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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女、盗聴
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その後、三人は各々頼みたい物を注文。
それらを頂きながら二人の動向を探っていく。
(これは……多分、色恋沙汰とかそういうのじゃ無さそうっすね)
始めは宿敵と知らずに出会って、宿敵と知らずに恋をするみたいな、漫画のような展開なのではないかと考えていた。
だけど、どうやらそうではなさそうで。
改めて観察し始めて、割りと早い段階でそういう結論に辿り着く事ができた。
そもそもそういう関係に発展するには異質すぎる組み合わせで。
そして声は聞こえなくても、端から見える光景は楽しいデートをしているというよりは、とても真面目な話をしているように思えて。
(偶然あのルカって人が黒装束の男だって判断して、それをうまく捕まえて話を聞いてたって感じっすかね。だとすればこの組み合わせにも納得が行くんすけど)
聞いた話によると、黒装束の男は妙に常識的というか、倫理観が備わっているというか。
少なくとも町中で大規模な戦いをするような性格でも無さそうではあったから……こうしてうまく話し合いの場を設ける事ができたのかもしれない。
(これで筋書きとして合ってるのかは分かんないっすけど……だとしたらアンナさん凄いっすね)
度胸も洞察力も行動力も高い。
……まあルカという青年がどこか余裕そうな表情を浮かべている辺り、アンナが劣勢なのかもしれないが。
……で、おそらく色恋沙汰ではなく、そういう真面目な話をしているのではないかという仮説に辿り付いたのはこの場ではシズク一人だけ。
「ルカ君、一体どんな事話してるんだろ……」
「くそうl、本当に全く聞こえないね。これはアレかな? 向うも防音の結界張ってる感じなのかな? 多分あっちゃんもそういうのやれるし」
「そういうの……ま、まさかとは思いますけど、向こうの人もシズクみたいな……」
「うん、元聖女」
「えぇ……る、ルカ君。一体何がどうなったら私の知らない所でそんな人と知り合ってそういう関係に……」
二人はまだ普通に色恋沙汰だと思っているようだ。
(何がどうなったらって、多分バチバチ戦ったからじゃないっすかね)
内心そうツッコむシズクに、シエルが言う。
「とにかくこのまま何の会話も分からないんじゃ進展が無いね……シズクちゃん、何か良い魔術無い?」
「そんな都合の良い魔術が……まあ、あるんすけど」
「あるんだ」
「まあ一応は。ただ絶対凄い結界張ってると思うんで、あまり成果は期待できないどころか、最悪こっちに気付かれるかもしれないっすよ」
「あーなるほど。ハイリスク・ローリターンって奴だね」
そう言ったシエルだが、一拍空けてから言う。
「ミカちゃんがそれで良いならってのが条件だけど、ここは一歩踏み込んでみようよ」
「良いんすか? 最悪バレるっすけど」
「まあその時はその時だよ。まあとにかく、少しでも情報が得られるんだったらウチは一歩踏み込みたい」
そう言うシエルは、どこか真剣な表情を浮かべている。
「……何か好奇心って感じじゃ無さそうっすね」
「当然、好奇心は一杯あるよ。人の色恋沙汰とかは好きだし、それが親友のあっちゃんのってなったらもう無茶苦茶知りたいよ。面白そうだし」
だけど、とシエルは言う。
「それと同じくらい、心配なんだ」
「心配?」
「ほら、この前話したと思うけど、あっちゃんって元々の交友関係とか根本的なコミュニケーション能力が色々な要因で残念だった訳で。シズクちゃん達と接しているのを見る感じ本人のコミュ力は安心できる位には高くなってるんだけども、やっぱり環境が環境だからそのコミュ力をあの国で活かせていたとは思えないんだ」
「つまりどういう事っすか?」
「シズクちゃん達とうまくやれてるのが奇跡な位、あっちゃんには真っ当な人付き合いの経験値が不足している。そんなあっちゃんが、この国に来たばかりで、さあこれから交友関係を広げていこうってタイミングでこの状況だよ」
そしてシエルは一拍空けてから言う。
