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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 影の男、真骨頂
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先程自分が操られていた時の戦闘で相対したのは一瞬だったが、それでもこのマルコという男が強いという事は理解できている。
そしてミカと共に現れたシエルという女も、此処に足を踏み入れていて……そして操られた誰かと戦って生存しているのだから、最低限度の実力はあると考えても良い。
だが足手纏いの自分をカバーしながら優位に立ち回れるかは定かではない。
少なくとも目の前の敵も弱くは無いのだから。
とはいえ。
(……ただ向こうも満身創痍なのは救いか)
目の前の男は明らかに消耗していて、立っているのもやっとという有り様だ。
おそらくミカ達があの強敵に勝利を納めた結果なのだろう。
……ミカ達が敗北してこちらに来たという最悪のパターンは自然と思考から外れた。
目の前の男は自分が敗北した相手とは言わば中身が違うような状態だ。
この男も自分が敗北した誰かに操られていた。
それが自分と同じように気を失って……倒されて元に戻ったのだろう。
自分達を追うとして、あえてこの男にコントロールを戻すメリットは無いように思えるから。
だから向うの事は心配ない。きっとうまくやっている。
だからこそ、尚の事この場をなんとか切り抜けなければならないだろう。
とにかく、勝つ為に自分にできる事を考え、そして実行する。
(当たれ!)
瞬時に術式を構築して、男に向かって闇属性の魔術弾を打ち込む。
威力はそこまで求めない。強化魔術が付与された肉体にまともなダメージが通らない程度で構わない。
代わりに精密さと弾速に比重を置いた針の穴を通すような一撃。
それを男の指先目掛けて。
「うおッ!」
そして満身創痍の男の指に嵌められた指輪を破壊する。
(よし……うまくいった!)
男の手札の中で最も厄介だったのが、部屋全体を影で覆う事により成立するオールレンジの影攻撃。
自分の様な足手纏いがいる状況であの攻撃の発動だけは何としても止めたかった。
それが成功した。
……だったら後は満身創痍の男を潰せばいい。
「これで厄介な攻撃は潰したぞ!」
「よくやった! 後は俺が潰す!」
指輪の破壊を開戦の合図とばかりに、マルコが一気に距離を詰めに掛かる。
……だが。
(……待て、なんだこの違和感は)
指輪は破壊した。
だがそれでも男が狼狽える様子はない。
(何か……何か見落としているのか? ……そうか!)
少し考えて答えに辿り着いた。
本来目の前の男の真骨頂は、自身で影を操ってでの戦闘ではない。
そしてそう考えるとほぼ同時、あくまで部屋の半分程度の面積の床に影が展開される。
それがおそらく自力で張れる限界値。
だが恐らくそれで充分。
なにせその影の範囲には……多くの人間が倒れている。
そして次の瞬間、男はマルコの襲撃に備えるように全身に影を纏い……そして力強く床を踏んだ。
「っらあッ!」
それとほぼ同時、マルコの拳が男の顔面に叩きつけられ、その体が勢いよく弾き飛ばされる。
「硬ってえな……流石に一発じゃ仕留めきれねえか」
「マコっちゃん!」
「あ?」
マルコがそう反応した頃には、既に事態は最悪な方向に進展している。
「おいおいマジかよ……」
部屋の中に倒れていた人間達が、ゆっくりと立ち上がりだしたのは。
「……しゃあ。成功成功」
殴り飛ばされた男がゆっくりと体を起こしながら言う。
「今の一発ふせげりゃ俺の勝ちなんだよなぁ」
(……最悪だ)
男の真骨頂は、大勢の人間を手駒に出来るという点である。
そして此処に倒れている連中を倒した聖女達は、殺すような戦い方をしない。
それを存分に生かされた。
それを存分に利用された。
そしてミカと共に現れたシエルという女も、此処に足を踏み入れていて……そして操られた誰かと戦って生存しているのだから、最低限度の実力はあると考えても良い。
だが足手纏いの自分をカバーしながら優位に立ち回れるかは定かではない。
少なくとも目の前の敵も弱くは無いのだから。
とはいえ。
(……ただ向こうも満身創痍なのは救いか)
目の前の男は明らかに消耗していて、立っているのもやっとという有り様だ。
おそらくミカ達があの強敵に勝利を納めた結果なのだろう。
……ミカ達が敗北してこちらに来たという最悪のパターンは自然と思考から外れた。
目の前の男は自分が敗北した相手とは言わば中身が違うような状態だ。
この男も自分が敗北した誰かに操られていた。
それが自分と同じように気を失って……倒されて元に戻ったのだろう。
自分達を追うとして、あえてこの男にコントロールを戻すメリットは無いように思えるから。
だから向うの事は心配ない。きっとうまくやっている。
だからこそ、尚の事この場をなんとか切り抜けなければならないだろう。
とにかく、勝つ為に自分にできる事を考え、そして実行する。
(当たれ!)
瞬時に術式を構築して、男に向かって闇属性の魔術弾を打ち込む。
威力はそこまで求めない。強化魔術が付与された肉体にまともなダメージが通らない程度で構わない。
代わりに精密さと弾速に比重を置いた針の穴を通すような一撃。
それを男の指先目掛けて。
「うおッ!」
そして満身創痍の男の指に嵌められた指輪を破壊する。
(よし……うまくいった!)
男の手札の中で最も厄介だったのが、部屋全体を影で覆う事により成立するオールレンジの影攻撃。
自分の様な足手纏いがいる状況であの攻撃の発動だけは何としても止めたかった。
それが成功した。
……だったら後は満身創痍の男を潰せばいい。
「これで厄介な攻撃は潰したぞ!」
「よくやった! 後は俺が潰す!」
指輪の破壊を開戦の合図とばかりに、マルコが一気に距離を詰めに掛かる。
……だが。
(……待て、なんだこの違和感は)
指輪は破壊した。
だがそれでも男が狼狽える様子はない。
(何か……何か見落としているのか? ……そうか!)
少し考えて答えに辿り着いた。
本来目の前の男の真骨頂は、自身で影を操ってでの戦闘ではない。
そしてそう考えるとほぼ同時、あくまで部屋の半分程度の面積の床に影が展開される。
それがおそらく自力で張れる限界値。
だが恐らくそれで充分。
なにせその影の範囲には……多くの人間が倒れている。
そして次の瞬間、男はマルコの襲撃に備えるように全身に影を纏い……そして力強く床を踏んだ。
「っらあッ!」
それとほぼ同時、マルコの拳が男の顔面に叩きつけられ、その体が勢いよく弾き飛ばされる。
「硬ってえな……流石に一発じゃ仕留めきれねえか」
「マコっちゃん!」
「あ?」
マルコがそう反応した頃には、既に事態は最悪な方向に進展している。
「おいおいマジかよ……」
部屋の中に倒れていた人間達が、ゆっくりと立ち上がりだしたのは。
「……しゃあ。成功成功」
殴り飛ばされた男がゆっくりと体を起こしながら言う。
「今の一発ふせげりゃ俺の勝ちなんだよなぁ」
(……最悪だ)
男の真骨頂は、大勢の人間を手駒に出来るという点である。
そして此処に倒れている連中を倒した聖女達は、殺すような戦い方をしない。
それを存分に生かされた。
それを存分に利用された。
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