最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

文字の大きさ
182 / 280
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

52 聖女さん達、ちょっとだけ情報共有

しおりを挟む
「な、なんだったんだアイツ……」

 ステラが困惑するように呟くが、誰もそれにまともな答えを返せない。
 意味が分からないのは皆一緒だし。

「と、とりあえず私達が此処まで来たから諦めて逃げたって感じですかね?」

「撤退って言ってたしそういう感じなのかもしんないっすけど……えーっと、多分っすけど、アイツが誘拐犯の親玉って感じで良いんすよね」

「だと思うんだけど……不可解な点しか無くて意味分かんないよね」

 ほんと誰か教えてよ……マジで私達はどういう奴と戦ってたの?

「……まあ確かに何も分かりませんけど」

 ミカが困惑で硬直している私達を横切るように前に出ながら言う。

「今は進みませんか? 進めば何か分かるかもしれませんし、さっきの敵の言ってることが本当なら子供達も居る筈なんで」

「……まあそうだね。立ち止まってても仕方が無いか」

 もう当の本人はどっかに言っちゃって尋問もできない訳だし、だったら当初の目的を速い所済ませるべきだね。

「あ、すみません……なんか仕切るような事言っちゃって」

「いいよ、実際動かないと駄目な訳だし、そもそもその時々で仕切れる人が仕切ればよくないかな? それに立場上そういうの向いてるんじゃない?」

「いや、私は表立ってそんな事もしてこなかったし、そもそも器じゃないと言いますか……と、とにかく」

 仕切り直すようにミカが言う。

「先に進みましょう」

「そうだね」

 そんなやり取りを交わして、私達は先へと進む事にした。
 そして先に進みながらステラが聞いてくる。

「なあアンナ。立場的にってのはどういう事だ? 結局ミカとかあのルカって男は何者なんだよ」

「あー私も気になりますね。いや、後にした方がいいってのは分かるんですけど、分からないことに分からない事が重なりすぎて意味分かんなくなってるんで……」

「詳しくは後で聞くとして、さらっと教えてくれよ」

「……確かに、シルヴィとステラだけ私達より更に訳分かんない状況なんだよね……ミカ、一応聞くけど言っても大丈夫?」

「皆さんなら大丈夫ですよ。それに私にその辺りの拒否権ありませんから」

「そういう事なら」

 あくまで移動時間だから本当にさらっと二人に言う。

「まずミカは私達と同じように元聖女」

「あーやっぱりか」

「なんとなく予想通りですね」

「あと一国の王女様」

「「ちょっと待ったァッ!」」

 二人から強いツッコミが入る。

「え、王女……えぇ!?」

「私達そんな人と戦ってたんですか!?」

 予想通り凄い驚きようだ。

「いや、待て待て話がぶっ飛びすぎて理解が追い付かねえ。ってことは俺そんな人と殴り合いを――」

「でも私達は悪くないです」

 やや青ざめた表情を浮かべるステラの肩に手を置いてシルヴィが更に一言念押しに。

「私達は悪くないです。出るところに出られてもなんとかなりますよ」

「えーっと、実際私が悪いのでその……そういう心配はしなくても大丈夫だと思います」

「そ、そうか……」

「そうですよ。私達は悪くないです」

 やや強めにそう言うシルヴィ。
 ……いやぁ、出会ったすぐの頃は自信なさげな感じの子だったのに、自分に自信を持ってもらえるようになってからはなんかこう……凄いよね。
 私達の中で一番メンタル強いかもしれない。

 逆に私は……なんか思ったより弱かったな。
 普通にちょっと泣いちゃってたみたいだし……うん、あんまり知りたくなかった。

「と、というかなんでそんな人が、あんな山の中で意味分からねえ事してたんだよ。
そもそもこんな所に居るのも謎だし」

「まあその辺は流石にさらっと言えるような話じゃないからね、後で私からで良ければ言える範囲で教えるよ」

 私も全部把握している訳じゃないけどね。

「っていう事はあのルカって人は、ミカの 御付きの人って感じなんですかね」

「正解。なんか本人曰く執事らしいよ」

「へぇ……っていうかほんと、なんでアンナはアイツからそんな風な事を聞き出せるような感じになってんだよ」

「なんかあの人、アンナさんの事を信頼してそうな感じでしたし……いやほんと何があったんですか? アンナさん達の場合直接戦った関係な訳ですし」

「寧ろ戦った仲だからだよ。私がルカを偶然見つけたから話を聞き出そうとしたって感じ。信頼っていうのはそうだね……まあ私もコイツ敵じゃ無いなって感じに落ち着いたし、向こうもそんな感じなんじゃない?」

 まあシルヴィ達がそう思う程度に信頼してくれていたなら、尚更アイツの稼いだ時間を完全に無駄にしたのが申し訳なく感じる訳だけど。
 それよりも。

「それより私はシズクとミカが友達みたいな感じになってる方が気になるけどね。完全に接点ないじゃん。何があったの?」

 まあしーちゃん関わってるからなんでもありなのは分かるけど。

「えーっとそれは……」

「そうっすね……」

 中々言いにくそうにそう呟いた二人は互いに目を合わせてから言う。

「……なんかこう、色々ありまして……」

「そうっすね……色々っす……」

「あ……うん、そっか。言いにくい事なら言わなくても良いよ」

 ……なんか面と向かって言いにくいような事があったみたいだし……だったら言わなくても良いけど気になる。
 しーちゃんが絡んでるから何あってもおかしくないし……まあ皆無事で元気ならいいか、うん。それでいいや。

 ……まあそんな感じで。
 結局皆分からないことは一杯のままだけど、あくまで移動中にちょっと話す程度の感じだったからそれで終わり。

 そうして私達は目的地へと到達する。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...