「最悪悪い男に捕まったりだとか、妙な事で利用されてたりとか……そういう裏があるんじゃないかって思って。寧ろその方が自然じゃない?」
「る、ルカ君は悪い人じゃないもん!」
「だったら純粋な好奇心だけで追えるんだけど……で、どうかなミカちゃん。盗聴チャレンジやってみる?」
「……そうですね。ルカ君が妙な誤解をされたままなのは嫌だし……よし。シズク、ちょっとお願いできる? 私はルカ君がそんな風に悪いことをしてるんじゃなくて、普通にデートしてるんだって証明し……あ、いや、それはそれでやだな……嫌だなぁ……でもルカ君の名誉の為だもん」
最後ぶつぶつと葛藤していたようだが、それでもミカは言う。
「お願い」
「了解っす」
シズクはそう頷いた。
(多分シエルさんの考えも違うと思うし、ミカの言ってる普通のデートって訳でもないと思うんすけど……最悪バレても良いって事ならボクだって色々知りたいっすから。いっちょやってみるっすよ)
そうしてテーブルに手を置き、魔術を発動させる。
術式がテーブルから床を伝ってアンナの張る結界へと到達し、そこからは魔術師と魔術師の攻防だ。
(うわー、とんでもねえ術式してるっすね)
セキュリティーが強固。
今自分が行おうとしているような行為に対して鉄壁に近い防御力を誇っている。
それでも……鉄壁に近いだけで、鉄壁ではない。
(……よし)
壊す事無く悟られもせず。
その限界ギリギリを攻め、やれるだけの事をやった。
「……成功っすね」
「お、さっすがシズクちゃん」
「といってもなんとか最低限度の事をやっただけっす。音質もゴミだし、聞けた物じゃないようなノイズが走りまくってると思うっすよ」
流石魔術の研究をやっているだけある。
瞬時に張ったであろう結界一つのセキュリティもまともに突破できなかった。
自分はこれでも最高の仕事をしたつもりだけれど、成果物としては最悪な物が一つ手に入っただけ。
改めて自分が凄い人とパーティーを組んでるんだなと思い知らされる。
……まあとにかく、成果物を出す事にした。
「ここから音声を出力するっす」
テーブルの中心に魔法陣を展開。
そこから向うのテーブルの話声が聞こえて来る。
そして開口一番に男の声が聞こえた。
『ビックリする位エロ…………凄…………』
「「「どういう状況!?」」」
三人とも思わず同じ言葉を口にした。
それらを頂きながら二人の動向を探っていく。
(これは……多分、色恋沙汰とかそういうのじゃ無さそうっすね)
始めは宿敵と知らずに出会って、宿敵と知らずに恋をするみたいな、漫画のような展開なのではないかと考えていた。
だけど、どうやらそうではなさそうで。
改めて観察し始めて、割りと早い段階でそういう結論に辿り着く事ができた。
そもそもそういう関係に発展するには異質すぎる組み合わせで。
そして声は聞こえなくても、端から見える光景は楽しいデートをしているというよりは、とても真面目な話をしているように思えて。
(偶然あのルカって人が黒装束の男だって判断して、それをうまく捕まえて話を聞いてたって感じっすかね。だとすればこの組み合わせにも納得が行くんすけど)
聞いた話によると、黒装束の男は妙に常識的というか、倫理観が備わっているというか。
少なくとも町中で大規模な戦いをするような性格でも無さそうではあったから……こうしてうまく話し合いの場を設ける事ができたのかもしれない。
(これで筋書きとして合ってるのかは分かんないっすけど……だとしたらアンナさん凄いっすね)
度胸も洞察力も行動力も高い。
……まあルカという青年がどこか余裕そうな表情を浮かべている辺り、アンナが劣勢なのかもしれないが。
……で、おそらく色恋沙汰ではなく、そういう真面目な話をしているのではないかという仮説に辿り付いたのはこの場ではシズク一人だけ。
「ルカ君、一体どんな事話してるんだろ……」
「くそうl、本当に全く聞こえないね。これはアレかな? 向うも防音の結界張ってる感じなのかな? 多分あっちゃんもそういうのやれるし」
「そういうの……ま、まさかとは思いますけど、向こうの人もシズクみたいな……」
「うん、元聖女」
「えぇ……る、ルカ君。一体何がどうなったら私の知らない所でそんな人と知り合ってそういう関係に……」
二人はまだ普通に色恋沙汰だと思っているようだ。
(何がどうなったらって、多分バチバチ戦ったからじゃないっすかね)
