最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

53 聖女さん達、事件解決?

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 あの敵が言ってた通り、進んだ先に子供達は居た。
 その部屋に設置されていた檻の中には想定通り数十人近い人数の子供が押し込まれていて、改めて自分達が本当に碌でも無い連中と戦っていたんだなって事を実感させられる。
 ……させられるんだけど。

 ……なんだか皆、妙に落ち着いてない?

「みんな、怪我無いか!? 助けに来たぞ!」

 やや困惑する私よりも先に、ステラが子供たちにそう声を掛ける。
 すると子供達がパっと明るい表情を浮かべて声を上げ、その内の何人かが言う。

「ほんとに助けに来てくれた!」

「言ってた通りだ!」

「言ってた通り? ……んん?」

 首を傾げるステラ。
 私達も意味が分からず同じような反応になる。
 ……言ってた通り?
 誰が?
 誰かが私達が来るみたいな事を言っていたのかな?
 ……誰が?

「えーっと、誰かが此処にいたのか?」

「白い服を着た男の人!」

「白い服の人?」

「顔は隠してたけど、男の人! 今から強いお姉ちゃん達が助けに来るから、もうちょっとだけ頑張ってって!」

「白い服……」

「白衣……っすかね?」

「白衣……って事はアイツか」

「この状況だとそうなる……のかな?」

 断定はできないけれど、私達がさっき戦っていた相手がまさしく白衣を着ていた。
 そしてあれだけの実力のある魔術師なら言葉だけではなく、それらしい魔術で子供の心を落ち着かせる事位簡単にできると思うから……まあその白い服の男に当てはまる。
 いや、アイツが男かどうかは分かんないけど……この状況で白衣って言われると……いや、でもアイツが多分主犯なんだよね。
 ……それこそ実力的にも、そうとしか考えられないし。

 だったら……そうだと仮定したら。
 ……マジでアイツは何を考えてるんだろう。
 行動の一つ一つに理解が及ばない。

 ……いや、でも考えたって仕方が無いか。
 多分その答えは此処には無いし、その男が言う通り私達はこの子達を助けにきたのだから。
 だったらやる事は決まってるよね。

「……とりあえずこの檻壊しませんか?」

「そうだね」

 ミカがそう言った所で各々考える事を止め、檻を壊しに掛かる。
 当然激しい攻撃を加える訳にはいかないから慎重にやらないと。

「さて、どうやって壊すかな」

「だな」

 私とステラがそう呟くと、シルヴィが言う。

「普通に力任せに壊せばよくないですか? ぐってやったら子供が通れる位の大きさにひん曲がりそうですけど」

「いや、それは……ちょっとアレじゃない? ビジュアル的に」

「さっき思いっきり扉蹴り飛ばしてた人が何言ってるんですか」

「いや、まあそれはそうだけども」

 なんというか、流石に子供に見られてるって考えると、もうちょっと綺麗な感じにやりたくない?
 自分で言うのはなんだけど……ああいうバイオレンスな感じの姿はあんまり見せたくないよね。
 なんかヤバい人だって思われかねないし!

 やるならもうちょっとそれっぽく。

 軽く深呼吸して……よし。

「えい」

 風を操作して綺麗に丁寧な感じで檻を切断する。
 無理矢理力でぶっ壊すよりこの方がいいでしょ!

「「「お姉ちゃん凄い!」」」

「いやいや、そんな事無いよ」

 そう言ってちょっとだけドヤる。
 うん、力ずくで物理でぶっ壊してたらこうはならなかったんじゃないかな。
 というかアレだ。ちょっと自信失いそうな事の連続だったから、そんな事言われるだけでなんか嬉しいや。
 ……さて。

 壊す物を壊したら子供達は動き出す。
 ……で、後は子供達をうまく纏めて此処を出たら……一応、一件落着って事で良いのかな?

 ……いや、それだけじゃ若干足りないかな。
 一つやっておかないといけない事がある。

「よし、じゃあこんな所さっさと出ようぜ」

「あ、でもどうします? これだけ人数居るとまとめるの大変ですね」

「そうっすね。まあ五人も居るんでその辺うまい事やってくっすよ」

「あーごめん。皆でいつでも行けるようにうまい事纏めといて貰っても良い?」

「何かあったんですか?」

 ミカに問いかけられたので答える。
 今回の一件を一応の解決とする為にやらなければならない事が有る。

「反対側の部屋はまだ見て無かったよね? ……一応本当に今回の件が終わってるかどうかを確認しないと」

 あの白衣の敵はこちらの方から出てきた訳で……つまりこの辺りのどこかに居た訳で。
 この辺りで何かをしていた訳で。

 だったらちゃんと調べておかないと、致命的な何かが起きないとも言い切れないから。

「あー確かに調べ解かないと駄目かもしんないっすね」

「だな。じゃあ頼むわアンナ。この中で一番そういう事に詳しそうなのお前だしな」

「うん。任せて……分かるか分かんないけど」

 実際此処の魔術の解析とかは全くできなかったしね。

「あーじゃあ誰か此処三人でうまく纏める感じで。誰かアンナさんに着いて行った方が良いかもしんないっすね。何有るか分かんないっすから」

「あ、じゃあ私が行きますよ。ほら、皆さんちゃんと明確な意思持って此処に来てますけど、私だけステラさんの手伝いみたいな感じで来ちゃってるんで。だったら子供達の相手するよりもーって感じですし」

「あ、じゃあシルヴィお願いね」

「はい!」

「じゃあ部屋の外で集合って事で良いか?」

「うん、それで」

 そんなやり取りを交わして、私とシルヴィは別室へと足取りを向ける。
 ……向けて、とりあえず大丈夫そうって事は理解できた。

 あの大部屋も。
 子供達が監禁されていた部屋も。
 別室も。

 理解できるできない以前に何の術式も張られていなかった。
 一切の痕跡も残されていなかった。

 ……あの敵の言葉を真に受けるとすれば、本当に綺麗に撤退された訳だ。

 一応一件落着なのかもしれないけれど……死ぬ程もやもやが残る。


 ああでも一つだけ、術式以外に敵の痕跡として残っていた物が一つ。

「あ、アンナさん、何か落ちてますよ」

「ほんとだ……胃薬?」

 それも結構中身無くなってる。
 ……なんだろ、ストレスで胃でもやってた?

 ……だとしたら、そもそも胃が痛くなるような事をするなって感じだけど。

 ……まあ、そんな感じで。
 結局最後の最後まで何も分からないまま。
 ずっと掌の上にでもいたような感覚のまま。

「……皆と合流しよっか」

「ですね。何にも分かんないですし」

 私達は此処を脱出する事にした。
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