最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河

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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

59 聖女さん達、集合 中

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 事務所の中に用意されていた医務室のベッドに寝かされたルカをミカが治療する。
 ……うん、ミカが治療している。
 よし、私も手伝うかぁ! みたいなノリで参加したら途中で術が干渉しあって駄目になっちゃった。
 まあ誰かが回復魔術を掛けている上に更に重ねるのは超高等技術だけど……うーん、できると思ったんだけどね。私もまだまだって事かな。
 ……多分、私達を圧倒してたあの化物は普通にこういう事もできるんだろうな。

 そんなナイーブな事を少し考えながら、私は見学。

「……しっかし酷い怪我だね」

「これでも最低限あの地下でミカ様とシズクさんに治療してもらったんだがな」

「へー回復魔術の重ね掛けに成功してたんなら凄いね……ってちょっと待ってなんでシズクはさん付け? なんかあった? 私とかは雑な感じなのに」

「お前やあの二人と違い何も無かったからな。それにミカ様のお友達だ。雑に扱う訳が無いだろう」

「あーなるほど、そういう訳か」

 なんか妙に納得するねその説明。
 コイツがそういう相手を丁重に扱わない訳が無いか。

「成程。それで道中ウチにも妙に丁寧な言葉遣いだった訳だ」

「シエルさんもミカ様と共に戦ってくれたのだろう? あの危険地帯に共に着いても来てくれた。シズクさんもシエルさんも、事が綺麗な形で決着が付けば、国賓としてお招きしたいくらいだ」

 め、滅茶苦茶手厚い。

「ん? というか国賓って……え、何? ミカちゃんとルカさんはどういう立場?」

「あーそういえばシエルさんには言うタイミング無かったですね……言っても良い? ルカ君」

「良いですよ。今さっき俺が口を滑らせたのが原因何で」

「じゃあ」

 ミカは改めてしーちゃんに……というか私も含めて言う。

「改めまして。私のフルネームは、ミカ・クラニカです。今はそう名乗っても良いのかは分かりませんが……一応クラニカ王国第一王女で、聖女もやってました」

「あーそうなんだ。それはびっくりだ」

「…………あの、しーちゃん、なんか反応薄いね」

「いやだってほら、仲良くしてた相手の素性聞いて態度変え始めたら、逆に滅茶苦茶失礼じゃない? 立場逆だったらウチ絶対やだよ?」

「そ、そういうものかな……?」

「そういうものです」

 それに答えたのはミカだ。

「私はあの時一緒に行動してた時みたいに接して貰えれば良いです。あ、シズクとも話したんですけど、色々終わったらカラオケ行きましょね」

「勿論!」

 うわ、すっごい仲良くなってるよ。
 まあしーちゃん距離グイグイ詰めるし、シズクもすぐ人と仲良くなりそうな感じだからね……すごいや、私ならまだそういう事軽く誘えたりしないよ?
 あとなんか凄いルカが満足そうな表情してる。よかったね。
 と、そこでミカが言う。

「というかルカ君。シズクとシエルさんにそういう言葉遣いを向けるなら、アンナさん達にも向けないと駄目じゃないかな? ほら、一度争ったとはいえ迷惑も一杯掛けたしお世話にもなった訳だし」

 まあそれはごもっともな気がするけど……なんかコイツに今更敬語使われるの、ちょっと気味悪いし嫌だな、うん。
 さっきしーちゃんが言ってた態度変える云々と同じじゃないかな。知らんけど。

 そして言われたルカは少しの間黙り込み、そして言う。

「すみません、それはなんか嫌です。ベルナールには特に」

 コイツも多分同じ理由かな。多分そうだろうな。

「同感だね。今更ルカに敬語とか使われたくない」

「よし、お前が良いならこのままだ」

「逆に私が敬語使って丁重に扱えって言ったらするの?」

「言わんだろお前は」

「ご明察」

 言う訳無いじゃん。

「そ、そっか。なんか嫌なら仕方ないかな……」

 そしてミカは小さな声で呟く。

「くそぅ……その独自な距離感壊せない……」

 何言ったか声小さくて聞こえなかったけど。

 そして何故かちょっと肩を落としているミカの肩に、しーちゃんが慰めるようにポンと手を置く。

 えーっと……何?

「ウチは応援してるよ」

 ……何を?

 と、まあそれはともかく。

「ああ、そうだルカ」

 このまま皆が集まって色々大事な話とかし始めたら、最後まで言う機会が無いかもしれない。
 だから言える内にこれだけは言っておかないと。

「なんだ?」

「ごめん。アンタが稼いだ時間を私は何一つ生かせなかった」

 あの時の謝罪だ。
 ルカは命を張って時間を稼いだ。
 私はその時間の全てを無駄にした。
 この謝罪だけは、絶対にしておかなければならない。

「謝るな。アイツの術式はあまりに次元が違う。それを三分で何とかしようという策にそもそも無理があった。むしろ俺の方が余計な重圧を背負わせた事を謝らなければならない」

 それに、とルカは言う。

「俺もそもそも三分も時間を稼げなかった。全く歯が立たなかったんだ。悪いな」

「いやそれこそアンタは全く悪くないでしょ。あんな化物に満身創痍でぶつかってどうにかなる訳が無いじゃん。あれは私が止めないと駄目だった」

「なに、元を辿れば俺の実力不足が全部悪いんだ」

「いや、私だって全然弱かったし……うん、アンタだけがどうって話じゃない。寧ろ私が──」

「これじゃいたちごっこだな。此処は結果良ければ全て良しという事で、お互いの無事に安堵して終わりにしないか」

「……いいのかな、それでも?」

「いいんだ。とにかくベルナール、今更になるが無事でよかった」

「……アンタもね」

 結果良ければ全て良しなんて言葉で片付けて良いのかは分からないけれど。
 とにかく……ほんと、無事で良かった。
 それだけは心からそう思うよ。

「……ちょっとまって思ったより悪くない雰囲気。吊り橋効果って奴?」

 しーちゃんがボソりと呟くように何か言ったけど、それは聞き取れなかった。
 あとミカもすっごい複雑な表情。

 いや、えーっと……さっきから何?
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