129 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
26 聖女さん達、危惧する状況の対策を立てる
しおりを挟む
「ああ、あのお姫様ね……そういえばあの時もすぐ飛んできたっけ」
飛んできて結界を割られた。
……という事はだ。
「そうなったらお姫様がこっちに飛んでくる可能性があるって訳だね」
「ああ。さっきの男は転移魔術での脱出はできないかもしれないとは言っていたが、そもそもあの時だって俺の所に飛んでこれたんだ。あの方なら多分飛んで来れてしまう」
「……そりゃ大問題だね」
具体的にどういう理屈で飛んでこれるのかは知らない。
長距離の転移魔術なんて基本的に出発点と目的地を固定して初めて使えるような代物だと思うし、あの時あの場にああやって現れたの事態が正直意味分かんないんだけど……まあその辺の理屈をどうこう話し合っている場合ではなくて。
話すべきなのは、飛べるから生じる問題についてだ。
「巻き込みたくないんでしょ?」
「……そりゃそうだろ」
ルカは言う。
「本来一切の危険にも晒しちゃいけないお方なんだ。こんな厄介事に巻き込んでいい訳がない」
ただ、とルカは言う。
「それでも巻き込まれに来るかもしれない。例えまともに戦えるような状態じゃなかったとしてもだ」
「……いい子じゃん。それが王族の行動として正しいかって言われたら違うかもしれないけど」
だったら。
「だったら尚更戻った方が良いんじゃない? というかこっちに飛んでくるようなリスクが無かったとしても……そもそもそのお姫様の味方してやれるのってアンタだけなんだから、尚更こんな所で命掛けてられないでしょ」
「……」
ルカは少しだけ悩むように黙り混んだ後、それでも言う。
「いや、今更引けんさ。自分が危ないと思うような場に協力者一人を置いて引くような真似はできない。そんな事をすれば、それはそれであの方に顔向けできなくなる」
「……じゃあどうするの?」
「元より死なないように頑張る以外の選択肢は無いだろう」
「そのお姫様が飛んでくるかもしれないってのは?」
「……万が一ここから先に進んで力の供給が途絶えるような事があった場合、少しだけ時間をくれ。もし飛んでくるならかなり早い段階で近くに飛んでくるだろうから。その有無だけは確認したい。近くに来れば俺も探そうと思えば探せるからな」
「なるほど了解」
最悪の場合は合流するって訳ね
「まあ今のやり取りが全部杞憂で終わってくれるのが一番良いのだがな」
「そうだね」
ルカが弱体化さえしなければ、諸々の問題は問題になる前に終わってくれる訳だから。
……いや、でも冷静に考えたら最初からずっと問題があった気がするんだけど。
それをルカに聞いてみる。
「……ていうかちょっと疑問なんだけど、そもそもそのお姫様って一人にしておいていいの?」
私はルカが単独行動をしているタイミングで遭遇して今に至ってる訳だけど、そもそも単独行動をしている事自体あまり良くないんじゃないのかな?
そしてその問いにルカは複雑そうな表情で答える。
「……まあ、あまり良くは無いんだろうな」
だが、とルカは言う。
「今は万全ではないとはいえ、いざとなったら俺の所に逃げてこれる。まあ今来られると困る訳だが……とにかく、最低限のセーフティはある。だとすれば……あまりプライベートに干渉はしたくない。ただでさえ後にも先にも碌な事がねないんだ。何も無い時位は、俺なんかが縛り付けるのは良くないと思う。王族とか聖女とかそういう事の前に……年頃の女の子なんだから」
「なるほど、気ぃ使った結果な訳だ」
「立場上最悪の悪手だとは思うがな」
「違いない……だけど、まあ良いんじゃない?」
「ああ。これで良いんだ」
そしてルカは一拍空けてから言う。
「願わくばそういう事を積み重ねている内に、友達を作ったりやりたい事を見付けたり。そうやって一旦色んな事をリセットして積み重ね治して、全部放り投げて俺に押し付けてくれればいいんだけどな」
「押し付ける……ね。結局アンタ達が何をやろうとしているのかは分からず仕舞いだから下手な事は言えないけどさ、それは……良い事なのかな? その点…なんだろ。立場的にもさ」
「俺も……誰も。文句なんて言わないさ。それがきっと一番良い……あの方の幸せを願っていたのは皆同じだったからな」
「……そっか」
「ああ。そうだよ」
と、そんなやり取りをしていた所で。
「で、此処からが問題の地点って感じだね」
「ああ。どうやらそのようだな」
道中。不自然な地点に……下へと降りる階段が用意されていた。
