最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

ex 受付聖女、尾行三人パーティー

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(アンナさんの知り合い……いや、どちらかと言えば男の方の知り合いっぽいっすかね)

 だとすればだ。

(なんだか修羅場の臭いがするっすよ)

 例えば男の方が二股を掛けているような、碌でもないタイプの修羅場が容易に浮かんでくる。

「あ、角曲がった。行くよシズクちゃん」

「あ、はい」

 そして言われるままに二人の後を着ける訳だが……流石に尾行で身を隠す手段など限られている訳で。

(な、なんか不思議な状況になったっすね……)

 見知らぬ女の子を一人迎えて二人を追う感じになった。
 となれば、流石に小声での最低限のコミュニケーションも生まれてくる訳で。

「えーっと……隣の男の人の知り合いっすか?」

「は、はい。そういうあなた達は、あの女の人のお知り合いですか?」

「友達っす」

「あ、ウチもそんな感じ。そっちは?」

「えっと……私、ルカ君の何って言えば良いんだろ」

 少し困ったようにそういう少女。
 はっきりとした答えは返ってきていない物の、これはどう考えてもそういう方向の関係性を築いているとしか思えなかった。

(こ、これはより一層修羅場感が増してきたっすよ! アンナさん! 手を出したのか出されたのかは分かんねえっすけど、かなりマズいっすよ!)

「ま、まあ私の事は良いです。あ、あの人とルカ君……ど、どういう関係なのかな?」

「ボク達も分からないから追ってる感じっす」

「分かんないけど……ウチは恋仲と見た」

「……ッ!?」

 シエルの言葉に少女が露骨にショックを受けたような表情を見せる。

「……じゃ、じゃあ、これってやっぱりデート中だったり……」

「そうじゃないかなって思ってるよ。あのイケメン高身長とあっちゃんだと凄いお似合い感もあるし」

 そしてなんだか泣きそうな表情を浮かべた少女は、一拍空けてから言う。

「た、確かにあの人可愛いし……る、ルカ君がそれで幸せなら……お、応援しないと……うん、それが、一番大事……」

 そういう少女はもう膝から崩れ落ちそうである。
 なんかもう、出会って早々見てられない感じになってる。

「げ、元気出すっすよ。まだ確定情報何もないんすから」

「う、うん……でも私ルカ君に一杯迷惑掛けてるから。そもそもまだ何か言えるような関係じゃないし……私なんかの事気にせず、幸せになってほしいなぁ……」

「……」

(こ、この子良い子だ! 絶対泣かせちゃダメなタイプのいい子っすよ! こんな子が居ながらあのルカって男は何やってんすか!?)

 具体的にこの少女とルカという青年の関係性は分からないけど、なんだか怒りが沸いて来る。

(く、くそ……なんか面白そうで尾行しちゃったっすけど、無茶苦茶厄介な展開になってきたっすよ!? これ何? ボクはどういうスタンスで見てればいいんすか!? 応援すればいいんすか!? どうなんすか!?)

 しかし考えても答えなんてのは出てこなくて、そしてゆっくり考える間も無く状況が変わる。

「あ、見て。あの二人なんかお店入るみたいだよ」

「「……!?」」

 どうやら二人は喫茶店でお茶でもしていくらしい。

「どうする? ウチ達も突入して近くの席で盗み聞きでもしちゃう? いや、でも流石にバレるか。正直色々気にはなるけど、良い感じの雰囲気なら邪魔はしたくないんだよね……」

「いや、さっきの術式の効力で、僕達に注意を向けられなかったら大丈夫だと思うっすよ」

「じゃあ突入しようか」

 そう言ってコソコソと先導するシエル。
 最早引き下がる空気でもないし、色々と気になり過ぎるから着いていくけど……果たして、隣の女の子はどうだろう。

「えーっと、どうするっすか? もし一緒に行くならあなたにも認識阻害の魔術掛けるっすけど」

「あ、えーっと、でも見つかったらルカ君の邪魔に……でも……」

 少し迷うような素振りを見せた少女だが、それでも答えは出たようでシズクに言う。

「……お願いします」

「了解っす」

 そして少女にも認識阻害の魔術を掛ける。
 これで突入準備は整った。

 三人はカップル(推定)の後を追い、店内へと足を踏み入れた。
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