最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

58 聖女さん達、集合 上

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 あれから少しだけ話した後で喫茶店を後にした私達は、集合場所のマフィアさん達の事務所へと足取りを向けた。

「しっかしまともな人達っぽいからよかったけどさ、なんでマフィアと関わる感じになっちゃってるの?」

 ボスがギルドの部長さんだったってのは多分結果論だろうし……なんとなく想像は付くんだけど、あんまり当たってほしくないなぁ。

「シエルさんが今回の一件を解決する為に、この国で一番敵に回しちゃいけない人達に協力して貰うって……凄くフレンドリーな感じで絡みに行って……」

「あーうん。大体予想通り。やっぱりしーちゃんか」

 多分しーちゃん、今でも頻繁にヤバい事に巻き込まれたり首突っ込んだりしてるよね。
 ……とりかえしのつかない事になる前に再会できて良かったぁ。

 と、そんなやり取りを交わしていた所でやがて辿り着く。

「あ、ここですね」

「ん? あんまりマフィアの事務所感ないね」

「ちょっと聞いた話によると、表向きには一般企業を装ってるみたいですよ」

「まあそうでもしないと身バレしちゃうか。特にあの部長さんはバレちゃまずいでしょ」

 バレたら首切られそうだし。
 というかなんでギルドの部長なんかやってるの?
 しかも中間管理職みたいな一番面倒くさそうなポジションっぽいし……普通にそっち止めてよくない?
 ……まあ私が口出しできるような話じゃないし、別にいいけどさ。

「でもとりあえず表向きには一般企業っていうなら、私的にも助かったかな」

「どうしてですか? あんまり違いない気がしますけど」

「ほら、そういうヤバい所に出入りして変な噂立ったら嫌じゃん」

「……確かに」

 目立つのは別に嫌いじゃないけど、そういう目立ち方は普通に嫌だ。

「で、これ普通に堂々と入っていって良いのかな?」

「シエルさんは堂々と入っていきましたけど、私達だけだとなんか気が引けますね」

「そうだね。中にいる人が全員私達の事知っているかどうか分かんないし」

 と、事務所の前でそんな事を言っていると。

「あっちゃん! ミカちゃん!」

 背後からシエルの声が聞こえた。

「しーちゃ……うえぇッ!?」

 振り返って、マフィアっぽい人達と歩いてきたしーちゃんの姿を視界にとらえた瞬間、反射的に変な声が出てしまう。
 血塗れ……血塗れだ!

「ちょ、ちょちょちょ、しーちゃん大丈夫!?」

「あーこれ? 大丈夫大丈夫。これシャワー浴びたり着替えたりってタイミングが無かっただけで、あの地下に突入する前にもうシズクちゃんに八割方治療してもらってるから」

「え、だ、大丈夫なら良いけど……いやいや良くない良くない! なんか蹴られたって聞いたけどほんと大丈夫!?」

「あーうん。大丈夫大丈夫。受け身取ったし」

「受け身取るまでの過程が絶対に大丈夫じゃなかったよね!?」

「結果良ければ全てよしだよ!」

「いやそれはそうだけど!」

「そういうお前は大丈夫なのか?」

 マフィアさん達の中から、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
 よく見ると……マフィアさん達に背負われたルカがそこに居た。
 ……無事なのは聞いていて知っていたけれど、いざこうして自分の目で確認できると深く安堵できる。
 いやほんと……マジで良かった。

「ルカ君!」

 ミカがもそれを見つけて駆け寄ってくる。

「ミカ様、ご無事で何よりです。お怪我はありませんか?」

「私は大丈夫。というか私なんかよりルカ君の治療の続きしないと」

 そんな風にあたふたし始めるミカに少し遅れて、私もルカの方に歩み寄る。

「アンタミカの前じゃそんな感じなんだ。完全にキャラ違うじゃん」

「お前に向けるような雑な態度を向けて良いお方じゃないんだ」

「……別に私は雑な感じで良いのに」

「え、何か言いましたか?」

「べ、別に何でもないよ……なんでもない」

「……?」

 あ、コイツアレだ。普段滅茶苦茶察しが良い感じなのに、こういう事だけ鈍感な面倒臭い奴だ。
 こりゃミカちゃん大変だね、うん。
 ……まあその辺は私関係無いけどさ。

「と、とにかく治療するね」

 言いながらミカが回復魔術を発動させる。

「私も手伝う。一人より二人の方が早いでしょ」

 そして私も回復魔術を発動させる。

「よし、じゃあそのまま中に運んじゃおう。着いて来て」

「あ、うん」

 なんでしーちゃんが先導しているのかとか、マフィアさん達がその事に突っ込まないのかは突っ込まなかった。
 まあなんというか……しーちゃんらしいなって、そう思ったよ、うん。
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