最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
128 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

25 聖女さん達、引き継ぐ

しおりを挟む
 ……悔しいけど、そうなったら研究者としての格は向うの方が上。
 後は実際に運用する魔術師としての格がどっちが上かって話だけど……まあ、それすらもぶつかってみないと分かんないか。

 ……分かんない、か。
 ほんと、敵も味方もインフレし過ぎだよ最近。
 ……まあ敵だけじゃなく味方もだから恵まれてるかな。

 そして三人を飛ばし終えたルカは、最後にニット帽の男に触れる。

「まだ他に何か俺達に言っておく事はあるか?」

「言っておく事……か。本当はもっと色々と言えたら良いんだが、俺の知っている事は此処まで。浅くて悪いな」

「いや……何もないよりよっぽどマシだ。助かった」

「そう言ってくれると、死に物狂いの負け戦にも意味が有ったんだって思えるよ」

「……で、そろそろ飛ばしてもいいか?」

「ああ、良いぜ。って言いたい所だが最後に一つだけ。言っておかなきゃならねえ事あったわ」

 そう言って男は私とルカにそれぞれ視線を向けてから言う。

「お前らのおかげで罪もねえような誰かに怪我負わせずに済んだ。マジで助かった。ありがとう……後は頼んます」

 そういう改めての礼の言葉。
 そして託すような言葉。
 それを言い終えたのを確認してからルカはその男を転移魔術で地上へと飛ばす。

 そして私達は進行方向へと向き直って、そして走り出す。

「多分アイツも私達と同じで首突っ込んで巻き込まれた感じだよね」

「おそらくそういう事だろうな。だから全員立場は違えど向いている方向は同じのようだ。一応仲間を呼んでくれる話にはなったが、そもそもアイツは最初此処に残るつもりで居たんだ。その意思は俺達が引き継いでやらないといけない」

「なんかますます引けなくなった感じだね」

「元々引くつもりは無いだろう」

「まあ無いけど……いや、というかマフィアの意思引き継ぐみたいなニュアンスになるのは嫌だなぁ」

「それは……確かに嫌だな。普通に嫌だな」

「というか今の奴の名前聞くの忘れてたね」

「一応聞いておくべきだったか……しまったな」

 と、名前も知らないマフィアの下っ端の意思を引き継いで私達は走る。
 そして走りながら……ルカに問いかける。

「で、アンタは本当に引かなくて大丈夫なの?」

「……どうした急に」

「この先はまともな形で外と繋がっていないみたいだけど……そうなったらアンタ都合悪いんじゃないの?」

 思い返す。
 私がルカと戦った時の突破口。
 周囲に空間を断絶させる結界を張り、ルカが外部から供給していた力を断ち切った。

 そしてこの先の空間が普通ではないとすれば……その時の様な事になりかねない訳だ。

「此処の敵、私達が想定してた以上にヤバい奴の可能性が出てきたんだけど」

「まあ仮に力の供給が得られなくてもなんとかするさ。あの時とは違い突発的に弱体化する訳じゃないんだ。出力が落ちたなら落ちたなりの戦い方をすればいい」

「ま、アンタならそれができるか」

 というかそもそも弱体化したとしても私の一発を喰らって意識保ってた訳だし、素でも結構強いんだよねコイツ。
 ……なら問題はあっても、思った程の大問題では無いか。

 そう思ったけど、少し怪訝な表情を浮かべてルカは言う。

「それより俺とのパスが一時的に切れるとなると……まず間違いなく心配を掛ける。そっちの方が問題だ」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...