……踏み入れちゃいけないような雰囲気が凄い、なんかダンジョンの入り口とでも言いたいような階段が。
飛んできて結界を割られた。
……という事はだ。
「そうなったらお姫様がこっちに飛んでくる可能性があるって訳だね」
「ああ。さっきの男は転移魔術での脱出はできないかもしれないとは言っていたが、そもそもあの時だって俺の所に飛んでこれたんだ。あの方なら多分飛んで来れてしまう」
「……そりゃ大問題だね」
具体的にどういう理屈で飛んでこれるのかは知らない。
長距離の転移魔術なんて基本的に出発点と目的地を固定して初めて使えるような代物だと思うし、あの時あの場にああやって現れたの事態が正直意味分かんないんだけど……まあその辺の理屈をどうこう話し合っている場合ではなくて。
話すべきなのは、飛べるから生じる問題についてだ。
「巻き込みたくないんでしょ?」
「……そりゃそうだろ」
ルカは言う。
「本来一切の危険にも晒しちゃいけないお方なんだ。こんな厄介事に巻き込んでいい訳がない」
ただ、とルカは言う。
「それでも巻き込まれに来るかもしれない。例えまともに戦えるような状態じゃなかったとしてもだ」
「……いい子じゃん。それが王族の行動として正しいかって言われたら違うかもしれないけど」
だったら。
「だったら尚更戻った方が良いんじゃない? というかこっちに飛んでくるようなリスクが無かったとしても……そもそもそのお姫様の味方してやれるのってアンタだけなんだから、尚更こんな所で命掛けてられないでしょ」
「……」
ルカは少しだけ悩むように黙り混んだ後、それでも言う。
「いや、今更引けんさ。自分が危ないと思うような場に協力者一人を置いて引くような真似はできない。そんな事をすれば、それはそれであの方に顔向けできなくなる」
「……じゃあどうするの?」
「元より死なないように頑張る以外の選択肢は無いだろう」
「そのお姫様が飛んでくるかもしれないってのは?」
「……万が一ここから先に進んで力の供給が途絶えるような事があった場合、少しだけ時間をくれ。もし飛んでくるならかなり早い段階で近くに飛んでくるだろうから。その有無だけは確認したい。近くに来れば俺も探そうと思えば探せるからな」
「なるほど了解」
最悪の場合は合流するって訳ね
「まあ今のやり取りが全部杞憂で終わってくれるのが一番良いのだがな」
「そうだね」
ルカが弱体化さえしなければ、諸々の問題は問題になる前に終わってくれる訳だから。
……いや、でも冷静に考えたら最初からずっと問題があった気がするんだけど。
それをルカに聞いてみる。
「……ていうかちょっと疑問なんだけど、そもそもそのお姫様って一人にしておいていいの?」
私はルカが単独行動をしているタイミングで遭遇して今に至ってる訳だけど、そもそも単独行動をしている事自体あまり良くないんじゃないのかな?
そしてその問いにルカは複雑そうな表情で答える。
「……まあ、あまり良くは無いんだろうな」
だが、とルカは言う。
「今は万全ではないとはいえ、いざとなったら俺の所に逃げてこれる。まあ今来られると困る訳だが……とにかく、最低限のセーフティはある。だとすれば……あまりプライベートに干渉はしたくない。ただでさえ後にも先にも碌な事がねないんだ。何も無い時位は、俺なんかが縛り付けるのは良くないと思う。王族とか聖女とかそういう事の前に……年頃の女の子なんだから」
「なるほど、気ぃ使った結果な訳だ」
「立場上最悪の悪手だとは思うがな」
「違いない……だけど、まあ良いんじゃない?」
「ああ。これで良いんだ」
そしてルカは一拍空けてから言う。
「願わくばそういう事を積み重ねている内に、友達を作ったりやりたい事を見付けたり。そうやって一旦色んな事をリセットして積み重ね治して、全部放り投げて俺に押し付けてくれればいいんだけどな」
「押し付ける……ね。結局アンタ達が何をやろうとしているのかは分からず仕舞いだから下手な事は言えないけどさ、それは……良い事なのかな? その点…なんだろ。立場的にもさ」
「俺も……誰も。文句なんて言わないさ。それがきっと一番良い……あの方の幸せを願っていたのは皆同じだったからな」
「……そっか」
「ああ。そうだよ」
と、そんなやり取りをしていた所で。
「で、此処からが問題の地点って感じだね」
「ああ。どうやらそのようだな」
道中。不自然な地点に……下へと降りる階段が用意されていた。
……踏み入れちゃいけないような雰囲気が凄い、なんかダンジョンの入り口とでも言いたいような階段が。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる