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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女達、血の気が引く
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アンナとルカが謎の強者と対峙したタイミングから時刻は僅かに遡り、地上某所。
(やっべえ……い、生きた心地しねえんすけど……ッ!)
シズクは高そうなソファの上に小さく座り、血の気が引くのを感じながらそう考えていた。
右隣では同じようにミカがやや下を向いて怯えるように座っている。
ついでに言えば先程まで戦っていた、操られていた男も立ってはいるものの同じ感じだ。
違うのは、シズクの左隣に座り回復魔術での治療を受けながら、ソファーの隣に立つチンピラみたいな男達と会話するシエルただ一人。
「お前いっつもいっつもトラブルばっか持ち込みやがって! どういう生活送ってたらそんな事になんだよ!」
「このアルティメット巻き込まれガールがよぉッ!」
「とりあえず何かあったら俺達の所持ってくれば良いと思ってねえか!? 俺達は堅気のお悩み相談所じゃねえんだけどぉ!? ……多分なぁ!」
「まあまあ、その辺は持ちつ持たれつって事で。ウチが偶然持った情報がそっちの助けになった事も結構あった訳だしさ」
そんな風にヘラヘラと話している相手は、マフィアの構成員である。
自分達の周りに立っているのもマフィアの構成員である。
……そして此処はマフィアの事務所である。
(さ、さっきの戦いよりもヤバい感じしかしない……)
こうなるに至った経緯は割とシンプルだ。
シズクは血の気が引いたまま、これまでの事を思い返す。
◇
あの戦いの後、シエルの最低限の応急処置を終えてから、水面下で行われている最悪世界が滅ぶ何かを止める為の仲間集めへと動きだした。
頼れる相手全部に頼る。
そうした考えの元、まず向かったのはアンナとルカが居る筈の喫茶店だった。
結局シズクも迷いはしたが、シエルの案に乗る形でアンナ達を頼る事にした訳だ。
何もしなければ結局危険な目に、それも今よりもっと手の付けられない危険な形で合わせる事になりかねないから。
此処は頭を下げて頼ってみる事にしたのだが……時既に遅し。
そこには既に二人の姿は無かった。
そして明らかに何かが起きていた店内で話を聞くと、行方不明になった子供を探しに行ったとの事。
「これあっちゃん達、現在進行形で巻き込まれてるね」
「そ、そうみたいっすね」
「あれだけの騒ぎで、トラブルにすぐ首を突っ込むルカ君がこっちに来なかったのはそういう事か……納得」
「二人共、こっちのトラブルには気付かなかったみたいっすね」
「って事はなんだ? お前らが頼ろうとしていた相手は、二人だけで敵のアジトに突っ込んでいっちまったのか!? それマズいんじゃ……」
「まあマズいっすけど、それでもボク達四人で突っ込む場合と比べれば大丈夫っすよ」
「多分万全のルカ君なら人質が居ても速攻で操られていたあなたを倒せていたと思う。その位には強いから」
「あっちゃんと同じくらい強いって考えると……うん、二人で組めば無敵感あるね」
「マジか……じゃあ頼んだ俺が言うのもなんだが俺達が何もしなくても、一件落着みてえな事に……」
「……まあ、なるかもしれない」
そう言った後、だけど、とシエルは言う。
「でもそうはならないかもしれない。それに既に首を突っ込んでいるからこそ、二人に何かあった時に助けてあげられるようにする為にも戦力が居る。戦力過多ならそれはそれできっと悪くない筈」
「……そうっすね」
今回の件はあまりにもスケールが大きい。
だからおそらくこの世界の中でも最強格の二人が組んだとしても、危険な戦いかもしれない。
そもそも勝てるかも分からないし、勝てたとして怪我をしないという確信がある訳でもないから。
だとすればこのまま何もしないという選択を取れる理由なんて何処にもない。
「なら仲間探し続行っす……あ、すみません、ちょっと電話借りてもいいっすか?」
アンナが既に動いていて、その上で更に誰かに頼るとして。
自分の人脈の中で頼れそうな相手を考えると、まず真っ先に声を掛けるのは彼女達になる。
ステラとシルヴィだ。
