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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

ex ギルドの部長、見かけ通り

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 シズクもクライドも。目の前で何が起きているのかをイマイチ把握できていない。
 そんな中で混乱するシズクに追い打ちを掛けるようにマルコが言う。

「てめぇふざけんなよ馬鹿ボス! 客人の前でその呼び方すんの止めろっつてんだろうが! つーかどこでも止めろ! 俺下の連中に偶にマコっちゃんさんって呼ばれんだからな! お前が飲み会の時に始めたノリの所為で!

「マコっちゃ……あ、兄貴! 茶菓子持ってきました!」

「おいお前今言いかけただろ!」

「マコっちゃんさん飲み物ついできました!」

「お前はせめて隠す意思を見せろォ!」

 と、そんなコントのようなやっり取りの中で真っ先に出てきた単語。

 ……ボス。
 マフィアからボス呼ばわりされている。
 つまりだ。

「ぶ、部長ってマフィアのボスだったんすか……?」

「…………おう、まあ形式上は」

「ネタで言ってた事が……ネタじゃ無くなってるじゃないっすか……」

「まあ……そうだな」

 とても微妙な雰囲気になる二人を交互に見てからマルコは言う。

「部長……あぁ、そういう事か」

 そしてクライドは片手で頭を抱える。

「くそ……俺はシエルの馬鹿が来てる事しか聞いてねえぞ……なんでコイツが此処に……」

 それに対し、シエルはシズクの肩にポンと手を置いて言う。

「友達」

「友達こんな所に連れてくんなよお前ぇ……」

 ごもっともである。
 だがそう言った後、少し真剣な表情でクライドは言う。

「でもまあ連れてこないと駄目な状況になってる訳だな。お互い大変な状況って訳だ」

「いやほんとマジで大変な事になってるんですよマコっちゃんさん!」

 そう言ってニット帽を被った男も部屋に入ってくる。

「実は……」

「世界が滅ぶかもしれないっていう馬鹿みたいな状況になってるわけだろ?」

「俺が聞いた話じゃここら一帯が吹き飛ぶかもって話だったが……ニュアンスの違いか。で、マコっちゃんがなんでそれを……まさか」

 そう言って改めてシズク達の方へと視線を向けるクライドにマルコは言う。

「コイツらとニック。どちらも同じ一件に巻き込まれてたって訳だ」

「ってソイツ俺の事ボコった奴じゃねえか! いやまあ操られてたんだろうと思うけど!」

「……その節は、悪かったな」

「こっちこそ俺が強けりゃそこで食い止められたのに……なんがごめんな!」

「そこ謝るのか?……本当にコイツらマフィアなのか? ……マフィアってなんだっけ?」

 男はそんな疑問を口にするが、シズク的には妙に腑に落ちている。

(ぶ、部長がボスなら……なんんかこう……こうなるのも分かるっすよ)

 どうりでギルドと似たような雰囲気を感じる訳だ。

 まだ詳しい事は何も聞けていない。
 だけど本当にクライドがマフィアでしかもボスだったとするならば、今まで自分達に見せてきたのは表側の一面に過ぎない。
 裏側は。表以外の事は何も分からない。
 だけど根っ子の人間性なんてのはそう簡単に変えられる者じゃなくて。
 隠し通せる物でも無くて。

 実際の所の立場がどうであれ、自分達に見せてきたクライド・エバンスの人間性は本物だったのだろう。

 そしてシエルの紹介で、クライドについて行ってる人たちだ。

(……一応はっきりしたっすね。立場がどうであれ、この人達は信用できる)

 だからその辺で怯える事も無いし、悩むことも無い。

 ……まあ、それはそれとして。

(でもなんで部長がマフィアのボスなんかやってるんすかね!?)

 それは気になって仕方がなかった。
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