127 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
24 聖女さん達、託す
しおりを挟む
「頼みたい事……俺にか?」
「まず一つ。倒れているお前以外の三人の事を頼む」
「ああ、そりゃ勿論。一緒に外出るならなんとかするけど」
「そして二つ目。これが本題だ」
そしてルカは一拍空けてから言う。
「さっきお前は自虐していた時、先輩やボスならこんな事にはならなかった、みたいな事を言ってたな」
「言ってたが……」
「お前が一体どういう組織に所属しているのかは知らん。だがこの状況にある程度対抗できるような組織なんじゃないかと思う。それこそ一般人に毛が生えた程度と自負するお前の上司やボスは一般人では無いんだろう?」
「そりゃもうすげえ人達だ! 弱気を助け強気を挫く! この国を裏から支えてると言っても過言じゃないビックな人達よ!」
「裏から支えるってなんか漫画とかに出てくる、善良っぽいマフィアみたいだね」
私がそんな適当な事を言うと、男は露骨にビクりという反応を見せ。
「い、いや、そういうのじゃねえんだよなー」
とか言って口笛を吹き出す。
「あの、もうちょっとまともな誤魔化し方ないの?」
「これ答えですって言ってるようなものだぞ」
実は自慢したくて態々分かりやすい反応を取ったんじゃないかって疑いたくなってくるよ。
「……てことは裏に居るのマフィアなのか。さっきの頼みがあるってのは無かった事にしてもいいか?」
「というかどちらかというと悪人カテゴリじゃんアンタ」
「いや、まあ確かにマフィアだけど、そこまで人道から外れるような事はやっていないというか……多分」
「多分ってえらく曖昧じゃん」
「いや、だって新入りだし」
だけど、と男は言う。
「でも薬物出回るルート潰したり、それこそ人身売買の組織ぶっ潰したり……色々と助けて貰ったり。とにかく俺にとってはヒーローみてえな人らなんだ。あの人達を侮辱するような事をしたら、この事件を解決した後にぶっ飛ばす!」
「この事件の解決は待ってくれるんだ」
「そりゃそれどころじゃねえし……あ、いや、でも助けてもらった恩人にそんな事したら絶対長々と説教喰らうな……菓子折り持たされて謝りに行かされる未来が見える」
「おい、コイツの所属先本当にマフィアなのか?」
「さっきの報連相といい、一般優良企業な感じ凄くない?」
……うん、そんな風にしか思えないよ。
それこそシズクの職場の冒険者ギルドみたいに、絶妙な感じで和気藹々な雰囲気な気がする。
……そういえばあの部長さん、改めて考えてもカタギじゃない感じのビジュアルしてたよね。
マフィアみたいなビジュアルのカタギに一般企業みたいなマフィア。
私の中のマフィアのイメージが壊れる!
……いや、まあそんなのは別に壊れても良いんだけど。
「で、どうするの? なんか頼みたい事あったんでしょ? 頼むかどうかはアンタに任せるけど」
「そうだな……まあ此処は信用してみるか。それに……」
「それに?」
「いや、何でもない」
そう言ってはぐらかした後、ルカは言う。
「じゃあ改めて一つ頼んで良いか? お前の居る組織が善良であると見込んでだ」
「お、印象回復チャンスだな。俺は何をすればいい」
「此処で起きている事。お前が知っている事を報告して、可能なら早急にこの一件に人員を動かしてもらえ」
「……なるほど。援軍を呼んで来いって話だな。そんな事で良いならいくらでも頭下げてくる」
「よし……なら頼む」
言いながらルカは倒れている男達を一人一人外へと飛ばし始める。
……その頼みについて言いたいことは有ったけど、ひとまず口は挟まない事にした。
どうするのが正しいのかって事は、正直分かんなかったから。
そして一人一人飛ばしていくルカと私に対して男は言う。
「ただ援軍呼ぶって言っても、お前達は多分此処でそれを待つみたいな真似はしないだろ。だから俺から一つアドバイスをしとく」
「アドバイス?」
「此処から先に進んでいくと、多分転移魔術を使っての脱出は難しくなると思う」
「どういう事だ?」
「此処はまだ異質な感じのする地下水道って感じだが……此処から先というか下か。そこは魔術で作られた異空間みたいになっている。まともな形で外と繋がっているとは思わない方が良い」
「……そうか」
ルカが一瞬深刻そうな表情を浮かべたが、今は触れない事にした。
言いたい事は分かるけど……まあこの男が居なくなってからでも良いと思う。
そして男は言葉を続ける。
「そんで二つ目。指輪持ちには気を付けた方が良い」
「指輪持ち?」
「ああ。原理は良く分からねえけどあの指輪を使って明らかに実力以上の魔術を使ってくる奴が居る。俺が負けたのも指輪持ちだし、他にそういう連中が何人も居るのを操られてから確認した」
「……了解」
一応驚きながらも頷いた。
指輪を使って魔術を発動する。
もしくは出力を増幅させる。
それは理論上不可能な事じゃない。
実際この世界は魔術で溢れている。
電話やFAXから、それこそこの前私達がセッションしていた時のアンプだって、魔術を利用したシステムを構築して動いている。
だからそこから更に発展して、お手軽に強力な魔術そのものを使えたり、元から使える力を増幅したりなんてのも、きっと不可能な話じゃないと思う。
でもそれはきっとの話だ。
そんなのはまだ、近い将来できたら良いねっていう理想に過ぎない。
もしそういう物が実用化されているなら、私だって使うし、しーちゃんにも護身用で持たせてる。
……この話がただの勘違いならいいんだけど、もし本当の話だったら、相手は想像以上に厄介だ。
……だってその理想を形にできるだけの、魔術師としての。
