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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

54 聖女さん達、脱出

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 分からない事を分からないままにしておくのは何か嫌だけど、流石に少し切り替えないといけない。

「よーし、皆危ないから俺達から離れないようになー」

 今は子供達を無事此処から出す事に意識を向けた方が良い。
 ……大体ぶっ倒してきたけど、まだどこに危険があるか分かったもんじゃないからね。
 そんな訳で何が有っても子供達を守れるような陣形っぽいのを組んで、私達は来た道を戻っていく。

 ……しっかし地上に戻ってからこの子達をどうしよう。
 とりあえず憲兵でも頼ろうかな?
 信頼できる所に託さないと、全員を親元に返すのはさ流石に私達には荷が重いよ。
 それこそ喫茶店で待ってるお母さんの元には直接連れて行った方が良い気がするけど……。

 と、そんな事を考えながら子供達の歩調に合わせてゆっくり進んでいき、それなりに時間を掛けて先程皆に助けられてなんとか生き残った、激戦を繰り広げた部屋まで辿り着いた所で……思いもよらない事が起きていた。

「あれ、さっき拘束した人居なくなってないっすか?」

「ほんとだ」

 さっきシルヴィの拘束魔術で動けなくした男の姿が消えて無くなっている。

「まさか自力で解いて一人で脱出したのか?」

「い、いや、あの拘束魔術はそう簡単にどうにかなるようなもんじゃないですよ……身を持って知ってます」

 ミカがやくゃ震えた声でそう言い、シルヴィも少々怪訝な表情で続ける。

「あのルカって人に破られたのは、破られるまでの経緯を考えたら分からないでも無いですけど……完全初見でこの短期間で破られるってのは理解できないですね」

 だけど、実際居なくなってる。

「まさか失敗したとかか?」

「いや、確かに成功してましたよ……いや、でもだとしたらなんで……」

 シルヴィが考えるように黙り込むけど、これもまた答えは出てこない。
 また一つ謎が増えただけで、それを抱えたまま進んでいくしかない。

 そして増えたのは面倒事。
 まあ増えたとういうより、元々あった事に今更気付いただけなんだけど。

 ……この先にも倒れている人とかが一杯居る訳で、その人達全員が自力で脱出できるとは限らない訳だから、要救助な人が一杯居るって事になる。
 それも私達でなんとかしないといけないのかな?
 いや、誰かがしないといけないんだろうけど……ちょっとキャパオーバーじゃない?

 なんか強い敵と戦うのとは別ベクトルで大変になってきたんだけど。

 ……あ、そうだ。
 結局私達で解決しちゃったけど、一応応援を呼んでるんだった。
 最初に私達が倒したニット帽のマフィアの男に、ルカが応援を頼んでいる。

 あの名前聞き忘れたニット帽が仲間読んで此処に来てくれていれば、ある程度その辺り任せられるんじゃないかな?
 うん、計画自体は私達が……多分、潰した訳だし、その辺りは手伝って貰いたい。

 そう考えながらそれからも地上目指して進んでいると、やがてある程度進んだ所でまさしく考えていた人物が私達の目の前に現れた。

「ああ良かった。お前らも無事だったか!」

「あ、アンタはあの時の……」

 現れたのはまさしくルカが応援を頼んだニット帽の男と、その他おそらくお仲間と思われる方々が数名。

「約束通り応援を連れてきた訳だが……その予数だと本丸は潰したみてえだな」

 どこか安心したようにニット帽の男が言った所で、その隣のお男が言う。

「良かった、二人共あれから大きな怪我とかしてなさそうで……いや、ほんと俺が巻き込んだ訳だから、いなくなったって聞いた時は焦ったぞ」

「ああ、ケニーさん」

「そっちも此処まで無事に来れたみたいで何よりっす!」

 ん? なんかシズクとミカと知り合いっぽい?

「知り合い?」

「ああ、そもそもボク達が巻き込まれたのって、操られたケニーさんと戦ったからなんすよ」

「……なるほど」

 なんとなくその時の状況が浮かんでくる。
 ……多分しーちゃんが首を突っ込んだんだろうなぁ。

 と、そこでシズクが問いかける。

「……っていうか此処まで来たのって皆さんだけっすか? あの、他の人は……えーっと、ぶ……いや、ニックさん達のボス達は……」

 その問いにニット帽の男が反応する。

「いや、ボス達とは別行動してるだけで別に何かあったって訳じゃねえよ。ボス達はボス達でやる事があって動いてて、俺達はお前らに脱出経路案内する為に先に行けって言われて来たんだ。俺やケニーさんならある程度内部の構造を把握してるからな」

「いや、悪いけどよ、脱出経路なら把握してるぞ」

「来た道を戻ればいい訳ですからね」

 ニックと呼ばれたニット帽のマフィアの言葉にステラとシルヴィが反応する。
 私やルカは結構滅茶苦茶な突入の仕方をした訳だけど、少なくとも二人は真っ当なルートで突入してきたんだろう。
 だからまあ、そういう要因なら別にいらないかな。
 まあ子供見てくれる人が増えるのは助かるけど。

 だけど食い下がるようにニックは言う。

「いや、俺達なら近道だって分かるし……な、ケニーさん!」

「あ、ああそうだな……」

「だから俺達に着いて来て欲しいんだ。ほら、そこの通路はまっすぐじゃなくて左に曲がろう」

「ああ、それがいい」

「「「「「……」」」」」

 いや、なんか強引すぎない?
 なんか私達を元来たルートで帰らせたくないような……そんな強い意思みたいなのを感じる。
 ……滅茶苦茶怪しいんだけど。

 ……とはいえ。

「……分かった。皆もそれで良い?」

 実際内部構造に詳しいのは向うだし、子供達をあまり長時間歩かせるのも良くないだろうし……多分敵ではないし、何かあってもあんな化物相手じゃなかったら対処できるし。
 此処は素直に聞いておいても良いかもしれない。
 口論する気力もあんまりないしね。

「まあ俺は別に良いけど……正直来た道引き返してたら結構距離あるしな」

「そうですね。子供達歩かせるにはちょっと遠すぎる気がしますし」

「ボクもそれでいいっすよ」

「私も」

 他の四人も頷いてくれる。

「よ、よし! じゃあ出発だ!」

 そう言ってニックとケニーが先頭に立ち歩き出す。
 ……でもこの二人と、一緒に居る多分マフィアの人達、絶対何か隠してるんだよね。
 悪意みたいなのは感じられないけど……それでも何か。
 ……ほんと、分からない事だらけだよ。
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