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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女、腹をくくる。
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世界を侵食していくように展開される影。
それを塞き止めるように……周囲に結界が展開された。
幸い、自分達の周囲にいた人達は判断が早く、結界の内部にいるのは奇跡的にシズクとミカと、シエルを蹴り飛ばした男だけ。
直後、影の侵食は塞き止められた……筈だ。
影よりも早く展開されたドーム状の結界の端にまで到達した所で、今度は半透明の結界を侵食するように黒く塗り潰し、この場に視界は良好な闇を形成させた。
「お、止まったな。いや止めたのか。すげえわ」
称賛するように男はそう言う。
やったのはシズクではない。
となればミカだ。
(な、なんかよく分かんないっすけどナイスっす!)
言いながら、そのミカの方に視線を向けて……目を見開いた。
「み、ミカ……ッ!?」
まだなにもされていない。
自分達はまだ何もされていない……筈だ。
にも関わらず、ミカは膝をついていた。
「あ……グ……ぅ……!」
息は荒く苦悶の声を洩らして。
何かが体を蝕んでいるように、全身が痙攣しているのが見てとれた。
少なくとも、明らかにまともに戦える状態ではない。
(な、何されたんすか!? いや、されたんならなんでボクは無事……いや、ちょっと待てこれって……ッ!)
あくまで、可能性の一つだ。
ミカは先日、シルヴィとステラと戦っている。
そしてミカはシルヴィにトラウマのような物を抱えているみたいで……そして。
話を聞いた限り、シルヴィならこういうことができる。
つまり。
(これシルヴィさんの魔術が掛かったままって感じじゃないんすか!?)
とても凄い魔術だとは思う。
こうなった経緯を考えると、魔術を使用している間電流を流し続ける拘束魔術といった所だろうか。
そしてきっと本人が解除するか、無理矢理解除するかしない限り、本人がそこにいなくても枷のように効力を発揮し続ける。
もし悪人相手に使ったのならば、長期間無力化できる強力な魔術。
だけど今この時に限っては。
「八割方ルカくんに解除してもらったけど……まだこんなに……!」
貴重な戦力を一人早々に失う事を意味する。
「ん? なんだぁ? 俺まだ何もしてないんだけど」
男も困惑したようにそう言う。
そしてシズクも困惑し、混乱する。
(さ、最悪っすよこの状況!)
ミカはもうまともに戦えない。
その状況で相手は得体の知れない男。
そしてこの狭い空間。
例えばこの場に居たのがステラなら、この狭い空間というのが最高の条件になる筈だ。
基本なんでもできるが、真骨頂は近接格闘だ。
距離を取れないこの空間は、距離を積極的に詰めて戦うステラとの愛称が良い。
アンナも近接での殴り合いを一つの手段としている程度にはやれるし、シルヴィも二人と比べれば比較的苦手なだけで最低限の技能はある。
ではシズクは。
(ど、どうするっすか!? こんな事なら簿記の資格取る勉強する時間を格闘技にでも当てときゃ良かったっすよ!)
近接戦闘は専門外だ。
寧ろあの三人が異質なだけで、近接戦闘などやった事が無い。
当然強化魔術も使えるが、使って得た力の振るい方が分からない。
シズクの真骨頂は遠距離攻撃と補助だ。
他者の強化魔術の上に更に強化魔術を重ね掛けさせブーストを掛け、その強化魔術の性質を状況に応じて切り替えつつ、自身は距離を取って水属性の魔術をぶっぱなす。
決して多くない戦闘経験は、そういう役割で積み重ねてきた。
つまり近距離で単騎。
あまりにも最悪な状況。
「シズク」
ミカから声を掛けられてハッとして意識がそちらへ向く。
そしてミカに問いかけられた?
「シズクは戦える? 戦えないならこの結界の外へ逃がすから」
その答えは分からないだ。
この状況下でまともに戦えるかどうかなんて分からない。
……だけどこの結界の外に逃がして貰ったとして、その後ミカはどうなる?
「や、やれるっす! そんな状態のミカを一人で置いてけねーっすよ!」
もう、そう言うしか無かった。
腹をくくるしかなかった。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って自身に強化魔術を。
そして一応ミカにも重ね掛け用の強化魔術を付与する。
「まあこまけえ事は良いか! なんか戦えるみたいだし丁度良かった! 頑丈なんだろ試運転に付き合えよ! サンドバッグになってくれ!」
「普通にお断りっす」
「そう言うなよ! 女子供に暴力振るうのは良い反応みられるから好きなんだ!」
「最悪っすよコイツ……!」
だからこそ尚更。
(こんな奴の前にミカを一人残して逃げられないっすよ……多分居る筈の人質の子供も助けないと。外の人達にだって被害は出せない)
故にこの場から逃げて良い理由なんて無い。
聖女をやっていた時よりその数は少ないけれど。
今、少なく見積もって100人以上の人間の命が、自分の肩に乗っているのだから。
それを塞き止めるように……周囲に結界が展開された。
幸い、自分達の周囲にいた人達は判断が早く、結界の内部にいるのは奇跡的にシズクとミカと、シエルを蹴り飛ばした男だけ。
直後、影の侵食は塞き止められた……筈だ。
影よりも早く展開されたドーム状の結界の端にまで到達した所で、今度は半透明の結界を侵食するように黒く塗り潰し、この場に視界は良好な闇を形成させた。
「お、止まったな。いや止めたのか。すげえわ」
称賛するように男はそう言う。
やったのはシズクではない。
となればミカだ。
(な、なんかよく分かんないっすけどナイスっす!)
言いながら、そのミカの方に視線を向けて……目を見開いた。
「み、ミカ……ッ!?」
まだなにもされていない。
自分達はまだ何もされていない……筈だ。
にも関わらず、ミカは膝をついていた。
「あ……グ……ぅ……!」
息は荒く苦悶の声を洩らして。
何かが体を蝕んでいるように、全身が痙攣しているのが見てとれた。
少なくとも、明らかにまともに戦える状態ではない。
(な、何されたんすか!? いや、されたんならなんでボクは無事……いや、ちょっと待てこれって……ッ!)
あくまで、可能性の一つだ。
ミカは先日、シルヴィとステラと戦っている。
そしてミカはシルヴィにトラウマのような物を抱えているみたいで……そして。
話を聞いた限り、シルヴィならこういうことができる。
つまり。
(これシルヴィさんの魔術が掛かったままって感じじゃないんすか!?)
とても凄い魔術だとは思う。
こうなった経緯を考えると、魔術を使用している間電流を流し続ける拘束魔術といった所だろうか。
そしてきっと本人が解除するか、無理矢理解除するかしない限り、本人がそこにいなくても枷のように効力を発揮し続ける。
もし悪人相手に使ったのならば、長期間無力化できる強力な魔術。
だけど今この時に限っては。
「八割方ルカくんに解除してもらったけど……まだこんなに……!」
貴重な戦力を一人早々に失う事を意味する。
「ん? なんだぁ? 俺まだ何もしてないんだけど」
男も困惑したようにそう言う。
そしてシズクも困惑し、混乱する。
(さ、最悪っすよこの状況!)
ミカはもうまともに戦えない。
その状況で相手は得体の知れない男。
そしてこの狭い空間。
例えばこの場に居たのがステラなら、この狭い空間というのが最高の条件になる筈だ。
基本なんでもできるが、真骨頂は近接格闘だ。
距離を取れないこの空間は、距離を積極的に詰めて戦うステラとの愛称が良い。
アンナも近接での殴り合いを一つの手段としている程度にはやれるし、シルヴィも二人と比べれば比較的苦手なだけで最低限の技能はある。
ではシズクは。
(ど、どうするっすか!? こんな事なら簿記の資格取る勉強する時間を格闘技にでも当てときゃ良かったっすよ!)
近接戦闘は専門外だ。
寧ろあの三人が異質なだけで、近接戦闘などやった事が無い。
当然強化魔術も使えるが、使って得た力の振るい方が分からない。
シズクの真骨頂は遠距離攻撃と補助だ。
他者の強化魔術の上に更に強化魔術を重ね掛けさせブーストを掛け、その強化魔術の性質を状況に応じて切り替えつつ、自身は距離を取って水属性の魔術をぶっぱなす。
決して多くない戦闘経験は、そういう役割で積み重ねてきた。
つまり近距離で単騎。
あまりにも最悪な状況。
「シズク」
ミカから声を掛けられてハッとして意識がそちらへ向く。
そしてミカに問いかけられた?
「シズクは戦える? 戦えないならこの結界の外へ逃がすから」
その答えは分からないだ。
この状況下でまともに戦えるかどうかなんて分からない。
……だけどこの結界の外に逃がして貰ったとして、その後ミカはどうなる?
「や、やれるっす! そんな状態のミカを一人で置いてけねーっすよ!」
もう、そう言うしか無かった。
腹をくくるしかなかった。
「……ありがとう」
「どういたしまして」
そう言って自身に強化魔術を。
そして一応ミカにも重ね掛け用の強化魔術を付与する。
「まあこまけえ事は良いか! なんか戦えるみたいだし丁度良かった! 頑丈なんだろ試運転に付き合えよ! サンドバッグになってくれ!」
「普通にお断りっす」
「そう言うなよ! 女子供に暴力振るうのは良い反応みられるから好きなんだ!」
「最悪っすよコイツ……!」
だからこそ尚更。
(こんな奴の前にミカを一人残して逃げられないっすよ……多分居る筈の人質の子供も助けないと。外の人達にだって被害は出せない)
故にこの場から逃げて良い理由なんて無い。
聖女をやっていた時よりその数は少ないけれど。
今、少なく見積もって100人以上の人間の命が、自分の肩に乗っているのだから。
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