実はシルヴィの新居の連絡先はまだ知らないのだが、ステラの場合は住み込みで働いているお店の番号が分かる。
だからそこに連絡してステラに繋いでもらおうと思った訳だが……結局、自分達が同時期に追放されたように、妙な所で偶然が重なる。
一通り話を終えて受話器を置いてシエル達の元へと戻ると、協力者の男が聞いて来る。
「何処に電話してたんだ?」
「ステラさん……ああ、ボクの仲間の所っす。ボクと此処に居た筈の人と今連絡を取ろうとしてた人と後一人で、冒険者パーティー組んでるんす」
「なるほど……で、どうだった?」
「それが……此処と同じ状況っす」
「ステラさんって……多分、シルヴィって人と一緒に居た人だよね。私と殴り合った……」
「殴り合った!?」
驚愕する男は置いといて、ミカは言う。
「それで、同じ状況って!?」
「向うも此処と同じような感じで子供が居なくなって、ステラさんが飛び出していったみたいで……」
「……てことは三人突入してる訳だ……これもしかしてシルヴィちゃんも巻き込まれてたりしないかな?」
「……連絡先分かんないんで調べようがないっすけど……なんかそんな感じはするっすね」
なんか単独で巻き込まれているか、アンナとルカかもしくはステラと偶然合流していてもおかしくない。
これまでの事を考えると、十分にあり得る。
……とにかく。
「……で、これからどうするっすか? 他に誰か頼れそうな人知り合いにいるっすか?」
まさか冒険者ギルドの先輩方を巻き込む訳にはいかないので、自分が頼れそうな相手はこれで全部だ。
「私はそもそもルカ君以外に頼れる人はいないし……」
「俺もいねえから、お前らに頼んだ訳だしな」
ミカも男もこれ以上頼る相手が思いつかないらしい。
……となればこの四人で突入という事になるのだろうか?
そう考えているところでシエルが言う。
「……いる。こういう時無茶苦茶頼れる人達が」
「マジっすか!? それってどんな人達なんすか!?」
シズクの問いに一拍空けてからシエルは答える。
「この国で一番敵に回しちゃいけない人達」
◇
と、そんなやり取りの末にその人達の居る場所へと急ぎ足で移動を始めて結果辿り着いたのがこの場所だ。
そしてこの場所が恐らくマフィアの事務所で、まさしく敵に回しちゃいけない人達の居る場所だと知ったのは、もう今更後には引けないタイミングで。
(というかこの状況がまさしく、事件に巻き込まれてるみたいな感じなんすけど……ッ!)
結果軽く大事件である。
(やっべえ……い、生きた心地しねえんすけど……ッ!)
シズクは高そうなソファの上に小さく座り、血の気が引くのを感じながらそう考えていた。
右隣では同じようにミカがやや下を向いて怯えるように座っている。
ついでに言えば先程まで戦っていた、操られていた男も立ってはいるものの同じ感じだ。
違うのは、シズクの左隣に座り回復魔術での治療を受けながら、ソファーの隣に立つチンピラみたいな男達と会話するシエルただ一人。
「お前いっつもいっつもトラブルばっか持ち込みやがって! どういう生活送ってたらそんな事になんだよ!」
「このアルティメット巻き込まれガールがよぉッ!」
「とりあえず何かあったら俺達の所持ってくれば良いと思ってねえか!? 俺達は堅気のお悩み相談所じゃねえんだけどぉ!? ……多分なぁ!」
「まあまあ、その辺は持ちつ持たれつって事で。ウチが偶然持った情報がそっちの助けになった事も結構あった訳だしさ」
そんな風にヘラヘラと話している相手は、マフィアの構成員である。
自分達の周りに立っているのもマフィアの構成員である。
……そして此処はマフィアの事務所である。
(さ、さっきの戦いよりもヤバい感じしかしない……)
こうなるに至った経緯は割とシンプルだ。
シズクは血の気が引いたまま、これまでの事を思い返す。
◇
あの戦いの後、シエルの最低限の応急処置を終えてから、水面下で行われている最悪世界が滅ぶ何かを止める為の仲間集めへと動きだした。
頼れる相手全部に頼る。
そうした考えの元、まず向かったのはアンナとルカが居る筈の喫茶店だった。
結局シズクも迷いはしたが、シエルの案に乗る形でアンナ達を頼る事にした訳だ。
何もしなければ結局危険な目に、それも今よりもっと手の付けられない危険な形で合わせる事になりかねないから。
此処は頭を下げて頼ってみる事にしたのだが……時既に遅し。
そこには既に二人の姿は無かった。
