39 黒装束の男、交渉
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「いや、こちらこそ……すまない事をした」
構えた刀を下げて黒装束の男が謝ってきた。
状況が状況だから隙が大きくなる会釈はしてこないけど、私が構え解いてたら普通に頭下げてきそう。
なんというか……さっきまでとあまりに雰囲気変わり過ぎて私が困惑するよこんなの。
「……多分だけど、普通に咎められるような事をやってるよね? そんな事してる人が素直に謝るんだ」
「確かにやっている事は咎められるような事だ。少なくない人数の人間を危険に晒すかもしれない。だが本来巻き込まれる筈では無かった人間をこちらの勘違いで危険に晒したのならば、ただでさえ無いに等しい大義名分は微塵にも無くなってしまう。そうなった時に謝罪の一つもできないような人間は道徳的にどこかおかしいとは思わないか?」
「現在進行形で咎められるような事を自覚ありでやってる人が道徳云々言ってる方がおかしくないかな……」
なんか色々と歪な気がするけど。
「……ぐうの音も出ないな。間違いなくその通りだ」
……認めるんだ。
そしてそれを認めた男は仕切り直すように言う。
「とにかく、歪ではあるが謝罪する意識はある。だから……此処は俺達が譲歩する」
「……譲歩?」
「何も見なかった事にして此処から立ち去れ。そうすればこちらからはお前達に危害は加えない」
確かに言っている事が本当なら凄い譲歩だ。
「……凄い譲歩するじゃん。見られたらまずい事してて不意打ちまでしてきたのに。私達を帰して誰にも何も言わない保証は無いよね……敵みたいな立場の私が言うのもなんだけどさ、リスクマネジメント無茶苦茶じゃん」
「それでも、俺のやった事はそういうリスクを抱えても仕方が無い事だ。越えてはならないラインを越えたのなら、それ相応の不都合には目を瞑らないといけない。正直被りたくは無いが、そのリスクは被ろう」
……直感だけど、声音や仕草から嘘を言っているようには思えない。
だとしたら……この人悪人向いてなさすぎる!
そして悪人に向いていない黒装束の男は聞いてくる。
「それでどうだ……退いてくれるか? 退いてくれ……何度も言うが無関係な人間には極力危害を与えたくないんだ」
「……つまりこれ以上踏み込んだら仕方なく危害を加えるって事で良いのかな?」
「そうならないで欲しいが、つまりそういう事になる。俺達も引けないんでな」
なるほどね。
「それでアンタ達は一体何をやってたのかな?」
まあ退かないんだけど。
「退くつもりは無い……か」
「そりゃそうでしょ。こっちは狙撃までされてる訳だし、何もなかったなんて腑に落ちない終わらせ方はできない」
そして。
「それにアンタの言葉を借りるとすると、今日みたいな危険な真似をしている奴が居て、それを止められる力があるんなら、誰かが被害を受ける前に止めないと……道徳的にどこかおかしいでしょ」
「確かに……俺がお前ならそうする」
そう言って、黒装束の男は再び刀を構える。
「……残念だ。矛盾しているようだが、そういう答えを出せる人間なら尚更殺したくはなかったよ。だがそれでも……こちらの身勝手な行動の為に、此処でお前には消えてもらう」
「やれるもんならやってみてよ」
「やれるさ」
そう言って男の背後に再び紫色の魔方陣が展開される。
「何せ俺には聖女の加護が付いてるんだから」
「……は?」
今この人……なんて言った?
聖女の……加護?
「ちょ、今なんて--」
私の言葉にもう男は答えない。
次の瞬間、黒色の弾丸が射出される。
構えた刀を下げて黒装束の男が謝ってきた。
状況が状況だから隙が大きくなる会釈はしてこないけど、私が構え解いてたら普通に頭下げてきそう。
なんというか……さっきまでとあまりに雰囲気変わり過ぎて私が困惑するよこんなの。
「……多分だけど、普通に咎められるような事をやってるよね? そんな事してる人が素直に謝るんだ」
「確かにやっている事は咎められるような事だ。少なくない人数の人間を危険に晒すかもしれない。だが本来巻き込まれる筈では無かった人間をこちらの勘違いで危険に晒したのならば、ただでさえ無いに等しい大義名分は微塵にも無くなってしまう。そうなった時に謝罪の一つもできないような人間は道徳的にどこかおかしいとは思わないか?」
「現在進行形で咎められるような事を自覚ありでやってる人が道徳云々言ってる方がおかしくないかな……」
なんか色々と歪な気がするけど。
「……ぐうの音も出ないな。間違いなくその通りだ」
……認めるんだ。
そしてそれを認めた男は仕切り直すように言う。
「とにかく、歪ではあるが謝罪する意識はある。だから……此処は俺達が譲歩する」
「……譲歩?」
「何も見なかった事にして此処から立ち去れ。そうすればこちらからはお前達に危害は加えない」
確かに言っている事が本当なら凄い譲歩だ。
「……凄い譲歩するじゃん。見られたらまずい事してて不意打ちまでしてきたのに。私達を帰して誰にも何も言わない保証は無いよね……敵みたいな立場の私が言うのもなんだけどさ、リスクマネジメント無茶苦茶じゃん」
「それでも、俺のやった事はそういうリスクを抱えても仕方が無い事だ。越えてはならないラインを越えたのなら、それ相応の不都合には目を瞑らないといけない。正直被りたくは無いが、そのリスクは被ろう」
……直感だけど、声音や仕草から嘘を言っているようには思えない。
だとしたら……この人悪人向いてなさすぎる!
そして悪人に向いていない黒装束の男は聞いてくる。
「それでどうだ……退いてくれるか? 退いてくれ……何度も言うが無関係な人間には極力危害を与えたくないんだ」
「……つまりこれ以上踏み込んだら仕方なく危害を加えるって事で良いのかな?」
「そうならないで欲しいが、つまりそういう事になる。俺達も引けないんでな」
なるほどね。
「それでアンタ達は一体何をやってたのかな?」
まあ退かないんだけど。
「退くつもりは無い……か」
「そりゃそうでしょ。こっちは狙撃までされてる訳だし、何もなかったなんて腑に落ちない終わらせ方はできない」
そして。
「それにアンタの言葉を借りるとすると、今日みたいな危険な真似をしている奴が居て、それを止められる力があるんなら、誰かが被害を受ける前に止めないと……道徳的にどこかおかしいでしょ」
「確かに……俺がお前ならそうする」
そう言って、黒装束の男は再び刀を構える。
「……残念だ。矛盾しているようだが、そういう答えを出せる人間なら尚更殺したくはなかったよ。だがそれでも……こちらの身勝手な行動の為に、此処でお前には消えてもらう」
「やれるもんならやってみてよ」
「やれるさ」
そう言って男の背後に再び紫色の魔方陣が展開される。
「何せ俺には聖女の加護が付いてるんだから」
「……は?」
今この人……なんて言った?
聖女の……加護?
「ちょ、今なんて--」
私の言葉にもう男は答えない。
次の瞬間、黒色の弾丸が射出される。
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