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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

39 聖女さん達、死闘を繰り広げる Ⅰ

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 各々が臨戦態勢を取った次の瞬間、圧倒的な威圧感を放つ男が動き出した。

 先程戦った相手のように指輪を出してきた訳ではないのに……一瞬で部屋が黒く染まった。
 指輪の力じゃなくて……自力でそれをやったんだ。

 そしてそうやって部屋に細工をしたのなら、次に取られる行動は大体予測できる。

 さっき散々相手にしてきた……影を使った攻撃だ。

「「……ッ!?」」

 私達は自分たちの周囲から生えて伸びてきた影の棘を辛うじて躱す。
 辛うじて。
 ああ、こんなのは別物だよ。

 初速からなにまで、さっきの奴と格が違いすぎる!


 ……でも、躱せた。
 ルカも躱している。
 この攻撃ならなんとか回避できる!

 でもなんとかだ。辛うじてだ!
 防戦が続くと崩される!
 だから今度はこっちから攻めて一気に潰す!

 ……なんて事を考えていた時だった。

 ルカが攻撃を躱したと確認する為に向けた視線の先。
 空を切った影で作られた棘のような物。

 ……そこに魔方陣が刻まれている。
 それも……外れた全ての影の棘に。

 それが何を意味するのか。

「ルカ!」「ベルナール!」

 私達はほぼ同時に叫び、元々目の前の男に対して打ち込む筈だった攻撃魔術を互いの近くに生えた影に打ち込み破壊した。
 ……てことは私の方にも出てたか。
 ルカが私の方も破壊してくれなかったら、正直ヤバかったかもしれない。

 ……魔術で生成した物を媒体にした魔術の使用。

 ルカがスティック状の結界を使ってやっていたような奴と同じ原理。

 それを今の鋭い攻撃に組み込んできていた。
 ただでさえ単一で一級品な攻撃魔術にだ。

 もし発動前に破壊できていなければ、どうなっていた?

 と、考えている内に。

「「……ッ!?」」

 一瞬の内に先程の倍近い数の棘が再び私達を襲う。
 それも再び躱すけど……今度は明らかに私達に当てる気のない位置からも生えてきていて。
 その全てには当然のように魔方陣が刻まれている。


 ……くそ、まずいかも。
 さっきは攻撃するつもりで準備していた魔術で破壊した。
 だけど今はそれを撃った直後だ。迎撃は間に合わないと思う。
 そして影を媒体とした魔術がメインとばかりな位置取り。

 魔術の発動は止められない。
 何が来るかは分からないけれど、何かが私達に襲ってくる。

 ……落ち着け。切り替えよう。
 発動を止められないなら、もう仕方ないし。これ以上考えるのはやめよう。
 なんとか切り抜けて、あの男に一発叩き込む。

 全神経を集中させてそれだけを考えよう。

 そして結界の準備をしながら私達は一歩前に踏み出す。
 立ち止まらずに、駆け抜けそしてぶん殴る。
 その為に。

 そして次の瞬間、魔術が発動した。

 発動したのは高威力の攻撃魔術。
 それが一つたりとも被らず、影一つ辺り一種類。
 攻撃魔術の見本市みたいな感じに発動する。

 その矛先は……八割方ルカの方へと向いた。

「……は?」

 ルカの周りで発動した魔術は全て。
 私の周りで発動した魔術ですら、半分以上ルカの方へと牙を向ける。

 冗談抜きで死んでもおかしくないような一撃が全て。
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