最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

33 聖女さん達VS影の男Ⅱ

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 状況が状況だし、意識を奪う前に情報を引き出すのが正しい選択なのかもしれない。
 実際私達は大雑把な情報しか持っていないから、絶対色々知っているであろうコイツら……いや、コイツからは聞き出せるだけの話を迅速に聞き出さないといけないと思う。

 たけどそれは最後の一人になってからで良いよね。
 ……まずは五人沈める。

 そして私達は同時に動いた。
 床から生える黒い棘を回避しながら、指輪持ちの男との距離を詰め拳の間合いに入る。
 やる事はシンプルだ。

 拳をこのまま鳩尾に叩き込む。
 それでまずは一体潰す。

 だけどその直前、目の前の男が床に張られている黒い何かを纏った。
 自身の体をコーティングするように。


 具体的にそれがどういう効力を持っているのかは分からないけれど、今更止まれない。

「っらあ!」

 そのまま男の鳩尾に拳を叩き込み、殴り飛ばす。
 殴り飛ばされた男は床をワンバウンドしてから壁に叩きつけられる。
 有効打。
 だけど。

「……固った」

 拳から向こうの頑丈さを訴えるヒリヒリとした痛みが伝わってくる。
 まあだからといって今の一撃で私の指がイカれたりとかはしてないんだけど……それでもイカれてないのは向こうも同じっぽい。
 おそらく別の個体から放たれたであろう棘の一撃をバックステップで躱しながら、殴り飛ばした男と、同じようにルカに弾き飛ばされた男へと意識を向ける。

 ……うん、起き上がってきたね。

「「「「「「ふははッ! おいおい! 速さの割に攻撃が軽いんじゃあねえか!?」」」」」」

 言いながら、起き上がった男達も構えを取り、続ける。

「「「「「「やっぱさっきの敗北はアウェイだったからなんだよなぁ! 遠隔操作もこの距離ならやりやすい! 部屋に張られた魔術で出力強化も遠隔補助もバッチリだぁ!」」」」」」

 ……ほんとペラペラと手の内喋るなコイツ。
 アホ丸出しだよ。
 ……しかし遠隔補助はともかく出力強化ね。
 コイツの話を鵜呑みにするとしたら、この空間にいる指定した相手の魔術の出力を増強するって感じかな。


 ……なんだその無茶苦茶な魔術。


 冗談抜きで自分以外の誰かに強化魔術を掛けるのは難しい。
 そして目の前の六人は操られているだけでそれぞれ別々の人間で、影響下にあるのかも分からないけれど、さっきまでの雑魚も同じ人間なんて一人もいなくて。
 そういう違う個体に二人三人じゃなくもっと……下手すれば何十人何百人単位に雑に強化魔術を付与する。

 効果量はともかくとして、やろうとしている事のコンセプトが無茶苦茶すぎるんだ。

 ……まあそれをやった相手はこの馬鹿じゃないだろうね。
 これを操ってる奴に、こんな術式を会得できる知性があるとは思わないし。
 ……私でもまずやれないような事を、目の前の馬鹿がやっているとは思わないし。

 ……だからまあ、コイツは中ボスって訳だよ。

「「「「「「戦いはなぁ、攻撃食らっても効かなきゃ負けねえんだよなぁ! つまりお前らは早いだけの無能オブ無能! 俺が最強……ですッ!」」」」」」

 ……ただシンプルに腹立つ馬鹿な中ボスだよ。

「「「「「「……っと、この感じだと六人同時にやれるな! いやぁ、戦いの中で成長してんねえ!」」」」」」

 と、次の瞬間六人全員が黒い影のような物を纏う。
 これで全員の防御力が跳ね上がった訳だ。

「「「「「「さあ蹂躙開始だぁ!」」」」」」

 と、一人でというか六人で無茶苦茶盛り上がってる中でルカが冷静に私に言ってくる。

「で、ああ言っているがどうする?」

「んなもんもうちょっと力入れて殴ればいいでしょ」

「そう言うと思った」

 言いながら拳を握る。

「「「「「「遠距離で当たらねえなら距離詰めっぞ! フォーメーション2! いくぞおおおおおおおおおおッ!」」」」」」

 うるさい声を上げながら、四人が接近する前衛担当。
 そして残り二人が距離を取ってこれまで通りの攻撃をするというようなフォーメーションを組んで、黒くコーティングされた四人が飛び掛かってくる。
 それに……私達も突っ込んだ。

 迎え撃つ。

 そして距離を詰め、向こうが攻撃を放ってくる前に……まず目の前の一人に、さっきよりも力を込めた拳を打ち込んだ。
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