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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
8 聖女さん、尋問開始
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私に腕を掴まれた男は軽く振りほどこうとするけど、離すつもりは無い。
そっちが力を入れたら、その分こっちも力を入れる。
その腕は離さない。
私は男の腕を掴んだまま、小声で言う。
「……アンタに色々と聞きたい事があるんだけど。時間貰えるよね?」
そして数秒の間硬直状態に陥っていた私達だけど、元黒装束の男が観念したように言う。
「ごめんごめん態々来てもらって。ちょっと準備に手間取って。さ、行こうか」
そう言った後、私にしか聞こえないような小さな声で言う。
「場所を移そう」
「力付くで抵抗したり逃げたりしないんだ」
「俺達がそれを始めれば、周囲に大きな影響が出る。あれだけのスピードで動く人体などただの凶器だぞ。それは駄目だ。観念する。不本意だが少し話をしよう」
……本当にコイツ、人の事殺しに来てた癖に凄いまともな事言うよね、うん。
「……分かった。そうしよっか」
そしてそれに私も同意する。
此処はもう人がいない山の中じゃない。
王都。人が溢れる中心で……殆どの人が戦う力の無い人達。
もし此処で私達がガチで戦い始めたり、追いかけっこを始めたりとなると、それに巻き込まれて怪我人とか……下手したら死人が出かねない。
だから、ここは大人しく同意する。
「では移動しよう。逃げるかどうか不安なら腕はずっと掴んでいればいい」
「じゃあそうするよ。で、移動ってどこに?」
「良い所がある。そこなら人目をあまり気にせず落ち着いて話ができる」
そして男は歩き出し、私も男の腕を掴んだままその後ろを歩く。
背後から「凄い美男美女のカップルだ」とか聞こえて来たけど、違うよ馬鹿か!
美男美女って事しかあってないよ! そこはちょっと嬉しい!
……とまあそのまま細い裏道を進んでいく事数分。
「此処だ」
「え……どんな所に連れていくのかと思ったら……普通の喫茶店?」
「さっきも言った通り戦えば被害が出る。だからお前が最初に提案した通り俺達がやるべきなのは話し合いだ。穏便な物になるかどうかは分からないが……とにかく、話し合いにはこういう場所が適切だろう」
「……ごもっとも」
私達二人は小ぢんまりとした、隠れ家的喫茶店に足を踏み入れる。
そして奥の席へ。
「代金は俺が持とう。好きな物を頼むと良い。ああ、お勧めはチョコレートケーキだ。中々レベルが高いぞ」
「そりゃどうも」
……うーん、しーちゃんの所で食べるつもりだったけど仕方ないか。
何も頼まない訳にもいかないし。
「でも自分の分は自分で払うよ。こう、買収されてる感じで嫌だし」
「まあお前がそう言うなら無理強いはしない。気持ちは分かる。確かにあまり良い気分ではないな」
そんなやり取りを交わしたのち、私は勧められた通りチョコレートケーキとコーヒーを。
元黒装束の男はコーヒーを注文。
「勧めておいてケーキ頼まないんだ」
「悠長にケーキを食べるような気分だと思うか?」
「……確かに」
目の前の男にとっては今最悪な状況なんだろうし……そりゃゆっくりスイーツを食べる気にはならないよね」
「……勧めておいてなんだが、お前も多分これから大事な話を切り出そうとしているだろうに、よく普通にケーキなんて頼めるな」
「そう思うんなら進めないで欲しいんだけど……」
「あとこれは本当にただのお節介なんだが、敵対している相手の用意した場所で不用意に飲み食いしない方が良いぞ? 店とグルで毒が盛られているかもしれん」
「……そのお節介もう少し早く言ってよ」
「すまない。普通にふと思い立って言っただけだからな。もし不安ならお前の注文した物は俺が食べよう」
「気分じゃないんじゃなかったの?」
「フードロスはあまり良くないだろう。それに、作ってくれた人への侮辱でもある」
すっごい真っ当な事言ってるよ相変わらず。
「……いいよ、私食べるから。自分で頼んだ物はしっかり責任を取るよ」
……多分だけど、本当にお節介で言っているような気がするしね。
「……いたちごっこになるからこれ以上は言わんが、もう少し警戒心という奴を持った方が良いぞ? 本気で相手を騙そうとする奴は、俺がしたようなお節介も騙す為の手段として利用するからな」
「ご忠告どうも」
と、そうこうしている内に注文した品が到着。
……まあこれはゆっくりと手を付けるとして。
「では本題に入ろうか。俺に聞きたい事があるのだろう?」
「そうだね」
そう言って私は魔術を発動し、私達のテーブルの周りを結界で覆う。
「防音効果が付与された結界か……この場所を指定したのは俺だ。話が始まれば俺が張ろうと思っていたんだが……助かる」
「どういたしまして」
……さて。
数日前に戦った相手への尋問を行うにしては、とても落ち着いて整った環境になってしまったけど。
なんか思ってたのと全然違う感じになったけど。
「とりあえず、話せる事を全部話してもらうよ」
尋問開始だ!