内心そうツッコむシズクに、シエルが言う。
「とにかくこのまま何の会話も分からないんじゃ進展が無いね……シズクちゃん、何か良い魔術無い?」
「そんな都合の良い魔術が……まあ、あるんすけど」
「あるんだ」
「まあ一応は。ただ絶対凄い結界張ってると思うんで、あまり成果は期待できないどころか、最悪こっちに気付かれるかもしれないっすよ」
「あーなるほど。ハイリスク・ローリターンって奴だね」
そう言ったシエルだが、一拍空けてから言う。
「ミカちゃんがそれで良いならってのが条件だけど、ここは一歩踏み込んでみようよ」
「良いんすか? 最悪バレるっすけど」
「まあその時はその時だよ。まあとにかく、少しでも情報が得られるんだったらウチは一歩踏み込みたい」
そう言うシエルは、どこか真剣な表情を浮かべている。
「……何か好奇心って感じじゃ無さそうっすね」
「当然、好奇心は一杯あるよ。人の色恋沙汰とかは好きだし、それが親友のあっちゃんのってなったらもう無茶苦茶知りたいよ。面白そうだし」
だけど、とシエルは言う。
「それと同じくらい、心配なんだ」
「心配?」
「ほら、この前話したと思うけど、あっちゃんって元々の交友関係とか根本的なコミュニケーション能力が色々な要因で残念だった訳で。シズクちゃん達と接しているのを見る感じ本人のコミュ力は安心できる位には高くなってるんだけども、やっぱり環境が環境だからそのコミュ力をあの国で活かせていたとは思えないんだ」
「つまりどういう事っすか?」
「シズクちゃん達とうまくやれてるのが奇跡な位、あっちゃんには真っ当な人付き合いの経験値が不足している。そんなあっちゃんが、この国に来たばかりで、さあこれから交友関係を広げていこうってタイミングでこの状況だよ」
そしてシエルは一拍空けてから言う。
「最悪悪い男に捕まったりだとか、妙な事で利用されてたりとか……そういう裏があるんじゃないかって思って。寧ろその方が自然じゃない?」
「る、ルカ君は悪い人じゃないもん!」
「だったら純粋な好奇心だけで追えるんだけど……で、どうかなミカちゃん。盗聴チャレンジやってみる?」
「……そうですね。ルカ君が妙な誤解をされたままなのは嫌だし……よし。シズク、ちょっとお願いできる? 私はルカ君がそんな風に悪いことをしてるんじゃなくて、普通にデートしてるんだって証明し……あ、いや、それはそれでやだな……嫌だなぁ……でもルカ君の名誉の為だもん」
最後ぶつぶつと葛藤していたようだが、それでもミカは言う。
「お願い」
「了解っす」
シズクはそう頷いた。
(多分シエルさんの考えも違うと思うし、ミカの言ってる普通のデートって訳でもないと思うんすけど……最悪バレても良いって事ならボクだって色々知りたいっすから。いっちょやってみるっすよ)
そうしてテーブルに手を置き、魔術を発動させる。
術式がテーブルから床を伝ってアンナの張る結界へと到達し、そこからは魔術師と魔術師の攻防だ。
(うわー、とんでもねえ術式してるっすね)
セキュリティーが強固。
今自分が行おうとしているような行為に対して鉄壁に近い防御力を誇っている。
それでも……鉄壁に近いだけで、鉄壁ではない。
(……よし)
壊す事無く悟られもせず。
その限界ギリギリを攻め、やれるだけの事をやった。
「……成功っすね」
「お、さっすがシズクちゃん」
「といってもなんとか最低限度の事をやっただけっす。音質もゴミだし、聞けた物じゃないようなノイズが走りまくってると思うっすよ」
流石魔術の研究をやっているだけある。
瞬時に張ったであろう結界一つのセキュリティもまともに突破できなかった。
自分はこれでも最高の仕事をしたつもりだけれど、成果物としては最悪な物が一つ手に入っただけ。
改めて自分が凄い人とパーティーを組んでるんだなと思い知らされる。
……まあとにかく、成果物を出す事にした。
「ここから音声を出力するっす」
テーブルの中心に魔法陣を展開。
そこから向うのテーブルの話声が聞こえて来る。
そして開口一番に男の声が聞こえた。
『ビックリする位エロ…………凄…………』
「「「どういう状況!?」」」
三人とも思わず同じ言葉を口にした。
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