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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 黒装束の聖女達、第二ラウンド開幕
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誰も居なくなったこの場所に一人で立つシエルを見てミカは思う。
(この人……戦える側の人間だ)
あの一撃を不意打ちで喰らって建物の中に突っ込んで、結果大怪我を負ってもそこに立っている。
取り乱す事無くそこに立っている。
そして直接的な戦闘能力よりも。
(それも間違いなく場数を踏んでる)
先の喫茶店での会話から、波乱万丈な日常を送っている事は察する事が出来たけど……それでも此処までだとは思わなかった。
おそらくこの場で最もこの状況に順応している。
……そういう人が相手なら、手短に状況を伝えられる。
色々と察してくれる。
「相手は影を操る魔術を使います! 今その影を広げる魔術を私の結界で塞き止めてる!」
「成程それで外に出てこなかったって事ね。子供の救出を優先してるのはリスク減らす為か」
「理解が早くて助かります!」
言いながらシエルの元へと駆け寄る。
「じゃあ私中戻るんでこの子お願いします!」
子供を放しながらシエルにそう頼んだ。
「戻るの!?」
「シズクはどうも近距離じゃまともに戦えないみたいなんで」
そう言って走る電流に耐えながら転移魔術を発動させようとする。
「ちょい待ち。だったら戻らずミカちゃんの結界解いた方が良い」
それを冷静にそう言うシエルに止められた。
「いや、でもあの結界解くと周りの人達に被害……が?」
と、そこで改めて気付く。
一体この場の誰に被害が及ぶ?
「大丈夫。速攻で避難させた」
「え!?」
思わずそんな声が出る。
当然自身から湧き上がる危機感で逃げ出す人も大勢いる。
だけどそれでも、その場に留まる人も多く居ると踏んでいた。
その留まった人間を、この短期間で。
(手際が良すぎる……一体普段どんな私生活を……ッ!)
素直に驚いた。
中々できる事では無い。
だけど驚くのは後。
「分かりました。じゃあ結界を解くんでシエルさんはこの子を――」
「いや、逆。このままミカちゃんがその子を守ってあげて」
「え……?」
「万全じゃないでしょ。さっき向うに跳ぼうとしてた時にそんな気がした」
(見抜かれてる)
それに、とシエルは言う。
「向うが想定外の攻撃をしてきた時、ウチじゃその子を守れないかもしれない。結界も張れないし……それに」
言われている間に震えた子供にしがみ付かれる。
「その子もこんな血塗れのお姉さんじゃビビるでしょ。そっちは頼んだ」
そう言ってシエルは再び棒を構える。
「分かりました! シエルさんもシズクの事お願いします! 終わったらまだ合流しましょう!」
「じゃあ結界よろしく!」
「はい!」
そう言ってミカは再び子供を抱きかかえながら、手を結界の方へと向ける。
コントロールは破棄して自立型へと切り替えた。
それでもあの結界は自分が作り上げたものだから、術式構成は自分が一番把握している。
故に周囲への被害を一切出さない必要最低限の威力での、外部からの破壊も容易い。
痺れと共に掌に闇属性の魔術で作った黒い球体を作成。
それを弾丸のように打ち込み、激しい破砕音と共に結界を破壊する。
次の瞬間、辺り一面に水と影が溢れ出す。
水は精々あの空間内で足首程度の水量だったが故に、辺りに広がり地面にしみこみ然程広がりを見せない。
ただ影は半径二十メートル程の地面を侵食した。
その全域があの男の攻撃範囲。
そしてその男は、結界を破壊する前にシズクの水属性の魔術の拘束を解いていたのかもしれない。
既にシズクに接近して飛び掛かり、対するシズクは攻撃を防御する為に正面に結界を張って身構えていた。
まさにギリギリの状況。
「シズク!」
ミカが叫ぶと同時、状況を察したシズクが広くなった空間を広く使うように、おそらく水魔術を使って地面を滑るように男から距離を取る。
そして……その男に距離を詰める女が一人。