そして明らかに何かが起きていた店内で話を聞くと、行方不明になった子供を探しに行ったとの事。
「これあっちゃん達、現在進行形で巻き込まれてるね」
「そ、そうみたいっすね」
「あれだけの騒ぎで、トラブルにすぐ首を突っ込むルカ君がこっちに来なかったのはそういう事か……納得」
「二人共、こっちのトラブルには気付かなかったみたいっすね」
「って事はなんだ? お前らが頼ろうとしていた相手は、二人だけで敵のアジトに突っ込んでいっちまったのか!? それマズいんじゃ……」
「まあマズいっすけど、それでもボク達四人で突っ込む場合と比べれば大丈夫っすよ」
「多分万全のルカ君なら人質が居ても速攻で操られていたあなたを倒せていたと思う。その位には強いから」
「あっちゃんと同じくらい強いって考えると……うん、二人で組めば無敵感あるね」
「マジか……じゃあ頼んだ俺が言うのもなんだが俺達が何もしなくても、一件落着みてえな事に……」
「……まあ、なるかもしれない」
そう言った後、だけど、とシエルは言う。
「でもそうはならないかもしれない。それに既に首を突っ込んでいるからこそ、二人に何かあった時に助けてあげられるようにする為にも戦力が居る。戦力過多ならそれはそれできっと悪くない筈」
「……そうっすね」
今回の件はあまりにもスケールが大きい。
だからおそらくこの世界の中でも最強格の二人が組んだとしても、危険な戦いかもしれない。
そもそも勝てるかも分からないし、勝てたとして怪我をしないという確信がある訳でもないから。
だとすればこのまま何もしないという選択を取れる理由なんて何処にもない。
「なら仲間探し続行っす……あ、すみません、ちょっと電話借りてもいいっすか?」
アンナが既に動いていて、その上で更に誰かに頼るとして。
自分の人脈の中で頼れそうな相手を考えると、まず真っ先に声を掛けるのは彼女達になる。
ステラとシルヴィだ。
実はシルヴィの新居の連絡先はまだ知らないのだが、ステラの場合は住み込みで働いているお店の番号が分かる。
だからそこに連絡してステラに繋いでもらおうと思った訳だが……結局、自分達が同時期に追放されたように、妙な所で偶然が重なる。
一通り話を終えて受話器を置いてシエル達の元へと戻ると、協力者の男が聞いて来る。
「何処に電話してたんだ?」
「ステラさん……ああ、ボクの仲間の所っす。ボクと此処に居た筈の人と今連絡を取ろうとしてた人と後一人で、冒険者パーティー組んでるんす」
「なるほど……で、どうだった?」
「それが……此処と同じ状況っす」
「ステラさんって……多分、シルヴィって人と一緒に居た人だよね。私と殴り合った……」
「殴り合った!?」
驚愕する男は置いといて、ミカは言う。
「それで、同じ状況って!?」
「向うも此処と同じような感じで子供が居なくなって、ステラさんが飛び出していったみたいで……」
「……てことは三人突入してる訳だ……これもしかしてシルヴィちゃんも巻き込まれてたりしないかな?」
「……連絡先分かんないんで調べようがないっすけど……なんかそんな感じはするっすね」
なんか単独で巻き込まれているか、アンナとルカかもしくはステラと偶然合流していてもおかしくない。
これまでの事を考えると、十分にあり得る。
……とにかく。
「……で、これからどうするっすか? 他に誰か頼れそうな人知り合いにいるっすか?」
まさか冒険者ギルドの先輩方を巻き込む訳にはいかないので、自分が頼れそうな相手はこれで全部だ。
「私はそもそもルカ君以外に頼れる人はいないし……」
「俺もいねえから、お前らに頼んだ訳だしな」
ミカも男もこれ以上頼る相手が思いつかないらしい。
……となればこの四人で突入という事になるのだろうか?
そう考えているところでシエルが言う。
「……いる。こういう時無茶苦茶頼れる人達が」
「マジっすか!? それってどんな人達なんすか!?」
シズクの問いに一拍空けてからシエルは答える。
「この国で一番敵に回しちゃいけない人達」
◇
と、そんなやり取りの末にその人達の居る場所へと急ぎ足で移動を始めて結果辿り着いたのがこの場所だ。
そしてこの場所が恐らくマフィアの事務所で、まさしく敵に回しちゃいけない人達の居る場所だと知ったのは、もう今更後には引けないタイミングで。
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