最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

26 聖女さん達、危惧する状況の対策を立てる

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「ああ、あのお姫様ね……そういえばあの時もすぐ飛んできたっけ」

 飛んできて結界を割られた。
 ……という事はだ。

「そうなったらお姫様がこっちに飛んでくる可能性があるって訳だね」

「ああ。さっきの男は転移魔術での脱出はできないかもしれないとは言っていたが、そもそもあの時だって俺の所に飛んでこれたんだ。あの方なら多分飛んで来れてしまう」

「……そりゃ大問題だね」

 具体的にどういう理屈で飛んでこれるのかは知らない。
 長距離の転移魔術なんて基本的に出発点と目的地を固定して初めて使えるような代物だと思うし、あの時あの場にああやって現れたの事態が正直意味分かんないんだけど……まあその辺の理屈をどうこう話し合っている場合ではなくて。

 話すべきなのは、飛べるから生じる問題についてだ。

「巻き込みたくないんでしょ?」

「……そりゃそうだろ」

 ルカは言う。

「本来一切の危険にも晒しちゃいけないお方なんだ。こんな厄介事に巻き込んでいい訳がない」

 ただ、とルカは言う。

「それでも巻き込まれに来るかもしれない。例えまともに戦えるような状態じゃなかったとしてもだ」

「……いい子じゃん。それが王族の行動として正しいかって言われたら違うかもしれないけど」

 だったら。

「だったら尚更戻った方が良いんじゃない? というかこっちに飛んでくるようなリスクが無かったとしても……そもそもそのお姫様の味方してやれるのってアンタだけなんだから、尚更こんな所で命掛けてられないでしょ」

「……」

 ルカは少しだけ悩むように黙り混んだ後、それでも言う。

「いや、今更引けんさ。自分が危ないと思うような場に協力者一人を置いて引くような真似はできない。そんな事をすれば、それはそれであの方に顔向けできなくなる」

「……じゃあどうするの?」

「元より死なないように頑張る以外の選択肢は無いだろう」

「そのお姫様が飛んでくるかもしれないってのは?」

「……万が一ここから先に進んで力の供給が途絶えるような事があった場合、少しだけ時間をくれ。もし飛んでくるならかなり早い段階で近くに飛んでくるだろうから。その有無だけは確認したい。近くに来れば俺も探そうと思えば探せるからな」

「なるほど了解」

 最悪の場合は合流するって訳ね

「まあ今のやり取りが全部杞憂で終わってくれるのが一番良いのだがな」

「そうだね」

 ルカが弱体化さえしなければ、諸々の問題は問題になる前に終わってくれる訳だから。

 ……いや、でも冷静に考えたら最初からずっと問題があった気がするんだけど。
 それをルカに聞いてみる。

「……ていうかちょっと疑問なんだけど、そもそもそのお姫様って一人にしておいていいの?」

 私はルカが単独行動をしているタイミングで遭遇して今に至ってる訳だけど、そもそも単独行動をしている事自体あまり良くないんじゃないのかな?

 そしてその問いにルカは複雑そうな表情で答える。

「……まあ、あまり良くは無いんだろうな」

 だが、とルカは言う。

「今は万全ではないとはいえ、いざとなったら俺の所に逃げてこれる。まあ今来られると困る訳だが……とにかく、最低限のセーフティはある。だとすれば……あまりプライベートに干渉はしたくない。ただでさえ後にも先にも碌な事がねないんだ。何も無い時位は、俺なんかが縛り付けるのは良くないと思う。王族とか聖女とかそういう事の前に……年頃の女の子なんだから」

「なるほど、気ぃ使った結果な訳だ」

「立場上最悪の悪手だとは思うがな」

「違いない……だけど、まあ良いんじゃない?」

「ああ。これで良いんだ」

 そしてルカは一拍空けてから言う。

「願わくばそういう事を積み重ねている内に、友達を作ったりやりたい事を見付けたり。そうやって一旦色んな事をリセットして積み重ね治して、全部放り投げて俺に押し付けてくれればいいんだけどな」

「押し付ける……ね。結局アンタ達が何をやろうとしているのかは分からず仕舞いだから下手な事は言えないけどさ、それは……良い事なのかな? その点…なんだろ。立場的にもさ」

「俺も……誰も。文句なんて言わないさ。それがきっと一番良い……あの方の幸せを願っていたのは皆同じだったからな」

「……そっか」

「ああ。そうだよ」

 と、そんなやり取りをしていた所で。

「で、此処からが問題の地点って感じだね」

「ああ。どうやらそのようだな」

 道中。不自然な地点に……下へと降りる階段が用意されていた。
 ……踏み入れちゃいけないような雰囲気が凄い、なんかダンジョンの入り口とでも言いたいような階段が。
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