「言いたい事山程あるけど、とりあえずシバく!」
子供と周囲の人間への被害。
彼女たちを縛る枷は消えてなくなった。
さぁ、第二ラウンドの開幕だ。
(この人……戦える側の人間だ)
あの一撃を不意打ちで喰らって建物の中に突っ込んで、結果大怪我を負ってもそこに立っている。
取り乱す事無くそこに立っている。
そして直接的な戦闘能力よりも。
(それも間違いなく場数を踏んでる)
先の喫茶店での会話から、波乱万丈な日常を送っている事は察する事が出来たけど……それでも此処までだとは思わなかった。
おそらくこの場で最もこの状況に順応している。
……そういう人が相手なら、手短に状況を伝えられる。
色々と察してくれる。
「相手は影を操る魔術を使います! 今その影を広げる魔術を私の結界で塞き止めてる!」
「成程それで外に出てこなかったって事ね。子供の救出を優先してるのはリスク減らす為か」
「理解が早くて助かります!」
言いながらシエルの元へと駆け寄る。
「じゃあ私中戻るんでこの子お願いします!」
子供を放しながらシエルにそう頼んだ。
「戻るの!?」
「シズクはどうも近距離じゃまともに戦えないみたいなんで」
そう言って走る電流に耐えながら転移魔術を発動させようとする。
「ちょい待ち。だったら戻らずミカちゃんの結界解いた方が良い」
それを冷静にそう言うシエルに止められた。
「いや、でもあの結界解くと周りの人達に被害……が?」
と、そこで改めて気付く。
一体この場の誰に被害が及ぶ?
「大丈夫。速攻で避難させた」
「え!?」
思わずそんな声が出る。
当然自身から湧き上がる危機感で逃げ出す人も大勢いる。
だけどそれでも、その場に留まる人も多く居ると踏んでいた。
その留まった人間を、この短期間で。
(手際が良すぎる……一体普段どんな私生活を……ッ!)
素直に驚いた。
中々できる事では無い。
だけど驚くのは後。
「分かりました。じゃあ結界を解くんでシエルさんはこの子を――」
「いや、逆。このままミカちゃんがその子を守ってあげて」
「え……?」
「万全じゃないでしょ。さっき向うに跳ぼうとしてた時にそんな気がした」
(見抜かれてる)
それに、とシエルは言う。
「向うが想定外の攻撃をしてきた時、ウチじゃその子を守れないかもしれない。結界も張れないし……それに」
言われている間に震えた子供にしがみ付かれる。
「その子もこんな血塗れのお姉さんじゃビビるでしょ。そっちは頼んだ」
そう言ってシエルは再び棒を構える。
「分かりました! シエルさんもシズクの事お願いします! 終わったらまだ合流しましょう!」
「じゃあ結界よろしく!」
「はい!」
そう言ってミカは再び子供を抱きかかえながら、手を結界の方へと向ける。
コントロールは破棄して自立型へと切り替えた。
それでもあの結界は自分が作り上げたものだから、術式構成は自分が一番把握している。
故に周囲への被害を一切出さない必要最低限の威力での、外部からの破壊も容易い。
痺れと共に掌に闇属性の魔術で作った黒い球体を作成。
それを弾丸のように打ち込み、激しい破砕音と共に結界を破壊する。
次の瞬間、辺り一面に水と影が溢れ出す。
水は精々あの空間内で足首程度の水量だったが故に、辺りに広がり地面にしみこみ然程広がりを見せない。
ただ影は半径二十メートル程の地面を侵食した。
その全域があの男の攻撃範囲。
そしてその男は、結界を破壊する前にシズクの水属性の魔術の拘束を解いていたのかもしれない。
既にシズクに接近して飛び掛かり、対するシズクは攻撃を防御する為に正面に結界を張って身構えていた。
まさにギリギリの状況。
「シズク!」
ミカが叫ぶと同時、状況を察したシズクが広くなった空間を広く使うように、おそらく水魔術を使って地面を滑るように男から距離を取る。
そして……その男に距離を詰める女が一人。
「言いたい事山程あるけど、とりあえずシバく!」
子供と周囲の人間への被害。
彼女たちを縛る枷は消えてなくなった。
さぁ、第二ラウンドの開幕だ。
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