最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

ex 黒装束の男達、会敵

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 同時刻。

「これはお前らがやったのか?」

「いや、俺達が倒したのは目ぇ覚ました数人だ。お前やアンナとかいう聖女がやったんじゃなきゃ、最初にお前と戦っていた二人組の聖女がやったんだろ」

 来た道を引き返すルカ達三人は、統一された衣服を身にまとう男達が大勢倒れている部屋でそんな会話を交わす。
 もしこのルートに自分達が戦ってきた連中と同等程度の戦力が配置されていたとしても、あの二人なら簡単に突破できるだろう。
 実質アンナが二人と考えればそういう事になるし、何より先程身を持って実感した。
 そして現在進行形で実感させられている。

 現在ルカの体はボロボロだ。
 意識を取り戻せる程度に回復魔術を掛けられたのに加え、どうやら別れ際にミカを含めた全員に掛けられていた強化魔術も付与されていたらしく、それの効力に多少の治癒効果があったのかやや体は楽になってきてはいる。
 だがそれでも現状担がれて移動している有様だ。
 それだけのダメージをあの出力を出していたにも関わらず、ほぼ一方的に負わされた。

 アンナと同じくもう敵には回したくない。

「それにしてもシズクちゃんの強化魔術すっごいな。多分結構離れてるのにまだ効果が続いてる」

「それだけ規格外の力を持っているという訳だ……本当に凄いと思うよ」

 単純に力が強くてそうなっているにしても、術者から離れても一定期間効力を維持するような自立型の術式になっていたとしても、いずれにしても相当な腕前だ。
 恐らくあのシズクとかいう子までもがあの山で敵に回っていたら、自分やミカはほぼ一方的に敗北していただろう。
 
 ……それが今は心強い。
 彼女の存在がミカやアンナ達の生存の可能性を高めてくれる。

「この調子ならこの先に敵が残ってもなんとかなりそうだね」

「そん時はコイツの事頼むわ。前には俺が出る」

「……いざとなったら放置してもらっても構わん。この様だが、最低限自分の身を守る事位ならなんとかなる筈だ」

「本当にいざとなったらな……基本は任されただけの事はやるつもりだ」

「だね。向こうで全部解決してもルカさんに何かあったらミカちゃんに合わせる顔無いしね」

 シエルはそう言った後、マルコの肩にポンと手を置いて言う。

「まあ大丈夫だよ。此処にいるまこっちゃんはあっちゃん達程じゃないけど強いから」

「事実だとしても言い方もうちょっと考えろ!」

 と、マルコがそう吠えた所で二人は立ち止まる。
 彼らの視界の先の何も無い床に、大きな影のような物が出現したからだ。

「……すげえタイミングだ。打ち合わせしといて良かったな」

 言いながらマルコは担いでいたルカを下す。
 その瞬間だった。

「よぉし! リベンジマッチと行こうかァッ! よろしくなぁ!」

 ヌルリと地面から一人の男が現れる。

「コイツは……」

 ルカからすれば自分を打ち負かした敵と同じ姿をした男。
 だが同じなのは姿だけ。

(……いや、違う。あの男のような異次元の脅威は感じられない。それにこの頭の悪そうな喋り方は……)

 ルカがそう考えている所でシエルも苦い表情を浮かべて言う。

「うわぁ……この魔術にこの喋り方って……絶対上でケニーさん操ってた奴じゃん」

「よぉ! また会ったなぁ! つっても直接顔合わせんのは初めてかァ! よろしくなァ!」

(直接……ああ、やはりそうか)

 ルカは確信する。
 コイツは今まで戦ってきた影の魔術を使う敵達を操っていた張本人だ。
 直接顔を合わせたという発言はつまりそういう事だろう。

 ……コイツが本来、アンナと共にぐちゃぐちゃにする予定だった諸悪の根元だ。

 そんな敵とこの状況下で遭遇した。

(……まずいな)

 自分がまともに戦えないこの状況で。
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