そっちが力を入れたら、その分こっちも力を入れる。
その腕は離さない。
私は男の腕を掴んだまま、小声で言う。
「……アンタに色々と聞きたい事があるんだけど。時間貰えるよね?」
そして数秒の間硬直状態に陥っていた私達だけど、元黒装束の男が観念したように言う。
「ごめんごめん態々来てもらって。ちょっと準備に手間取って。さ、行こうか」
そう言った後、私にしか聞こえないような小さな声で言う。
「場所を移そう」
「力付くで抵抗したり逃げたりしないんだ」
「俺達がそれを始めれば、周囲に大きな影響が出る。あれだけのスピードで動く人体などただの凶器だぞ。それは駄目だ。観念する。不本意だが少し話をしよう」
……本当にコイツ、人の事殺しに来てた癖に凄いまともな事言うよね、うん。
「……分かった。そうしよっか」
そしてそれに私も同意する。
此処はもう人がいない山の中じゃない。
王都。人が溢れる中心で……殆どの人が戦う力の無い人達。
もし此処で私達がガチで戦い始めたり、追いかけっこを始めたりとなると、それに巻き込まれて怪我人とか……下手したら死人が出かねない。
だから、ここは大人しく同意する。
「では移動しよう。逃げるかどうか不安なら腕はずっと掴んでいればいい」
「じゃあそうするよ。で、移動ってどこに?」
「良い所がある。そこなら人目をあまり気にせず落ち着いて話ができる」
そして男は歩き出し、私も男の腕を掴んだままその後ろを歩く。
背後から「凄い美男美女のカップルだ」とか聞こえて来たけど、違うよ馬鹿か!
美男美女って事しかあってないよ! そこはちょっと嬉しい!
……とまあそのまま細い裏道を進んでいく事数分。
「此処だ」
「え……どんな所に連れていくのかと思ったら……普通の喫茶店?」
「さっきも言った通り戦えば被害が出る。だからお前が最初に提案した通り俺達がやるべきなのは話し合いだ。穏便な物になるかどうかは分からないが……とにかく、話し合いにはこういう場所が適切だろう」
「……ごもっとも」
私達二人は小ぢんまりとした、隠れ家的喫茶店に足を踏み入れる。
そして奥の席へ。
「代金は俺が持とう。好きな物を頼むと良い。ああ、お勧めはチョコレートケーキだ。中々レベルが高いぞ」
「そりゃどうも」
……うーん、しーちゃんの所で食べるつもりだったけど仕方ないか。
何も頼まない訳にもいかないし。
「でも自分の分は自分で払うよ。こう、買収されてる感じで嫌だし」
「まあお前がそう言うなら無理強いはしない。気持ちは分かる。確かにあまり良い気分ではないな」
そんなやり取りを交わしたのち、私は勧められた通りチョコレートケーキとコーヒーを。
元黒装束の男はコーヒーを注文。
「勧めておいてケーキ頼まないんだ」
「悠長にケーキを食べるような気分だと思うか?」
「……確かに」
目の前の男にとっては今最悪な状況なんだろうし……そりゃゆっくりスイーツを食べる気にはならないよね」
「……勧めておいてなんだが、お前も多分これから大事な話を切り出そうとしているだろうに、よく普通にケーキなんて頼めるな」
「そう思うんなら進めないで欲しいんだけど……」
「あとこれは本当にただのお節介なんだが、敵対している相手の用意した場所で不用意に飲み食いしない方が良いぞ? 店とグルで毒が盛られているかもしれん」
「……そのお節介もう少し早く言ってよ」
「すまない。普通にふと思い立って言っただけだからな。もし不安ならお前の注文した物は俺が食べよう」
「気分じゃないんじゃなかったの?」
「フードロスはあまり良くないだろう。それに、作ってくれた人への侮辱でもある」
すっごい真っ当な事言ってるよ相変わらず。
「……いいよ、私食べるから。自分で頼んだ物はしっかり責任を取るよ」
……多分だけど、本当にお節介で言っているような気がするしね。
「……いたちごっこになるからこれ以上は言わんが、もう少し警戒心という奴を持った方が良いぞ? 本気で相手を騙そうとする奴は、俺がしたようなお節介も騙す為の手段として利用するからな」
「ご忠告どうも」
と、そうこうしている内に注文した品が到着。
……まあこれはゆっくりと手を付けるとして。
「では本題に入ろうか。俺に聞きたい事があるのだろう?」
「そうだね」
そう言って私は魔術を発動し、私達のテーブルの周りを結界で覆う。
「防音効果が付与された結界か……この場所を指定したのは俺だ。話が始まれば俺が張ろうと思っていたんだが……助かる」
「どういたしまして」
……さて。
数日前に戦った相手への尋問を行うにしては、とても落ち着いて整った環境になってしまったけど。
なんか思ってたのと全然違う感じになったけど。
「とりあえず、話せる事を全部話してもらうよ」
尋問開始だ!
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