研究者としての実績を持っているという事になるから。
「まず一つ。倒れているお前以外の三人の事を頼む」
「ああ、そりゃ勿論。一緒に外出るならなんとかするけど」
「そして二つ目。これが本題だ」
そしてルカは一拍空けてから言う。
「さっきお前は自虐していた時、先輩やボスならこんな事にはならなかった、みたいな事を言ってたな」
「言ってたが……」
「お前が一体どういう組織に所属しているのかは知らん。だがこの状況にある程度対抗できるような組織なんじゃないかと思う。それこそ一般人に毛が生えた程度と自負するお前の上司やボスは一般人では無いんだろう?」
「そりゃもうすげえ人達だ! 弱気を助け強気を挫く! この国を裏から支えてると言っても過言じゃないビックな人達よ!」
「裏から支えるってなんか漫画とかに出てくる、善良っぽいマフィアみたいだね」
私がそんな適当な事を言うと、男は露骨にビクりという反応を見せ。
「い、いや、そういうのじゃねえんだよなー」
とか言って口笛を吹き出す。
「あの、もうちょっとまともな誤魔化し方ないの?」
「これ答えですって言ってるようなものだぞ」
実は自慢したくて態々分かりやすい反応を取ったんじゃないかって疑いたくなってくるよ。
「……てことは裏に居るのマフィアなのか。さっきの頼みがあるってのは無かった事にしてもいいか?」
「というかどちらかというと悪人カテゴリじゃんアンタ」
「いや、まあ確かにマフィアだけど、そこまで人道から外れるような事はやっていないというか……多分」
「多分ってえらく曖昧じゃん」
「いや、だって新入りだし」
だけど、と男は言う。
「でも薬物出回るルート潰したり、それこそ人身売買の組織ぶっ潰したり……色々と助けて貰ったり。とにかく俺にとってはヒーローみてえな人らなんだ。あの人達を侮辱するような事をしたら、この事件を解決した後にぶっ飛ばす!」
「この事件の解決は待ってくれるんだ」
「そりゃそれどころじゃねえし……あ、いや、でも助けてもらった恩人にそんな事したら絶対長々と説教喰らうな……菓子折り持たされて謝りに行かされる未来が見える」
「おい、コイツの所属先本当にマフィアなのか?」
「さっきの報連相といい、一般優良企業な感じ凄くない?」
……うん、そんな風にしか思えないよ。
それこそシズクの職場の冒険者ギルドみたいに、絶妙な感じで和気藹々な雰囲気な気がする。
……そういえばあの部長さん、改めて考えてもカタギじゃない感じのビジュアルしてたよね。
マフィアみたいなビジュアルのカタギに一般企業みたいなマフィア。
私の中のマフィアのイメージが壊れる!
……いや、まあそんなのは別に壊れても良いんだけど。
「で、どうするの? なんか頼みたい事あったんでしょ? 頼むかどうかはアンタに任せるけど」
「そうだな……まあ此処は信用してみるか。それに……」
「それに?」
「いや、何でもない」
そう言ってはぐらかした後、ルカは言う。
「じゃあ改めて一つ頼んで良いか? お前の居る組織が善良であると見込んでだ」
「お、印象回復チャンスだな。俺は何をすればいい」
「此処で起きている事。お前が知っている事を報告して、可能なら早急にこの一件に人員を動かしてもらえ」
「……なるほど。援軍を呼んで来いって話だな。そんな事で良いならいくらでも頭下げてくる」
「よし……なら頼む」
言いながらルカは倒れている男達を一人一人外へと飛ばし始める。
……その頼みについて言いたいことは有ったけど、ひとまず口は挟まない事にした。
どうするのが正しいのかって事は、正直分かんなかったから。
そして一人一人飛ばしていくルカと私に対して男は言う。
「ただ援軍呼ぶって言っても、お前達は多分此処でそれを待つみたいな真似はしないだろ。だから俺から一つアドバイスをしとく」
「アドバイス?」
「此処から先に進んでいくと、多分転移魔術を使っての脱出は難しくなると思う」
「どういう事だ?」
「此処はまだ異質な感じのする地下水道って感じだが……此処から先というか下か。そこは魔術で作られた異空間みたいになっている。まともな形で外と繋がっているとは思わない方が良い」
「……そうか」
ルカが一瞬深刻そうな表情を浮かべたが、今は触れない事にした。
言いたい事は分かるけど……まあこの男が居なくなってからでも良いと思う。
そして男は言葉を続ける。
「そんで二つ目。指輪持ちには気を付けた方が良い」
「指輪持ち?」
「ああ。原理は良く分からねえけどあの指輪を使って明らかに実力以上の魔術を使ってくる奴が居る。俺が負けたのも指輪持ちだし、他にそういう連中が何人も居るのを操られてから確認した」
「……了解」
一応驚きながらも頷いた。
指輪を使って魔術を発動する。
もしくは出力を増幅させる。
それは理論上不可能な事じゃない。
実際この世界は魔術で溢れている。
電話やFAXから、それこそこの前私達がセッションしていた時のアンプだって、魔術を利用したシステムを構築して動いている。
だからそこから更に発展して、お手軽に強力な魔術そのものを使えたり、元から使える力を増幅したりなんてのも、きっと不可能な話じゃないと思う。
でもそれはきっとの話だ。
そんなのはまだ、近い将来できたら良いねっていう理想に過ぎない。
もしそういう物が実用化されているなら、私だって使うし、しーちゃんにも護身用で持たせてる。
……この話がただの勘違いならいいんだけど、もし本当の話だったら、相手は想像以上に厄介だ。
……だってその理想を形にできるだけの、魔術師としての。
研究者としての実績を持っているという事になるから。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる